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ZEROミッシングリンクⅤ【5】ZERO MISSING LINK 5  作者: タイニ
第三十五章 アンドロイドは嫉妬する
21/110

20 陽キャ包囲網

※この話は閑話です。


飛ばしても大丈夫な回です。ただの会話に4千字以上使ってすみません(´;ω;`)




ラムダは、アーツ第1弾で、唯一サルガスとヴァーゴの全く知らないところから入って来たメンバーだ。



ジェイのゲーム仲間で元おデブさんでゲームアンド冒険小説オタクで、ベガスに戻りたいと言ったジェイに連れ添い、いつの間にか怖い人に囲まれたものすごく雰囲気の悪いミーティングにも参加し、来たついでに筋トレにも参加して、気が付いたらアーツに入っていた。



大房のアストロアーツとかいう陽キャで占められたような、奴らの半身内の溜まり場レストランになど自ら行くわけがない。ジェイのコンビニやチェーン店のバーガー屋やファミレスの方が断然落ち着く。


性格は真面目で素直、前向きであったので友達はいたが、異性友達は皆無。

母も父も一人っ子、自分も一人っ子、叔父叔母も従兄妹もいない。ただそれはラムダだけでなく、アンタレスにはそういう家庭もけっこうな数いる。大房はまだ子供が多い方だが、祖母以外近い異性の親戚もいない。



そんな、ゲームや小説の世界が半自世界だったラムダが、後であの心星家の子息と知る、なぜか性格陽キャな心星ファクトと友達になり、陽キャのいる寮に入って共同生活をし、元ギャル含む女子友達が増え、そしてモテる響先生とまでデバイス番号を共有する仲になってしまった。しかも、男子メンバーでは珍しくこまめに返事をするので、よく連絡をくれる。


これはなんだ。小説まんまではないか。


同じ女子がいる環境でも、人生の大半を通った学校では一人も女子友が出来なかったのになぜ。

ただチートな能力は授からなかったが。ずっと運動神経Dチームである。




そして、今日も元気に共同生活をしているのだが、未だ苦手なことがある。


いかにも陽キャな人たちと廊下ですれ違うくらいはまだ耐えられるが、共同の洗面所で歯を磨いている時に二人きりになることとかだ。

君たち陽キャなんだから、イェー!とかマブダチ連れてみんなで歯、磨きに来いよ、と思う。そして陽キャ同士で楽しく話していてくれと、叫びたくなる。


なのに、それなのに、陽キャはいつも男女の友達でつるんでいると思ったのに、想像と違ってここのメンバーは比較的冷めていて、思ったのと違うのだ。



陽キャ同士でも……あくまでラムダが陽キャと位置づけるメンバーであるが、みんながみんな、そんなに仲がいいわけではない。けっこう単独行動をしている。


陽キャ同士が洗面所でガチあっても、用事以外会話すらしないことも多い。やや仲がいいと「よっ」と挨拶くらいはするがそのまま無言なことも多い。なぜ、あの沈黙に耐えられるのだ。どれだけメンタルが強いのか。もしかしたら、実は陽キャじゃないのか。



ここに来て初めて、男子でもスキンケアをする者が本当にいると知り、バイト先の店に置いてあっても意味が分からなかったたくさんの種類のヘアワックスの使い方も知った。あのピンクと青とオレンジと黒のパッケージの違いはこうなのか!とか。ハードとかソフトとか。


名前も覚えられないメンバーが、横で前髪を上げているのを、なるほど、ああしてあの髪型ができるのか……と横目で見ていると目が合って、

「…ラムダ、お前も付ける?」

とか言われる。もちろん全力で断って、早々と逃げる。でも、一応自分もデオドラントくらいはするようになった。平和構築関係団体のはずなのに、なぜか汗をかき過ぎる。





そんな風に、タラゼドやヴァーゴ、リゲルなど気さくなメンバー以外の陽キャ認定キャラとは距離を置きたかったのに、詰めてくるこの人。


「なーラムダ。毎週響さんと飯食いに行ってるんだってな?」

今日も水色頭なキファである。

空想の世界ではカラフルな頭は漫画アニメが独占しているが、現実世界は陽キャの方が髪色が明るい。


嫌なことに、段ボール箱2つを持っていたので、普段使わないエレベーターで二人っきりになってしまった。

「…最近は忙しいし、引っ越しちゃったから全然だよ…。じゃ!」

それだけ言ってドアが開くのでごまかし笑いで降りる。

「待て。」

「え?」

「その荷物手伝う。」

「…あ、いいよ。そこまで重くないし、自分で運ぶから。」

と言うが、勝手に1箱取り上げられる。

「あ、あの、そこのミーティングルームに。ありがとう。」


箱を置いて去ろうとすると、また止められる。

「ラムダ。響さんとは連絡とってるのか?」

「え?あー、時々メールは来るけど………」

「見せろ。」

しゃがんだまま手を出してくる。

「…え。」

「なんか俺に対して嫌な事情でもあるのか?やましいことでも?」

「……全然ないけど。予定のやり取りくらいだよ。」

見せるのに躊躇するものは何もないし、別に嫌とも思わないが…。

「見せろつってんだろ?」

「あっ、はい!」



ジーと響さんとのトークルームを見ているキファ。



『今日は居酒屋にしよう。「半月」ね!』

 

『ジェイ君たちが先に待ってるって。』

   『試験で行けなくなりました。』

『残念…

でもがんばれ~!ファイト~!』



『先に着いたの?ファイ来る?昨日だったけど誕生日なんだ。』

  『ライと一緒に来ます。』

『OK!お店に誕生日の人いるって伝えておいて。』

  『え?お店にですか?』

『そうすると、サプライズしてくれるから。私が予算出すからホールケーキもお願いしておいて。ティラミスで!』

  『なるほど。わかりました!』

『頼みまーす。ありがと~!』


『しばらく忙しいです。また連絡するね。ごめんね。』

  『分かりました。無理しないでくださいね。またいつでも連絡してください。』



「……………………」

「………。」

なんだか下を向いて顔を上げない。気に入らないメールがあったのだろうか。

「……あの…、キファ…?」

「…お前なあ…。」

「…ひっ。ごめんなさい!!」

「……可愛すぎる!!」

「はい?」

「メールすらかわいいっ。」

「え?」

普通のメールだが、女子から来たと思えば確かにかわいい。ファイのメールはそっけないので、初めて響からもらった時には少しテンションが上がった。

『ごめんね!』なんてメール、ファクト以外で送ってくれるのは女子しかいない。ファクトは流行に関係なくしょうもない顔文字を入れてくる。噂によると、ファクトに次ぐ陽気メールはカウスらしい。チコを煽ってくると有名だが、本人は「極めて普通の連絡です!」と認めていない。


「かわいいい……。このとっきっどきしか絵文字を入れないシンプルさもかわいい…。その分!マーク多様なのもかわいい…。」

指を指して説明している。とにかく何でもかわいいのだ。

「そうだね…。男はこんなテンションの高いメールくれないしね。」

男はOKも変換すらめんどくさくて『おk』とか『了解』とか、自動変換で毎回同じフレーズのみとか、めんどくて既読しかつかなかったりもある。会話したくないからメールにしているのに、読まない者も多いし既読になっているのに実は読んでいない者も多い。


「…お前ムカつくな!!なんでこんなに仲良くなってんだ?何が『無理しないでくださいね。』だ!!」

ペチペチ頬を叩いてくる。逃げたい。

「『またいつでも連絡してください。』って、誘うな!」

「男女の対象外だから警戒されてないってことだってば!みんなで会うだけだし!」

「あ。なんだ?オメーも響さんにハッピーバースデー歌ってもらったのか??あ?」

陽キャを怒らせたくないので、必死に態度で防御するも………

「そうですね…。初めて女友達にも誕生日に祝ってもらいました…。かわいいけど…音頭を取ったのはファクトです……。」

「ふざけんなっ!!でも響さんはかわいかったんだろ??!!」

「はい。」

「マジコロす!!」

「うわっあ!!!

うれしかったので、言わなくてもいいことを呟いてしまった…。


項垂れるキファ。

「…弟枠に徹したかったのに、徹していたつもりなのになぜ俺は警戒されるんだ……。もう、電話すら来ない…。」

「………。」

理由はいっぱいある気がするし、その性格上警戒の対象外にはならない気がする…と言っていいのか悪いのか。


しかし、陽気な男はすぐに楽しそうに頭を上げた。

「ラムダが響さんなら、イオニアとタラゼドと俺、誰を選ぶ?」

「はい?」

「誰かって聞いてんだろ?!!」

「はいっっ??!そんなの急に聴かれても選択肢がありません!!!!」

オタク的にはその選択肢は、陰キャにもオタクにも優しいあまり気を遣わないのんびりしたタラゼド一択だが、黙っておく。リーオがいたら……もう少し悩むが。イオニアとか怖すぎる。


「…はあ…。俺は選択肢にもないのか……」

その選択、男に聞くには無意味過ぎる、と思うが、それも言わずにおく。


自分はジェイやファクトと同じ安全パイなのだ。取り敢えず持ち前の素直さで励ますことにした。

「キファ、大丈夫だよ!」

「何がだ!大丈夫じぇねーよ!!大丈夫の根拠を説明してみろ!?」

「うわ!怒らないでよ!」

「テメエ、体入れ替えろ。」

「え?無理っス!」

陽キャに「体を入れ替えてほしい」とまでうらやましがられる日が来るとは思ってもいなかったラムダ。だがとにかく、この圧から逃げたい。

「じゃ!」


今度こそ逃げようとすると、またまた捕まる。

「おい、逃げんな。」

「はひぃ…。何でしょうか?」

「ファクトはどうなんだ?あいつ響さんと近過ぎるだろ。」

「…ファクト?」

上を向いて考える。

「いやあ。男で響さんかわいいと思わない人はいないと思うけど……」

「ああ゛?!」

はっ、しまった。思わず求められていない答えを言ってしまった!


「それ、それで思うけど!」

「思うけど?」

「あの二人はゲームに例えると、男主人公を選択するか女主人公を選択するかって感じだから…。なんていうの?同キャラ?キャラ被ってるからか、本当の兄弟というか、本人みたいでお互いそういう意識には……ないと思う。」

「…分かるような…分からないような…。でも分かるぞ。」

「そうですか?!」

納得回答らしい。

「でも、所詮男女(だんじょ)だがなっ!」

ひぃい。怖い!


「ファクトはモテるのか?」

「ファ、ファクト?………そうだなー。モテるのかは分からないけれど、男女共によく知らない人に声を掛けられてるけど。十四光(チート)持ちの上に、見た目も悪くないし、基本笑顔だし……。

でも、女の子には思ってた人と違う……とか言われて3回以上話すことはあまりないみたい。」

なにせ、話す内容が女子にはすこぶるどうでもいい、頭のいい話もしないし、オシャレでもない。1日中戦闘映画やアニメの話をしていても飽きない男なのである。これはつまらない。


「ああっ?でもモテるはモテるんだな!?」

「はいぃー!結果はどうあれモテる方だと思います!!!」

「…まあ、一定の需要はありそうだな。」

もういいのだろうか……。


「よし!分かった!」

立ち上がるキファ。

「あ、ならまた…。」

「は?もう昼だろ、飯食うぞ。奢ってやる。」

「ひぃ…!!いいです!これから予習しないと!!」

「どのみち飯は食うだろ。行くぞ。」

「集中したいので一人で!」

「勉強机で食べればいい。」


そう言われて、陽キャと二人っきりの地獄の昼休みを過ごすのであった。




●気まずい話し合いに運動に、いつの間にかアーツのラムダ

『ZEROミッシングリンクⅠ』35 勇気

https://ncode.syosetu.com/n1641he/36

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