表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

かまくり 破滅の恋 ノーマル ジャスティン編

作者: 龗香

本編 かまくりの分岐から派生したちょっぴりエッチなノーマル短編小説です。

 プロローグ


 私は最近ずっと、アルバイト先の同僚に面白いゲームがあるからと誘われ、その同僚の部屋に遊びに来ている。

 がしかし、

 私は今、その同僚がゲームで遊んでいるところを後ろからただ眺めているだけ。いつも。


 「ほら、葉子みどりこここ。ここで大事なフラグがあるのよね。」

 「そうなんだ。」

 ハハハ。


 私の名前は清水葉子しみずみどりこ

 黒髪ロングを後ろでひとつに束ね、コンタクトは目に合わないのでもっぱらメガネ。メガネを外すとモザイクのような視界に眉根を寄せる、目付きの悪い店員だとよくクレームが入る。

 肉付きも悪く胸も真っ平ら。けっ。

 お酒もあまり強くないので、今飲んでいるのはウーロン茶。


 それに比べて、

 私に背を向けて乙女ゲーム、

 「私は構いませんのよ?ですが、クリスティン・キャトラル公爵令嬢はどうでしょうか。大人の恋愛ゲーム 貴族子息との破滅の恋」

 を夢中になって攻略しようとしているのは、

 同僚の井頭いのがしらさん。

 茶髪のサラサラとしたストレートヘアは肩より短く、

 くるりとした瞳と丸い顎が可愛いとご年配の方に人気がある。

 肉付きもふくよかで、自分を名前で呼ぶ女。

 「あやはー、ポチャなの。彼氏はポチャ子って呼んでくれるのよ。きゃっ。やだっ。店長があやの彼氏だって言っちゃった?!やだーっ」(言ってねーよ。自分でバラしたんだろおが。けっ。)

 自分が太っているとは思っていない。

 ただし巨乳。

 自分がどれほど愛されてるか、奥さんは愛されてないのに必死に彼氏にしがみついてて可愛いそう、あの客私の事見てた、同僚の中田君に告白されちゃったけど断っちゃった、可愛いそうだからご飯行く約束しちゃったんだよね店長も誘ってダブルデートしようよもちろん中田君の事よろしくね、え?告白なんかしてないって言ってる?そうだっけ?あーそうだ三千円貸してくれない?パチですっちゃってー、、

 って言うこの女が私は大っ嫌いだ。


 じゃあ何でこんな女の部屋に遊びに来てるかって?

 はい。私は現実では何も断れない女です。はい。

 強引に誘われるとズルズルと引き釣られてしまい、嫌だと言えない女です。ガックリ。


 ていうかこの部屋、、

 玄関開けたら即ゴミ袋。ユニットバスとトイレは辛うじて使えるもののカビだらけ。ベッドには何かのシミとゴミ袋。申し訳程度に備え付けられたちっこいキッチンは油でギトギト足元ゴミ袋。

 「彼氏部屋に来た時このゴミどうしてんの、、」

 「押し入れ。てかさー彼氏良く来るようになってちょくちょく掃除してるんだよねー仕方なく?ほんとめんどくさーい。」

 って言うこの女が私は大っ嫌いだ。


 「ねぇー。葉子、今日泊まってってよ。明日朝九時までにゴミ出ししないと持ってってもらえないんだよね、ゴミ。私起きれなくてぇー、明日起きてゴミだしてよ。」

 「、、うん。」

 帰りたーい。何で断れないかな私いー。

 「やったっ。見て見て葉子、ここここ。ジャスティンルートの分岐点。まあでも、私の本命は超絶絶倫ジャック様だから、ここはスルーだわ。」

 「布団広げるね、、。あ、、なんか、また、布団のこげあと増えてない?」

 寝タバコとか最悪。シミもキモい。

 「あーついつい? 大丈夫よー。火事になってないし?」

 「、、(なってたら死んでんだよ)。」


 ☆


 ん、、。う、、ん。

 朝、、かな、、。おなかすいた、、。

 あれ? 手が、動かない。ん? 私の手、どこ?

 「〇?〇〇〇〇?」

 「〇〇。」

 誰かの話し声。よく聞き取れない。

 誰? あや?

 「〇〇〇〇。」

 何か視界がぼやけてて、目を擦りたいんだけど、手が、あれ?

 手に何か握った?

 なんだこれ。んー?

 「〇〇〇〇!」

 あれ? 今の声。何か聞き覚えがある、気がする。

 あ。良い匂い。

 知ってる。この匂い。

 あー。何かまた眠くなってきた、、。

 まあいいか。もうちょっと寝よう、、。


 ☆


 「おぎゃあああっおぎゃあああっ」

 私が前世の記憶を持ったまま生まれ変わったと気付いたのは、

 泣く以外の言語を持ち合わせていないと分かった時だ。

 さらに、目が見えるようになった頃、

 メガネ無しでハッキリと視界がクリアな世界に感動し、

 金髪碧眼の小西旬こにししゅんが私の兄だと知ると同時に、この世界が、


 私は構いませんのよ? ですが、クリスティン・キャトラル公爵令嬢はどうでしょうか 大人の恋愛ゲーム 破滅の恋


 とそっくりで、私はそのゲームの主人公、クリスティン・キャトラル公爵令嬢に生まれ変わっているのだと、知るのと受け入れるのとでは天と地ほどの差があるんですけどおー!


 かまくり(構いませんクリスティン)の実写DVDでクリスティンの兄、ルーカスを演じていたのが、前世の世界で大人気俳優の小西旬だった。

 DVD版は、魔法学院をジャスティンが卒業する年の、激動の一年でクリスティンが真実の愛を知る。


 ということは、私の大好きなジャスティン様は、それを演じていた大人気俳優、、安藤健あんどうたける?!

 この世界は天国か?!

 十代の小西旬がルーカス。三十代の小西旬がリチャード。

 十代の安藤健がジャスティン。三十代の安藤健がルイス。

 し、、幸せすぎる、、。

 ということは、

 ユーリが川崎賢人。

 オースティンが菅将暉。

 ウィリアムが志田尊淳。

 ジャックが縦浜流星。


 くっ、、。落ち着け、私、、。

 この世界、、絶対に、、失敗は許されない、、。

 これはゲームじゃない。選択は一度キリ。

 いや、もしかしたら死んでまた最初からやり直しもあるかもしれない。

 けれど、無いかもしれない。

 ならば、無いと考え最良の選択を選ぶ!

 これしかない!

 前世のバカ女は、あれもこれもと喰い漁っていてホントに見苦しかった、、ああはなるまい。

 よし。私の一推し。初志貫徹。私が選ぶのは、、


 ☆☆☆


 ノーマル ジャスティンルート


 「ごきげんよう、かわいこちゃん。」

 くらぁっ

 朝からイケメン十代旬様の微笑み。鼻血でそう、、。

 「ごきげんいかがか、私のクリスティン。」

 くらぁっ

 また来たイケメン。三十代の旬様。

 耐えろ、私。挨拶を返すのだ。

 「ごきげんよう、お父様、お兄様。」


 幼い頃から前世の記憶があったお陰と、クリスティンの類稀たぐいまれなる記憶力で、王族教育、淑女教育、帝王学、魔法学、、公爵令嬢として恥じることのない知識と能力を手に入れた私は、運命の朝を迎えた。


 魔法学院中等部二年目。夏。

 この日、ジャスティンルートの最終分岐点イベント、

 夏だ!プールだ!水着だらけの水泳大会!

 が開始される。

 大会は一週間。

 各部二年目に開催され、各部毎かくぶごとに日程が変わる。

 中等部は、

 一日目はジャスティアの王宮プール、二日目は移動日、

 三日目はベリーランドの滝、四日目も移動日、

 五日目はバルバハートの砂浜、六日目は結果発表と帰路へ。

 そして、高等部のジャスティン様は結果発表の日が中等部五日目と被り、大会の自由時間にバルバハートの砂浜で同じ時を過ごす、分岐点イベントに突入する。


 この日の為だけにあつらえた、

 裏葉柳色のビキニ。紫外線阻害機能付き。

 浮遊魔数式を組み込んだリボンとパレオ。

 澄んだシトリンのようなパレオからチラチラと覗く、むちっとビキニが食い込む胸と太もも。

 ベイビーブルーのリボンはユーリ様から贈られて、ストーリー上、これを外すわけにはいかない。

 外してしまえば明らかに王家の特色、澄んだシトリンを纏った私はジャスティン様のものです!と宣言しているようなもの。

 そんな事をして予想外のハプニングが始まってしまっては対処に追われて分岐点イベントどころではなくなってしまうかもしれない。

 絶対に間違わない。

 前世のバカ女みたいに、波に水着が攫われて(と見せかけて水着を流し)ジャスティン様に抱きつき、人のいない岩場から続く洞窟内へと連れて行ってもらい(正しくは誘導)、洞窟の隙間から差し込む金色の光に、クリスティンのあられもなく晒される白くふくよかな胸の膨らみ、細く滑らかに艶めく腰から尻にかかる金髪。我慢できなくなったジャスティン様と金色の洞窟で、、。

 何て事には絶対しない!

 私は知っている。本当の攻略法を、、。

 前世の私は、誘惑に負け、ジャスティン攻略ルートに入った時、私にはどうしても水着を脱ぐ事ができなかった。

 でもその後、、。

 私は真っ赤に染まる顔を両手で覆い、それを見た侍女セシルが、耳を赤くしてないでっ早く着替えましょう遅刻しますよ、と私を急かしました。


 「遅かったねクリスティン。心配しちゃった。」

 くらぁっ

 賢人様の微笑みに意識を手放しかけました。

 なんという破壊力。

 だめよクリスティン。私にはジャスティン様が。

 「何だ遅刻か? 珍しいな。」

 くらぁっ

 ニカッと笑う褐色肌の将暉様、、。

 もうだめだ、、。立っていられそうにない、、。


 ふらり、、

 二歩三歩と後ろへ下がり、、

 トン、、

 と何かにぶつかって体が止まると、

 そっと肩より少し下がった両の二の腕に触れる手。

 視界の端に微かに見える、微風に流された金色の髪。

 私の頬にかかる吐息、甘く囁く聞き慣れた声。

 「ごきげんよう、クリスティン。今日も君に会えて嬉しいよ。」

 健様、、。

 ボンッという音でも鳴ってしまったのではないか。

 私は瞬時に顔が真っ赤に沸騰してしまい、挨拶を返すこともできずに固まってしまった。

 そこへ割って入るユーリ様。

 「行くよっクリスティン。」

 私の手を握って引き寄せ、ジャスティン様の腕の中から抜け出した私は、ユーリ様に引きずられるままに集合場所の訓練場へと向かいました。

 チラリとジャスティン様を盗み見ると、

 私の両の二の腕に触れていた手をそのままに、バイバイと軽く左右に揺らしていました。


 一日目。

 ジャスティン様は移動日の為、朝だけ少し会うことができました。

 中等部の私達は王宮の、プールと呼ぶには豪華な施設で、

 第一回戦グラグラバナナボート巨大ビニールハンマーで殴り合い落ちたら負けよ、水面下から飛び出す水スライムを避けないと体に嫌らしく纏わりつくよゲーム。

 第二回戦バランス浮遊島ダッシュ止まったり落ちたら負けよ、水面下から(以下略)。

 大会の宿泊先は、リチャード・キャトラル公爵家が三国に展開する、

 リッチ・キャトラルホテル。


 三日目。

 ベリーランドで有名な、荘厳の滝、の裏から入れる、青の魔水晶ダンジョン。

 中は下半身が温泉に水没する深さ、水温は三十八度と低め、水中に現れる魔物は、ファミリアクリオネ。

 通常のクリオネは氷点下で生存するのに対し、ファミリアクリオネはマグマの中でも生存可能。

 透き通る白い体皮、内臓は青く光る。

 高温を好み、人の体内へ入ろうとするが、呼吸は温泉内でしかできない為、呼吸器の尻尾を伸ばし、上半身だけ潜り込もうとしてくる。害はない。

 第三回戦簡単出たら負けよゲーム。温泉から出たら負け。


 五日目。

 バルバハートで天然の真珠が獲れる真珠ヶ浜。

 第四回戦寝転んで振り向きダッシュフラッグゲット、砂の中にランダムで隠れるファミリアオクトパスが水分求めて執拗に吸い付いては離れゲーム。

 ファミリアオクトパスの吸い付きはそう強くない。しかし水分を求めて吸っては離れ吸っては離れ、、引き剥がそうとすると抵抗して頭部を人の体内へ潜り込ませ、体内で膨らむ頭部は中々抜けなくなる。水をかければ離れる。


 体力が奪われました、、。

 ファミリアオクトパスが三体も絡みつき、焦ったユーリ様、オースティン様、ジャスティン様がファミリアオクトパスを無理矢理引き剥がそうとしたせいでさらに絡みつき、

 「皆のもの見てはならぬ!」

 「見ちゃだめー!」

 ジャスティン様とユーリ様の威圧によって皆が地面に押し潰されたおかげ?で、羞恥に耐える私のあられもない姿を見たのはジャスティン様とユーリ様だけ。

 私の、快感に身悶える四肢と局部に張り付くファミリアオクトパスを剥がそうと伸ばされる、ジャスティン様とユーリ様の指。


 ジャスティンルート攻略の事ばかり考えて、、このイベントゲームがあることをすっかり忘れていました、、。

 不覚、、。

 ジャスティン様だけでなく、、ユーリ様にまで、、あんなところや、こんなところに指を、、。

 私、、もうジャスティン様に嫌われてしまったのではないでしょうか。

 ジャスティン様以外の方に、あんなことやこんなこと。

 だめよクリスティンっ。こんな妄想だめえっ。


 私は先程の出来事を頭から追い出す為に、少し体を冷やそうと海に入りました。

 すると、後ろから私を抱きしめる温かな厚い胸の感触。

 「一人でどこへ行くつもり?」

 ジャスティン様、、。

 私の赤く熱い耳に頬を寄せ、ジャスティン様は優しく囁いてくださいました。

 「、、俺、、。いや。、、しばらく、二人っきりでいたいんだけど。」

 囁く甘い声に、、私は無言でコクコクと頷く事しか出来ませんでした。

 このシーン、、。

 そうだわ、、これこそ、、ジャスティン攻略ルート、、。

 そうか、、イベントゲームも攻略ポイントのひとつだったのかも、、。


 私は背中からジャスティン様に抱かれ、洞窟の方へと泳ぐジャスティン様に、高鳴る胸の鼓動を聞かれてしまうのではないかと、恥ずかしさと嬉しさに涙が零れました。


 洞窟の奥へ奥へと泳ぐと、金色の光が降り注ぐ空間に出ました。

 岩場にはファミリアモスがフカフカとしたクッションのように生え、

 ジャスティン様は私をそこへ押し寄せます。

 あっ、、。

 金色の光が、、私の水着を透かし、、あらわになる柔らかな肢体を、ジャスティン様が見つめています。

 恥ずかしくて死にそうっ、、。

 「やっ、、」

 「逃げないで、、クリスティン、、。」

 刹那げなジャスティン様の、消え入りそうなその声に、

 ジャスティン様も、勇気を持って、私をここへ誘って下さったのだわ。それなのに、私は逃げようと、、

 「構いません。、、ジャスティン様なら、私、、私の全てを、、見て下さいまし、、」

 ボロボロと涙が零れ出してゆきます。

 何かとても儚げなものでも見つめるかのようだったジャスティン様の視線が、

 ハッ

 としたように跳ね上がり、次の瞬間、私の体を優しく抱きしめ、その腕の中に私を隠して下さいました。

 「ごめんクリスティン。俺、君を独り占めしたいって、、どんな事をしても君を俺のものだけにしたいなんて、、こんな事、、紳士の考える事ではない、、。」

 「いいえ、、いいえジャスティン様。これは、、嬉し涙ですわ、、。」

 ごくん。

 ジャスティン様の、喉元の音が耳元に響きました。

 「クリスティン、、俺の隣で、、一生を共にしてほしい。

 俺と結婚してくれ。」

 「はい。ジャスティン様。」

 金色のまばゆい光の粒が、二人を祝福するかのように、くちづける二人を包むように、降り注ぎました。


↓☆☆☆☆☆評価ぽちっとな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ