神域の森:女王の寵愛
タイトルが微妙にダサいような…
「も、もう大丈夫ですから…あと私あなたの名前聞いてないんですが…」
「その口調なんかいや。もっと楽にしていいよ。名前、名前…えーと」
名前を覚えてないのか…?確かにこんな森だし、人と会う機会がないのは知ってたが…
「あ!そうだ!アンリフィート!アンリって呼んで!そっちの方がいいと思う!」
「じゃあ…アンリ」
「うんうん、いい感じ!」
アンリの見た目は自分より少し上…二十歳だろうか?というか人と会った事が無いからなのかテンションがおかしい。ふと外を見ると日が落ちてきていた。随分と長話をしたようだ。異世界の夕日も地球と変わらないと窓を眺めていると、
「もう夜ね…晩ご飯にしましょう!…といっても果実しかないけどね」
そういってアンリは一つの果物を持ってきた。スイカ程の大きさだ。これをどう調理するのだろうかと思っていると
「えいっ」
アンリが素手で真っ二つにした。
「えいえいえいえいっ」
そして手頃なサイズに切り分けられた。
「どうぞー」
「あ、あぁ…」
これが異世界の調理方法なのだろうか…ちなみにその果物はとてもジューシーで美味しかった
それからはいろいろあった。
「寝るところは私と一緒!」
「いきなりそれはレベルが高い…!」
と、なんとか断ろうとしたのだが…
「私がクロトのそばにいる!だからもう寂しい思いはさせないよ…」
そう言いながら抱きしめられると…
「あ、あぁ…わかった…」
「ふふっ…」
これを知ってしまった俺は抱きしめに逆らえ無かった。
sideアンリフィート
ふふ、ふふ、ふふふふふ…やっぱりクロトは可愛い。孤独な雰囲気を漂わせてるクロトだけど、抱きしめてあげると一気にふにゃふにゃになる。彼が私に身を預ける感覚が気持ちいい。隣で寝ている彼を撫でる。そうすると私にくっつく。私という暖かさを逃したくないのだろう。私に抱きついてきた。
「私は居なくならないよ…」
そこで気づいた。彼が、クロトが涙を流していたのだ。昔の夢を見ているのだろう…か細い声で
「いかないで…いかないでよぉ…」
と泣いていた。私は堪らず彼を抱きしめた。
「大丈夫…大丈夫…私はここにいるよ…!」
私は決めた。彼が起きている時にやりたかったが、いまやる事にした。
「クロト…んっ」
彼の唇を奪った。起きないように、でもじっくり。そして、
「我は妖精の女王、名はアンリフィート。風見黒斗、我が愛し子。そなたに永遠なる妖精の祝福を。妖精女王アンリフィートの寵愛を授けよう…んっ」
加護の詠唱をし、首に口づけをする。本当はどこでも良いのだが、なんとなくそこにしたくなったからだ。物語の妖精達も、そこにしていたし。
「…ちゅ…はぁ。ふふっ」
首にしっかりと痕をつけた。その痕は少しの間仄かに光って、消えた。
「何度だって言うわ。あなたの孤独は、私が癒す。」
彼を抱きしめて目を閉じる。クロトはもう涙を流していなかった。
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