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狭間:神と子

ふわふわと漂うような感覚。ゆっくり流されていくような、不思議な感覚。これが死ぬ、という事なのか。これなら存外、悪くなー

『いや、君は死んでいないよ。流されているのさ』

…誰だ。この声は?ざらついているような…そう、電話越しのような声だ。

『そうだね…私は神だ、といってもいいし、悪魔だ、と言ってもいい。正直自分でもどっちでもいい。君が決めてくれ』

じゃあ、便宜上「神」と呼ぶことにする。そっちの方が良いと思う。

『…そうか。僕を神と呼ぶか。では俺は神だ。凍えて死ぬはずの君を拾い上げた神だ』

一人称がめちゃくちゃだぞ。なんなんだそれは?

『言っただろう。どっちでもいいと。我は自我が薄い、というか存在が曖昧なんだよ』

そんな神が俺を拾い上げて、何をしたいんだ?

『そうだね…自分は弱くて薄くて曖昧だから特に大した事は出来ない。でも元々持っているものならあるのさ』

元々持っているもの…それはなんだ?

『"神隠し"だよ』

確かにな。神なんだからできるのか…?というか神には神隠しが標準装備されているのか?

『さぁね…うちは他の神と会った事ないからねぇ。とりあえず拙者の"神隠し"は割とすごいんじゃないか?知らないけど』

比較対象を知らないから分からないんだが…どんなのなんだ?

『対象を無作為に選んだ別世界に放り投げる』

…まさに神隠しだな…。でも選べないのか…で俺はその別世界に行くのか…こういったジャンルの本は読んだことがある。言語とか特殊能力が貰えていたな。そこはどうなんだ?

『力が足りないのでそのまましか出来ない。あと座標も選べない』

俺は死ぬんじゃないか…?どうにか出来ないのか…

『神の力の根源は信仰だ。信仰こそが神を神たらせる物だ。信仰が無い神は荒れ狂う獣に過ぎない。信仰が無くなれば神は信仰を求め暴れ狂いやがて消滅する』

信仰が必要って事なのか…この195円とかどうなんだ?六文銭と同じ価値なんだが…

『黄泉という概念、六文銭、渡賃、世界渡りを三途の川渡りに見立て…あぁそろそろ限界だな…』

ど、どうした急にブツブツと呟いて…限界ってなんなんだ?

『決めた。お前に全てくれてやる事にした。六文銭は渡賃だ。つまり世界を渡る対価だ。世界を渡る知恵へ置き換えてやる。これでお前はその世界の言語を扱える。そして特殊能力…それは俺だ。俺という自我が消えて純粋な力として残る。残滓で悪いがその力が何かしらに姿を変えるだろう。』

自我が消える…消えるってどういう事だ!

なんで俺にそこまでしてくれるんだ?俺は何もしていないぞ?!

『強いていうならば…恩返し、だろうな。あの朽ちた神社でほぼ死んでいた俺にお前は敬意を表した。ならばそれに報いなければならない。どうせ消える存在だ。それならばくれてやっても問題ないだろう?』

だが、それでも消えるなんてのは…

『あんな境遇でよく他を想えるな、お前は。その優しさは美しい。愛とは何か、だったか。それはそれぞれだと我は考える。では私の愛は恩寵だ!私を敬ったお前への報恩だ!』

これが、この温かさが愛なのか?この報恩こそ愛なのか?それなら俺はー

『お前はお前の愛を見つけるがいい!飢愛の神子よ!お前の征く先に幸福あれ!』

急降下していく感覚。だが寒くは無い。消えて行く「神」の存在に叫んだ。

「ありがとう!俺は異世界を生きていく!俺の愛を探して!」

そして思い出した。「神」へ告げた。

「お前の姿を思い出した!祀られていたお前の姿は蛇だった!」

瞼の裏で神が巨大な大蛇に変わったのが分かった。

『そうか!私は大蛇だったか!ではさらばだ!お前の決意、聞き届けた!』


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