表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ある日の回想

懐かしい音で目が覚める。

どうやら少しだけ、居眠りをしていたらしい。

くらくらして重たい頭をどうにか起こし、あたりを見渡すと、教室にはもう誰もいない。

窓の外からは真っ赤な夕日の光が斜めに差し込み、もう放課後であることに気づく。

机には出しっぱなしのペンケースとルーズリーフ。

シャーペンや消しゴムに至っては、寝てる間に落ちたのか、足元に転がっている。

何限から寝てたんだろ?

と、疑問に思い、ルーズリーフになんとなく目をやる。

そこには、メモをしようとした痕跡が見える。でもよっぽど早い段階で寝てしまったのだろう。何の授業かまではわからない。

うーん、頑張って思い出そうとしても、中々出てこない。直近の出来事のはずなのに、なぜか遠い昔の記憶をたどるような不思議な感触。まだ寝ぼけているからなのかな。

考え込むこと、十数秒。

そうだ、ようやく思い出した。

今日は水泳の授業だ。昼前にプールに入って、午後は疲れを引きずったまま爆睡、ってところね。

先生に全く起こされず気づいたら放課後だなんて、そんなことあるんだな。

にしても、帰るとき誰か起こしてくれてもいいのに。

一人で下校なんて久しぶりだよ、と思いながら、荷物をまとめてカバンにしまう。

さあ帰ろう。

教室のドアを開けようと思ったその時、一つ、違和感を覚える。

あれ、このまま下校していいんだっけ?

いつも、放課後は何かしていたような。

ーー例えば、部活とか。

部活、今日は無い日だっけ。

無い日って、何曜日だっけ?

今日って、何曜日だっけ…?


大きな音で目が覚める。

どうやら、朝らしい。

くらくらして重たい頭をどうにか起こし、あたりを見渡しても、教室の景色はもう目に映りこまない。

窓の外から差し込む陽の光、その眩しさに、先ほどまで夢を見ていたことに気づく。

私、もう高校生じゃないんだった。

枕元で鳴りやまぬ目覚ましのスイッチを切り、時間に目をやる。

もう、起きなきゃ。

一人暮らしを始めて1ヶ月、ようやく自立した社会人の生活に慣れてきたころだ。

仕事も忙しいけどやりがいがあって、毎日が充実している。

わずか25分で素早く支度を終え、カバンを持ち玄関のドアに手をかけた。

ふと、今日の夢が脳裏をよぎる。

はあ、とため息をついて、消え入るような声で呟く。

「行ってきます。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ