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婚約破棄されたうえ集団私刑されそうになったので物理的に反撃します

作者: 下菊みこと

婚約破棄されたうえ集団私刑されそうになったので物理的に反撃します

私、とある秘密がありましたの。


「アン!ジュジュに謝れ!」


「と、申されましても。一体何を?」


「しらを切る気か!この悪女め!お前とは婚約破棄だ!」


はじめまして、ご機嫌よう。私、アネット・ボアルネと申しますわ。気軽にアンとお呼びくださいませ。公爵令嬢ですの。さて、今私、絶賛混乱中ですわ。理由は目の前にいるお花畑脳の珍獣達。平民、ジュリエット・ルロワさん…通称ジュジュさんとその逆ハーレムメンバーが卒業パーティーの場で何か喚いているからですわ。逆ハーレムメンバーは、爵位から順に、公爵令息であり私の婚約者、ガブリエル・モンフォール様。騎士団長令息、シャール・マルク様。魔術師団長令息ドミニク・ラ・トレモイユ様。裕福な商家の令息、メルヴィン・リシュリュー様。平民であり私の侍従、ヴィクトー・レニエ。はあ、揃いも揃って一人の女性を囲って何をしているんだか。全く情け無いことですが、全員私の幼馴染ですわ。もう一人だけ、幼馴染がいるんですけれど、多分後で紹介しますわ。


「そうですアン様。いくらジュジュさんが学園の姫百合の名を奪ってしまったからと言って、ジュジュさんをいじめるのは間違っています」


いえ、たしかに学園の姫百合の称号は譲りましたが、新たに学園の紅薔薇の称号をいただいたのですが。ヴィクトー、貴方よっぽど自分の主人に関心がないのね。


「…えーっと。つまりあなた方は、私が嫉妬でおかしくなってジュジュさんに何かしたとおっしゃっているのね?」


私、平民風情に興味も関心もないのですけれど。あ、でも平民がどうやって姫百合の称号を与えられたのかについては興味があるかもしれませんわ。


「そうだ。何か違うのか?」


「アン様、ひどいです!」


私、何をやらかしたことにされているのかしら?


「えーっと。ジュジュさん?私、平民の貴女に愛称を許した覚えはなくてよ?あと、いじめなんて何かの間違いじゃないかしら?私、貴女に何かしてしまった?」


「ひどいです、アン様!またそうやって身分で差別して!それにまるで私が悪いみたいにお説教もしてくるし!意地悪です!」


「アネット!ジュジュをいじめるな!」


騎士団長令息のシャール様が。


騎士団長令息のシャール様が。


騎士団長令息で、次期騎士団長と目されるシャール様が。


公爵令嬢の“か弱い”私を無理矢理捕まえて、抑え込みます。なにやってんだこいつ。


…おっといけない。本音が出かかりましたわ。


「あの。せめて私が何をしたのか教えてくださらない?私、本当に心当たりがないの」


「なんてやつだ!ジュジュを傷つけておきながら心当たりがないなんて!僕の魔法で懲らしめてやる!」


魔術師団長令息のドミニク様が。


魔術師団長令息のドミニク様が。


魔術師団長令息で、次期魔術師団長と目されるドミニク様が。


公爵令嬢の“か弱い”私に徐々に衰弱していく拷問用の魔法をかけます。おいお前ふざけんなよ。


…おっといけない。また本音が出かかりましたわ。私はか弱い公爵令嬢。私はか弱い公爵令嬢。


「なら教えてやろう!貴様はジュジュを平民というだけで差別し、意地の悪い物言いをし、他のご令嬢方の前でマナーがなっていないなどと注意してジュジュを晒し者にした!」


いや、それは差別じゃない、区別だ。意地の悪い物言いに関してはそっちが勝手にそう思っただけだ。そして注意してあげただけで晒し者とか自意識過剰過ぎる。


「さらに!ジュジュのカバンを中庭の湖に捨てたり、机に心無い落書きをしたり、あげく階段から突き落としただろう!」



ー…


それ、私じゃなくて平民クラスのみんながやったんじゃないかしら?確か平民クラスの女性の皆さんは、ジュジュさんの存在のせいで上位貴族を誑かすために学園に入学したんじゃないかってあらぬ噂を流されて貴族クラスの女性からは虐めを、男性からはセクハラを受けているらしい。そのため一人だけ逆ハーレムを築いてうはうはしている学園の姫百合、ジュジュさんを相当憎んでいるらしい。


ええ…私何も悪くない…。


「あの、それ、少なくとも後半は私がやったことじゃないですわ」


「何を言う!それでは、学園の姫百合、ジュジュが嫌われ者だとでも言うのか!あり得ないだろう!」


「あり得ますわ」


「は?」


「え?」


「だって、ジュジュ様のせいで真面目にお勉強しにきている平民クラスの皆様がありもしない噂を流されて虐められたりセクハラ…えっと、そういう変な目で見られたりしているんですの。怨みは確実に買っていますわ」


試しに正論を言ってみる。


「…つまり、それを利用してジュジュを追い詰めたのだな!許せない!これから先、お前の家との契約は切らせてもらう!」


裕福な商家の令息、メルヴィン様が。


裕福な商家の令息、メルヴィン様が。


裕福な商家の令息で、次期社長となるメルヴィン様が。


公爵令嬢の“か弱い”私に脅しをかけてきます。お前の父親が聞いたら卒倒するぞおい。


…おっといけない。もうほとんど本音が口から出かかりましたわ。すんでのところで飲み込めてよかった。


はあ。全く。お花畑共の相手は頭に血が上りますわ。体に悪い。


突然話が変わるのですけれど、私、実は前世の記憶がありますの。そしてこの世界は、前世で日本という国にいた時に遊んだ乙女ゲームの世界と類似しておりますの。そしてそのゲームでの私の役割は悪役令嬢。最終的にヒロイン…ジュジュさんに好きな男を取られてその腹いせにジュジュさんをいじめ、攻略対象者の手で断罪され、貴族社会を追われますの。


ですから私、そのフラグを折るために懸命に努力しましたわ。まず婚約者のガブ様や他の攻略対象者に恋をするのを抑えましたわ。みんな無駄にイケメンでしたから、時々ときめきそうになったりして大変でしたのよ?さらに、ジュジュさんにもいじめなんてとんでもない。なるべく関わらないようにして、ジュジュさんが無作法を働いた時にはフォローに回り、優しく注意して差し上げましたわ。


…その結果がこれ。


堪忍袋の緒が切れましたわ。もう貴族社会どころか国外追放処分でもいいですわ。


徹底的に叩きのめして差し上げますわ!


「ドミニク様。ちょっと失礼」


「は?」


私はドミニク様に謝ってから、私にかけられた拷問用の魔法を解きます。無理矢理魔法を解くと、魔法は魔術師に跳ね返るので、当然ドミニク様に拷問用の魔法がかかります。


「えっ!えっ…なんで僕の魔法が…!」


自分にかけられた魔法を解くことは相手の魔法を奪い取るも同じ。すごく高度な技術ですの。なぜただの公爵令嬢がそんなことが出来るのか、みんな不思議そう。


…そう、これこそが私の秘密。私、密かに魔術師として、騎士として受ける教育も受けていましたの!


呆気にとられているシャール様の拘束を逃れ、逆に護身用に持っていた手枷で拘束すれば形成逆転。さあ、思う存分暴れますわよ!


ー…


…もうこれ、卒業パーティーじゃなくてプロレス大会ですわね。そして私の圧勝ですわ。ジュジュさん達が逃げようとしても、ギャラリーである貴族クラスの皆様や平民クラスの皆様がガードして逃げ出せない。主役の王太子殿下は何か用事があって少し遅れるらしいですし、まだもうちょっと遊べますわね。


…なんて考えつつ、私はスタイナー・スクリュー・ドライバーをシャール様にかけます。さらに、ドミニク様にはツームストンパイルドライバーを。メルヴィン様にはバックドロップを。ガブ様とジュジュさんにはちょっと軽めにモンゴリアンチョップをかけましたわ。


ー…


「いいぞー!やれやれー!」


「平民風情が調子に乗りやがって!」


「私達の婚約者の心を奪った罰よ!」


ジュジュ様には見た目だけ派手な技をかけます。女の子ですもの。あまり酷いことは出来ませんわ。その分男性方にはたっぷり痛い目にあっていただきますわよ!幼馴染や婚約者を簡単に裏切った罪は重い!


ー…


「なんなんだこの騒ぎは…アン、説明しろ」


あら、王太子殿下がようやくお出ましになりましたわ。


「あら、今いいところですのに」


「お前そんなに強かったのか。ていうかいい加減技をかけるのをやめろ」


「そうです…もう、やめてください…」


「あら、ごめんあそばせ」


彼はレオナルド・ド・ブルボン王太子殿下。私の幼馴染の一人ですわ。レオに先程起きた断罪ごっこと、今起きているプロレスごっこを説明します。


「あー…それはお前らが悪いな…アン、こっそりシャールに魔法で嫌がらせするのやめろ」


「ばれたか…」


「ばれるわアホ。やめてやれ。んでもって責任を取ってこの間の決定を教えてやれ」


「ああ、そういえば今日正式に発表するはずでしたわね。私、ガブ様が婚姻前から浮気した証拠を集めましたの。これを理由に婚約破棄させていただきますわ。もちろん慰謝料はふんだくらせていただきます。これで私達の婚約は終わりですわ」


「なっ!?」


「そして、私はレオナルド・ド・ブルボン王太子殿下の正式な婚約者になりますわ」


「ちょっと待って!そんなこと聞いてない!逆ハーレムルートに入ったらレオ様ルートに入れるはずじゃないの!?」


「ええ。“ゲーム”ではそうでしたけれど、現実は違いますわよ?」


「そっ…そんなっ!」


「アン!俺を捨てるのか!?」


「元々私を捨てたのはそちらですわ。せいぜい反省してくださいませ。ではご機嫌よう」


こうして私は無事婚約破棄できて、慰謝料もがっぽりといただきましたわ。そして、レオナルド・ド・ブルボン王太子殿下と新たに婚約しましたの。卒業パーティーは元々私のプロレスごっこで盛り上がっていましたから、皆様かなり大盛り上がりで祝福してくださいましたわ。レオ様は腹黒天才系王太子ですが、懐に入れた人間には甘々ですの。愛のある結婚が出来そうで幸せですわ。


何かあったら物理で解決。それも一つの選択肢ですわ。

“父の隠し子が見つかったので”の王太子の婚約者を書いてみました!物理的に強い女の子です!

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― 新着の感想 ―
[一言] 楽しかったです(* Ŏ∀Ŏ)・;゛.:';、ブハッ!!
[一言] ……義姉もこれか。 アナスタジア姫の胃が壊れる日も近そう。 まぁ、彼女にはウィリアムが居るから大丈夫かな。 面白かったです。
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