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聖女降臨3

さて、そろそろ私が誰かと言う事を話そう。


私はこのハクヤ国の第一王女アリエル。


御歳16歳。

婚約者はいない。

と、言うのも今年が聖女降臨の100年目になるからである。

聖女様は王家で抱え込まねばならない。

勇者(しか)り。

故に王族は聖女降臨が終わらぬ内は婚約者を持たないのだ。


しかし、通例なら召還される聖女様はお一人。

伴侶になれる王族が複数いると半年間の交流を経て聖女様自らに伴侶を選んで貰うのがしきたりになっていた。

そして、聖女争奪戦に勝った者は自動的に次期国王となる。

つまり、複数の王子がいれば例え長子であっても聖女に選ばれなければ王位継承権が下がると言う事だ。


さて、ここまでは一般的なルールだ。


問題は私と王太子の間には4人の王子がいたと言う事だ。


最初の王子は病弱で病で亡くなる。

次の王子は落馬して亡くなる。

次の王子は親族の謀反の疑いで処刑。

次の王子は階段から落ちて亡くなった。


何れも理由があるが、4人も続けば疑念がわく。


故に母は私を女と偽った。

だから生かされている。

誰から?

勿論、あの王太子からだ。


何故なら聖女は王子の中から伴侶を選ぶ。


つまり、王太子は聖女を伴侶にしたいが為に実の弟達を殺めているのだ。


げに恐ろしき男である。



今回の聖女降臨は聖女様と勇者様がお一人づつ降臨された。


故に、王女となっている私を生かす意味があるのだ。


先ほどの聖女降臨の儀式の後、私は優希と共に宰相から今後の説明を受けるべく何故か私の部屋へと誘導された。


宰相は王太子に今後の事を打ち合わせる為にいったん出て行っている。


「どうぞ。香茶です」

そう言って私は優希に香茶を差し出す。


勿論私も今までも命の危険があった為に毒見のいない飲食には気を付けている。

日常の些細な飲み物でさえ常に自分で仕入れて保管、そして侍女には頼まず淹れている位だ。


「ありがとう。とても爽やかな味ですね。美味しいです」

優希は何の躊躇いもなく私の差し出した香茶を飲んだ。


きっと彼の居た世界は毒の心配もない平和な世界だったのだろう。


そう思うと複雑な感情が芽生える。

だからちょっと意地悪になってしまった。

「優希様は初対面のこのような女と結婚を決めて良かったのですか?それとも私が王女だから?爵位と領土を貰えるから結婚を決められたのですか?」

自分で言っていて反吐(へど)が出る。


だって、私には何の選択権もない。

逆らえば死ぬのみ。

優希が私を嫌だと言えばあの王太子はどんな手に出るのやら。

きっと優希も私も無事ではすまされないだろう。


「そうですね。先ほどの王太子?でしたっけ。彼に殺させたくなかった……からでしょうか?」


再び香茶を飲みながら優希はそう言った。

ドキリとした。

「殺される」じゃなく「殺させたくなかった」?と。

「私が貴方を娶らねば、きっと貴方は……」

優希の言葉の途中でガタリと立ち上がる。

「な……ぜ?」

知っているのか?

母も私もまだ半信半疑なのに……。

「だって、本来なら宰相は陛下に事の次第を伺わなければならないのに、今もほら、王太子の所へ聞きに行ったでしょう?」

優希はそう言うと空のカップを寂しそうに眺めた。

「だから、これから成長する貴方を彼の手から助け出せるのであれば、それも良いかな?と、思ったんだ」

「同情ですか?」

「いや……ちょっとしたボランティアかな」

ボランティア?どう言う意味かしら?

私が訝し気に優希を見ていると


「おかわりを頂いても?」


優希は私にカップを差し出しニコリと微笑んだのだった。


お読み頂きありがとうございます。

また読んで頂けたら幸いです。

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