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聖女降臨12

「おはよう子猫ちゃん達。昨日はあれから部屋へ来なかったからもう会えないと思っていたけど、朝から可愛い君達に会えて心踊るようだよ」


そう言ってすっと目を細めて微笑んだ優希と目が合った侍女達は顔を赤くさせて瞳を潤ませる。


サラサラな黒髪は短く切り揃えてあり、目元も涼し気で、何より異世界の服がとても神秘的だ。


男の色気を嫌に出している感が半端ない。

優希が言うには神社と言う所で神前試合をした後に神に捧げる剣舞を踊っている最中にこの世界に来たとの事。


多分神殿で巫女姫が神に躍りを捧げるのと同じようなものだとの話し。


「普段様の簡素な服とかあると嬉しいな。流石に着物は着なれなくって」


優希は首に手をやると、ハラリと襟元を崩す。

すると、細い首筋が露になった。

多分、私より細いと思える滑らかな首。

色白で、普通の女性よりも透き通って見える。

苦笑いを浮かべる優希に数名の侍女達が失神してしまった。


「大丈夫かい?」


優希はそう言うと立ち上がり、失神して倒れた侍女達に近付き膝を折った。


「もしかして、体調が悪いのに私の為に無理をして来てくれているんじゃ……」


困ったようにそう言うと優希は一人の侍女の手を取った。


その光景を見た侍女達が黄色い悲鳴を上げる。


「あぁ、目眩が……」

どの侍女が発した声か、途端に数名の侍女達もバタバタと倒れて行く。


それは如何にも演技掛かった倒れ方で、まるで自分達も優希に解放して欲しいようにさえ思えた。


「あぁ、優希様~」

切なく呟く侍女達。


いや~、女って怖いね。


自分が女じゃなくって良かったと思うよ。


「困ったね。こんなに沢山の侍女さんが倒れてしまうなんて……」


本当に困ったように優希は一人一人、自分の手を差し出し倒れて行く侍女達に優しく触れる。

まるで壊れ物でも扱うように。


「お兄様にお願いして聖女様に癒しの魔法を掛けて頂きましょうか?」


そう。

あの腹黒鬼畜の身内殺しの兄が昨日から大切にしている聖女様にわざわざ(・・・・)来て頂くのだ。


「それは良い考えですね」


私の言葉に優希が賛同すると同時に倒れていた侍女達が慌てて起き出す。


「いえ、それにはおよびません。優希様。私達は大丈夫ですわ」


焦ったように一番年上の侍女が断りを入れて来る。


数名の侍女なんて倒れる前より顔色が悪いくらいだ。


きっとこの様子を見るに、念願の聖女様を囲う為兄は昨日から色々やらかしているんだろうと、何処か遠い目になってしまった。


お読み頂きありがとうございます。

また読んで頂けたら幸いです。

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