聖女降臨11
朝、目を覚ますと優希が窓の近くで剣を片手で持ち剣の稽古をしていた。
何かの型なのだろう。
まるで舞を見ているかのように美しいその軌道。
並みの舞手でもこれ程美しくはないのではないだろうか?
やはり、異世界の人間はこちらの世界の人間とは異なるのかもしれない。
呆然と優希を見ていたら、どうやらこちらに気付いたようだ。
「おはようアリエル。起こしちゃった?」
朝から爽やかにそう尋ねてくる優希。
「いえ、何時も起きる時間だったから」
自分が遅く起きてしまい、少し恥ずかしい。
優希は剣を鞘に戻すとサイドテーブルの方へと歩き出した。
そこには、昨夜スープ皿の中に浸した腕輪が入っている。
そっと、優希は液体の中から腕輪を取り出した。
「これでどうかな?」
そう言って片方を私の方へと渡す。
私は受け取った腕輪をじっくりと観察した。
色鮮やかに文字が浮き出た腕輪。
「凄い。本当に完成している」
母上の腕にある腕輪と同じような模様に色の入った腕輪だ。
「じゃあ、早速填めようか」
優希はそう言うと私の腕に自身の持っていた腕輪を填める。
すっと手首に填められた腕輪。
まるで手首に馴染むようにうっすらと輝いてから形を変える。
「じゃあ、アリエルも私に腕輪を」
そう言って自身の腕を私の方へと寄越す。
私は優希の手を取り、そっとその手首に腕輪を填めた。
すると、さっきの私の腕輪同様にうっすらと輝いて馴染むように形を変えた。
「これで私達は夫婦かな?」
そう言って優希は微笑む。
まぁ、狀だけの夫婦かな?
男同士ですけどね。
でも、これで一応首の皮は繋がった。
お兄様に殺される事だけはなくなったのだ。
問題はドラゴン問題のみ。
「じゃあ、早く着替えて朝食にしよう。お腹空いちゃったからさぁ」
ニコリと微笑んだ優希。
この後、昨夜のキッチンワゴンを取りに来た侍女達に優希の大食漢を驚かれる事になるのはまた別の話し。
誤解なんだけど、まぁそれは些細な事だ。
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