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まっしろ家族計画  作者: 黙示
12/13

貢ぎもの

 考えたって結果は変わらないじゃん。

なんでそんなくだらないことで悩むんだろ。

青扇さんの、俺を責める瞳を思い出す。

なんで俺が悪いみたいになってんだ。

俺は隣の自室のドアを開けた。


「え......」


思わず声が漏れる。

なんだこれ。

俺の目には、部屋を埋め尽くす段ボールの山が映った。

大きな段ボールが床も見えない程敷き詰められ、積まれている。

一番近くの箱を開けてみると、中にはゲーム機が入っていた。

他のも開けてみる。

PS2、PSP、PS4、switch、wii、DS、3DS......ゲーム機とその周辺機器が次々と出てくる。

ある箱にはびっしりとゲームソフトが詰まっていた。

ある箱にはびっしりと漫画が詰まっていた。少年漫画だった。

ある箱にはPCが入ってしたし、何やら見たことのない機械もあった。

緋宮さんが暇潰しに用意してくれたとかか?

開けるのに疲れて、段ボールを分けてベッドに向かう。

途中見えた机の上にプリンが置かれていた。

金のパッケージの、いかにも高そうなやつだった。

3つ、並んでいた。

プリンが3つ......?

もしかして.......。

ガラガラドン!

近くで何かか崩れる音がした。

びっくりして音がした、部屋の奥の方を見る。

と、ゴソゴソと誰かの気配がして「うぅ」と唸る声がした。

伊賀だ。

高く積まれた段ボールのせいで姿が見えなかった。


「伊賀、いたのか」

「はい。いました!荷物を片付けてました!」


声だけが届く。

にょいっと本棚の頭が表れる。

伊賀が寝ていたものを起こして立てたのだ。


「わざわざ収納までくれるなんて気が利きますね」


本棚が壁際を動いていく。


「これ緋宮さんから?」

「えっ、違いますよ。桃城様からですよ!聞いてないんですか?」


聞いてない。


「あのー本棚はここでいいですか?」

「ああ、うん」


ゲームも漫画も俺が二人と話したことだ。

まさかそれだけで?

二人も金持ちだったのか。

金持ちってなんか、スケールが違うな。

ベッドに座って部屋を見回す。

といっても視界は狭い。茶色い。

この中にいっぱいいろんな物が入ってるのか。

そんな沢山あってもなあ。

正直PCは欲しかったけど、さすがにこんなにただで貰っては申し訳ない。

 俺は部屋を出て、さっきと反対の隣の部屋のドアをノックした。

今度はすぐにドアが開いた。

出てきた顔はじっと俺を見上げた。


「こんにちは」


俺が言うと、相手は頷いた。


「こ、こんにちは」


えーと、こっちはどっちだっけ。

燐?憐?

背の高さで判断......ていっても今は一方しかいないし。


「ごめん。どっち?燐?憐?」

「燐です。出てくるのは大体燐って覚えておいてくれればいいと思う」

「おっけー。なあ、俺にいろいろくれた?」


燐は頷いた。


「ありがとう。でもあんなに大丈夫?お金とか俺払えないし」


燐はかぶりをふった。


「要らない要らない!受け取って!これからよろしくってことだから」

「いやー、でも流石にあんなに高価なもの貰えないし」


燐は大きく腕を振る。


「あ、要らないなら捨てるし、要らないやつ言って。業者呼ぶから」


捨てる!?勿体ない!勿体ない!


「いや、欲しいは欲しいんだけどさ」

「じゃあ貰って。貰ってくれたら嬉しい」

「じゃあ......貰おうかな......。ありがとう」


燐は顔を赤らめて俯いた。

いつのまにか燐の後ろに憐がいた。

憐は燐の肩をつつくと何か囁いた。

燐が頷いて、俺を見つめる。

憐に再度つつかれて燐がドアを大きく開いた。


「寄ってく?お茶出す」


すぐに戻るつもりだったので断ろうとすると、燐が後ろから声を上げた。


「ゲームの設置方法とか、PCの初期設定の仕方とか教えるし」


そっか機械を使うということはそういうことを先にやらなければいけないということだ。

めんどくさい。

どうせなら設置までやってくれればよかったのに。


「じゃあ教えてもらおうかな」


俺は双子の部屋に上がった。

この前より少し片付いている。

憐がすぐにテレビの前に3人分の座布団を並べ、俺は真ん中に案内された。


「一緒にスマプラやろう」


憐がコントローラーを押し付けてきた。

燐がゲームを起動させる。


「スマプラか。久しぶりだなー」


燐が3人分のお茶を置いて、俺の横に座った。

キャラクター選択画面がテレビに映る。

光の家にいくと毎回スマプラをやった。

小学生の頃からの恒例で、俺はスマプラをやるために光の家に遊びにいっていたといっても過言ではない時期があった。

俺はいっつもカーブィを選ぶ。

カーソルを動かしてカーブィを選択する。

飛べるのが最強なんだよな。

試合が始まる。

俺は二人に集中攻撃を喰らって即死した。

元々ゲームは得意ではないが、これは理不尽なレベルだ。

双子があまりに強すぎる。


「二人とも強すぎない!?」


双子は得意気に鼻を鳴らした。


「ハンデつけてよ」

「じゃあ10秒間動かない」


燐の提案したハンデをもってしても俺と双子の差は欠片も埋まらなかった。

ムキになって再戦を申し込む。

しかし次も、その次も更にその次も勝つことができなかった。

一時間ほどして俺はスマプラで勝つことを諦めた。

別のゲームでも勝つことは出来なかったが......。


「当然だよ。だって末代さんとは経験値が違うから」

「僕たちずっとゲームしかしてないから」


最後にオマケみたいに軽く初期設定のしかたを教わった。


「久しぶりにゲーム出来て楽しかった。ありがとう。また今度リベンジさせて」


二人は大きく頷いた。

外に出ると燐に呼び止められた。


「末代さん、他にも欲しいものあったら言ってね」

「ああはは、うん。ありがとう」


燐と憐は俺が部屋に入るまで見送った。

 部屋に戻ると視界がクリアになっていた。


「あ、お帰りなさいませ」


伊賀がテレビを弄っていた。

入り口付近に、畳まれた段ボールが紐で縛られまとまっている。

元はひとつしかなかった棚が5つになり、漫画が収納されている。テレビの横には台が置かれ、様々なゲーム機がすべてその中に収まっている。PCは机の上に設置され、細かなものもそれぞれ適切な場所に配置されている。


「これ全部伊賀がやったのか?」

「はい。あとswitchとテレビの接続です。あ、パソコンのパスワードとかの設定は自分でやってくださいね」


ゲーム機の設定も済んでいるような口ぶりだった。

伊賀そういうの出来るのか。

教えてもらった意味ないな。

少し部屋が狭くなったが、元々これよりももっと窮屈な場所で生活していたのだ。寧ろもっと狭い方が落ち着くくらいだった。

PCの隣にプリンが3つ、置かれたままだった。


「終わりました!」


伊賀が叫んだ。


「お疲れ。ありがとう」

「フフン。テレビには最新のswitchを接続、ソフトは一番のオススメ、ドラキュラ11をセット!漫画は『頑張れ戦一君!』と同作者の作品をご主人様の目線の位置に配置!どうですかこの気遣い!」

「凄いな」

「ありがとうございます!」


なんでお前がお礼言うんだよ。

俺はプリンを指差す。


「これあげる」

「やったー!ありがとうございます」

「2個」

「2こ!!??」


伊賀はうやうやしくプリンを持ち上げた。


「ご主人様いっつもオレにくれますね」


緋宮さんに貰うお菓子のことか。

まあ、同じ部屋にいるのにあげないのもアレだし。

伊賀は目をキラキラさせて嬉しそうにプリンを見上げた。

双子にも何かお返ししないとな。

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