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50 異常事態

な、なんだってー?!

 夏の甲子園。第3回戦、第1試合を控えた、1塁側の甲子園室内練習場にて。

 試合開始前のインタビューを終え、試合を控える関東総合学園のメンバー。


「…ふう……ふう……ふう……」

 落ち着こうとしているのか。先発を言い渡された鈴木選手が壁に向かって深呼吸のようなものをしている。しかし、傍目にも落ち着いているようには見えない。

「鈴木…少し落ち付け。というか、落ち着いてもらわなければ困る。お前が先発でいいんだよ。そう心配するな」

 東郷監督が鈴木選手に声をかける。

「…し、しかし…俺の球が通用しなければ……」

「その時は、山崎の連続本塁打記録が伸びるだけだな」

 ふひぃぃ、と変な声を出す鈴木選手。東郷監督も含めて、部員から苦笑が漏れる。

「こいつ、これさえなければなぁ」「ホントに肝が小さいというか」

「これでもマウンドに登れば少しは落ち着くんだけどな」

 部員一同が口々に残念そうな言葉を漏らす中、東郷監督が少し大きな声を出した。


「あのなー、鈴木。皆も聞け」

 部員一同が監督を注視する。


「弘前高の山崎は、文句無しに今大会屈指の化け物だ。しかし、それは山崎が宇宙人だとか、未来から来た超能力者だとか、そんな理由じゃない。単に選手としての能力が高い、一般の選手に比べてレベルが高い、そんな話だ。ま、高校生の中に一流プロ選手が混ざっているようなもんだ。そしてこういう選手は、たまに出てくる。それだけの事だ」

 監督の声にうなずく部員を見渡して、東郷監督は言葉を続ける。


「そして一流のプロ選手であろうと、高校生の投げる球を全打席ホームランにできるわけでもない。凡打に終わる事もあれば、空振りする事だってある。要はやり方、アプローチの仕方によって、対応はできるもんだ。さて、ここで何か言いたい事は?」

 東郷監督、もう一人の先発投手と言ってもいい佐藤選手を見る。

「はい。第1、第2試合のピッチャーの球は、バットに当たれば即ホームランでしたが」

 佐藤選手の言葉に、鈴木選手の方から『ひいっ』という声が聞こえた。


「その理由は簡単だ。単に『打てる』『打ったことのある』球だったからだろう。それにはもちろん、速度や球種といったものも含まれる。おそらく、山崎でも200キロの速球を投げ込めば1球目からホームランにはできんだろうし、ストライクゾーンから浮き上がってバックネットに突き刺さるような変化球なら空振りだってするだろうよ」

 部員から、軽い笑い声が聞こえた。鈴木選手はまだ固まったままだ。


「俺が思うにな、山崎は動体視力が恐ろしく良いんだろう。だからこそバットが届く位置のボールだったら迷わず振ってくるし、確実に当ててくる。しかし、だからといって、瞬時にバットを振り切れるような、人間を辞めたようなスイングをしているわけじゃない。山崎のスイングは普通の選手に比べて、とんでもなく速い。しかし、だ。山崎も、狙い澄まして(・・・・・・)バットを振り抜いているには違いない。確かにレベルは高いが、あくまで練習の成果、似たような球を打ち込んできた経験の成果に過ぎないさ」

 黙って監督の言葉の続きを待つ部員一同。


「どんな選手でもやっている事だ。コースを予測し、タイミングを合わせてバットを振る。ただ、山崎はそれがハイレベルに上手い。そういう事だ。であれば、だ。初めて見る球種、変化、それ専門にカスタマイズする必要のあるタイミング、あるいは予測不可能な球種。そういう球であれば、山崎であろうとも初球から本塁打は打てんさ。慣れるまでには時間がかかる。要は『練習が必要』って事だ」

 それぞれに頷く、部員一同。


「もちろん、まぐれ当たりで本塁打をいきなり打たれるかもな!!」

「「「うはぁーーー」」」

 軽くずっこけるようなリアクションの部員一同。


「どの道、佐藤だったら初球本塁打の可能性が、ぐんと高い。他の控えでも同じだ。鈴木を出す以外には選択肢が無いんだよ。少なくとも、ウチのチームではな」

 苦笑いの一同。弘前の山崎と言えば、超人的な打者として生きた伝説となりつつある。もはや女子選手というだけの理由で舐めているような選手など居なかった。


「そして、その選択肢がある、というだけでも関東総合は弘前よりも総合力が優れているチームだ。多くの練習時間を費やし、得意を伸ばすだけでなく、弱点を克服し、相手によって対応方法を変える事のできる柔軟性を身につけている。単に投手の数を揃えるだけでなく、相手の虚をつき調子を崩せる鈴木のような投手を隠し持つ(・・・・)だけの余力もある。確かに登録選手を選んだのは俺だ。だが、その実力を備えたのはお前たちだ。自信を持っていいんだぞ。鈴木もな」

 ようやく硬さが少し取れたのか、うなずく鈴木選手。


「弘前の打線は強い!しかし、ほぼ山崎と北島の打撃が主力だ。この2人の調子を崩すだけで、弘前の打線は切れる。点だけの打撃でろくに得点できないのは言うまでもないな。そして弘前野球部はバランスが悪くとも強い!全国大会という舞台では誰もが挑戦者だが、今回は弘前高校という新人強豪校に、挑み、そして勝利するとしよう!!」

「「「はいっ!!!」」」

 元気の良い返事を返す部員一同。


 夏の甲子園大会での優勝経験を持つ、野球名門の関東総合高校。野球部員は気合いを漲らせて、グラウンドへと向かって歩き出した。



※※※※※※※※※※※※※※※


 3塁側の屋内練習場で、そろそろグラウンドへ向かおうかと準備する、弘前高校野球部。


「…で、大槻センパイ。相手チームの先発投手ですけど」

「ああうん。鈴木選手(2年)ね」

 山崎がマネージャー業務に戻った大槻センパイと話している。話題は相手チームの本日のオーダーを見ての目玉、先発投手に関する事だ。おそらくは、昨日話した内容の再確認のようなものだろう。大槻センパイが手帳を取り出している。


「そう、その鈴木くん。どんな投手でしたっけ?」

「ええと…速球は130キロ後半、140キロに届くかどうか。変化球主体の投手で、右投げ右打ち。カーブ、シュート、スライダー、チェンジアップが主な球種。ただし身長は180センチと長身で腕が長く、スライダーはほぼストレートと同じ速さで投げられるので要注意…ってとこだけど?」

 さすがだな大槻マネ。マネージャー業務に戻ってからの仕事ぶりにキレがある。今日は走る必要もランナーコーチに立つ必要もないという事もあってか、とても落ち着いた様子。1回戦の時の挙動不審ぶりがマボロシのようだぜ。


「ふうむ。有能ではあるが、名門野球部としては及第点レベル…普通といえば普通…その上で、速球が140キロ後半に届くエースピッチャーを差し置いての先発か…」

「速球派投手なら、もう1人いるはずなんだけどね。変化球投手の方が、弘前の相手には適任だという事なのかな?」

 ふーむ。と、うなる山崎。


「鈴木くん、県大会からこっち、どのくらい登板してました?」

「県大会で2回くらいかな?本大会では初登板だね」

 むぅー。と、うなる山崎。


「秘密兵器か…?生意気な………」

「「「そういうの、もうやめてやれよ」」」「やめてあげなよ」

 弘前野球部員一同、声を合わせて言った。大槻センパイもいっしょだ。


 県大会決勝の時も似たような事を言って、明星のエースを目の敵にした事もあったが。今回は別に自分よりも相手が目立っているとか、そういう事もないんだからさ。というかすでに山崎は本大会で最も注目される選手になっている。あと相手は他校でも2年だから。生意気とか言っちゃダメだよ?


「いやでもホラ、向こうのチームの監督って、ベテランで『名将』とか言われてるような、偉そうなおじさんでしょ?何か仕込みでもあるんじゃない?」

「仕込みって何?あと偉そうとか言わない」

 大槻センパイの問いに、そうだなぁー、と少し考えてから。


「魔球の1つでも仕込んであるとか」

「「「そんな奴がそうそう居るか」」」「ないわー」

 部員一同の総ツッコミ。


「あのなぁ山崎。普通、『名将』っていうと、選手の能力を見極める眼力があるとか、的確に作戦指示を出せるとか、相手の作戦とか選手の弱点を見定めるとか、そういう洞察力とかいったものに優れている監督の事を言うんだよ。秘密兵器を育てるとか、そういうんじゃないの」

 えー、そんなぁ。ロマンがないなぁー。などと文句を言う弘前の秘密兵器。いや、もう秘密兵器ではないか。現状においては【最終兵器】扱いでしかないな。秘密最終兵器と呼ばれていたのは過去の事だ。


「今の山崎の言葉を基準にすれば、ウチの平塚先生こそが『名将』という事になるな」

 俺の一言に、部員一同から『おおお』と声が上がる。なんかいい事を言ったらしい。


「秘密兵器・山崎を育てた名将」

「山崎と北島を育てた名将」「無名弱小を強豪に育てた名将」

「伝説の試合を演出した名将」「高校野球界に物申す名将」

「現代のカリスマ人格者な名将」「ジャイアントキリング平塚監督」

 ここぞとばかりに平塚監督をヨイショする流れ。


「その辺でやめてくれ」

「「「すいません」」」

 平塚先生の一言で素直に謝り、俺達はグラウンドへ向かった。緊張感の欠片もない、いつもの弘高野球部である。



※※※※※※※※※※※※※※※


【国営放送・放送席にて】


「全国高校野球、夏の甲子園大会。間もなく開始となります。本日第1試合の解説は、新東日鉄の野球部監督を務めた、大石さんにお願いします。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」


「さて、第1試合、第2試合と話題性に事欠かない、躍進の初出場校である弘前高校ですが…今回の対戦相手は、またもや野球強豪校と名高い、関東総合高校です。関東総合は過去に夏の甲子園での優勝経験もあります。また、全国大会への出場経験も夏大会だけで実に8回。学校としては創立30年あまりですから、この回数は驚くべき実績です」

「さらに、関東総合を率いるのは『名将』と言われる東郷監督ですからね。東郷監督は今までいくつかの学校で監督を務めていますが、いずれのチームでも全国へ出場するなどの実績を残しています。関東総合が夏の大会で優勝したのも、東郷監督の代になってからですからね。作戦指示と指導力には定評があります」


「今回の試合も、関東総合の1番の課題となるのは、弘前の山崎・北島の両選手に対してどう対応するか…という点でしょうか?また、投手としての山崎選手をどう攻略するか?という点も問題になりますが」

「難題ですねぇ。私だったらサジを投げてますよ」

「お手上げですか」

「何よりも、時間が無いというのが、ですね。ずっと前から山崎・北島の両選手を攻略するための対策を整えて練習するならともかく、あの両選手が只者ではない、と全国レベルで認識されたのは、いいとこ県大会の決勝からなんですよ。そこから1か月もないうちに全国大会ですし、対策もへったくれもあったもんじゃない」


「名将・東郷監督でも対応に困ると思いますか?」

「結局のところ、プレイするのは選手です。選手の実力、選手の技術の幅が戦術を決めます。事前に準備をしていなければ、いかに名将といえど作戦も立てられない」

「なるほど。確かにそうですね」

「もっとも、人数不足の危機すらある弘前と違って、関東総合の野球部は選手の人数も多く選手層も厚い。持っている技術の幅で、なんとか山崎選手を攻略できればいいんでしょうが…できなければ、また初球本塁打の記録が伸びますよ」


「実際のところ、少し楽しみです」

「確かに。現在の大会連続本塁打数は9本。うち8本は初球打ちですね」

「そろそろ試合が始まります。1塁側には関東総合、3塁側には弘前。先攻は弘前で始まります。そして打順1番は話題の山崎選手!対するは関東総合の2年生、鈴木選手です!鈴木選手は今大会で初めての登板です。さぁ、第1球はどの球から入るか…?」

「変化球主体の投手という事ですが…おおっと、これは」



※※※※※※※※※※※※※※※



『ボール。ワン』

 球審のコール。

鈴木(2年)選手の球は、ゆるい大暴投でバックネット上部へと飛んでいった。


「うーん。なんか前の試合でも見た事あるなぁ」

「山崎は敬遠だろうか」「相手の監督も困ったのかな?」

「あれはどうしようもない感あるからなぁ」


 やれやれ、的な感想が仲間から漏れる。確かに、山崎を普通に打ち取れるイメージは湧かないし、鈴木選手がそんなピッチャーだったら(例えば山崎並みの剛速球投手とか)、向こうのチームの控えに入っているのも不思議でならないと思う。仮にそれが当然な状況だとしたら、エースピッチャーがもっと化け物でないとおかしいし。

 あまり考えたくないが、ブーイングを受ける役、泥をかぶる役として控えを出してきたとか?なんか気の弱そうな雰囲気の選手だったし。もしもそうだとしたら、相手チームの監督は冷酷無情だな。それが名将の資格だとしたら、ウチの温厚数学教師には一生無理だ。


 だが。そんな俺達の感想が的外れもいいところだった。

 鈴木選手が投げた第2投によって、それが証明されたのだ。


『………ぼ、ボール…。ツー』

 数瞬の間を置いて、球審のコール。


 ボールがストライクゾーンを通過したのか、考えて迷って判断して、ボールと判断するのに時間がかかって、そう宣言した。

 大きく山なり(・・・・・・)に投げられるボールを、判定するのが初めてだったのかもしれない。数メートルは高く投げ上げられて、鋭角にホームベースへ落ちてくる球を。


 おおおおおおおお――――


 観客がどよめいた。

 珍しいボールを見たからか。日本のプロ球界でも投げる人間は僅か、メジャーでも数えるほどしか使い手のいない、山なりの超スローボール。確かに珍しいだろう。


「「「ゲェ―――ッ!!!」」」

「「「消える魔球だぁ―――っ!!!」」」

「「「あんなもん本当に投げる奴いやがった!!!」」」

 弘前高校ベンチでも大騒ぎになっていた。


 県大会決勝前に、山崎が冗談で見せた再現型魔球、超高高度スローカーブの、現実的なボール。高角度スローボールを、実際の試合で見たのだから、それは当然だろう。

 が。問題はそこではない。それ以外の問題が発生している。俺達、弘前ナインはその事に気づき、本当の驚きの声を上げた。


「「「…山崎が………見送った(・・・・)!!!」」」


 そうだ。

 あの、目の前にあれば何でも食うブラックバスだとか言われたこともある、悪球打ちに定評のある山崎が、バットの届く位置を通過したボールを、手を出さずに見送った。

 鈴木投手の投げたボールが珍しかった?いやそっちよりも、山崎がホームベースの上に来るボールを打たなかった、そっちの方が大問題だ。あいつだったらフォークの投げ損ないでワンバウンドしたボールだって打つ。あいつはそういう奴だ。しかし打たなかった。


「打てない…のか?」「おいおいマジかよ」「え?本当に魔球?」

 ざわざわざわ。弘前ベンチがざわめき立つ。

 そして鈴木投手が、第3投を投げた――今度も高高度スローボール!!


 キィン!


「「「あ、打てるんだ」」」

 山崎の打球はセカンドを越えて、センター前へ。センターが素早く捕球し、カバーに入ったセカンドへ返球。山崎は1塁でストップ。


 山崎、シングルヒット。

 ……え?シングルヒット?


 今大会、いや、県大会、いいや、練習試合を含め。シングルヒットなど初めてだ。山崎はラクーンズ戦の時に素で打った時に2塁打を打ったが、ランナーが前にいた場合でも、シングルヒットなど高校入学以降で打った事などない。


「…あれ?普通…の…打撃?」「ホームラン…じゃないな」

「…ホームラン打たないのって、県大会の序盤以来かな…」

 弘前ナインもこの『異常事態』に、違和感を感じたようだ。ここは全国大会の舞台だ。県大会の序盤のように、警戒されないために手を抜くなどという失礼な作戦を取る必要などない。というか相手は名門強豪と名監督だ。手を抜いていい事など何もない。


 打たなかったのではない。何らかの理由で、打てなかったのだ。


 あの山崎が、ホームランを打てなかった。

 普通の選手だったらホームランを打てないなんて事で異常事態扱いなんぞされないが、山崎だったら話は別だ。あの投球、あのボール、何か問題がある。

 しまった。俺も最初から【覚醒状態】で見ておけばよかった。基本的に集中力を使って疲れるから、常時使わないようにしてるんだが…何か秘密のある投球だとすれば、こいつは大問題だ。


 俺は次のボールから、全球を覚醒で観察した。

 …しかし。弘前の2番打者(竹中)3番打者(小竹先輩)には、ごく普通の変化球攻勢。山崎は2塁に進塁するも、2アウトで4番打者の俺。

 さて。俺には投げてくるのか…


『ボール。フォア』

 球審のコール。テイクワンベース。俺は敬遠された。

 そして、5番の山田キャプテンの打順。


『ポジションチェンジ!ライトとピッチャーを交代!!』


 関東総合のエースピッチャー佐藤がマウンドに登り、山田キャプテンを内野ゴロで打ち取り、1回表の弘前の攻撃は終わった。

 守備に向かうため、ベンチへ走る俺と山崎。山崎に駆け寄った俺は早口で問いかける。


「山崎。あのスローボール、打てないのか?」

 何か秘密があるのなら、今のうちに聞いておきたい。


「覚醒と相性が悪い。遅すぎてキレそう。あと我慢の限界に達する」

「あ―――。そういう事」

 覚醒モードは、リアルタイムの映像をスロー再生するようなものだから。ボールの動きを観察してコースを予測する覚醒モードは、速度がそこそこ速いボールと相性がいい。

 遅すぎるボールは苦行のようなものか。山崎は基本的に短気だしな。性格的にも辛いか。


「ついでに、高角度スローボールなんて、今まで見た事がない。データが無い」

「…本格的に覚醒モードとは相性が悪いじゃねぇか」

 こりゃ俺が投げられても、コース予測は難しいな。

 そんな話をしている間に、ベンチに到着。ヘルメットを脱いでグラブを用意する。


「あとねー。あのスローボール。実質的にナックルだから」

「「「はぁ?!」」」

 山崎の一言に、それを聞いた弘前ナインが揃って振り返った。


「ほぼ無回転で落ちてくるから。縫い目がハッキリ見えるレベルで。遅いわ揺れるわ急角度だわ、おまけに時々甲子園の浜風がイタズラするし。あんな変態魔球、練習なしでまともに打てるかっつーの」

「「「………うわぁー」」」

 予想以上に大変な投手なんじゃないですかね、鈴木さん。


「まぁ、でも」

 山崎は、いつもの邪悪感漂う笑顔で、にやりと笑って、こう言った。


「これぞ全国。って感じで、いいわよねぇ。いやー、日本も広いわ」

 ひひひ。次は打ってやる、などと笑う山崎。

 俺はそんな暴れん坊に、ちょっと聞いてみる。


「いちおう、さっきもセンター前ヒットなんだけど。『まともに打つ』レベルって、お前の基準だとどうなるの?」

「打者の醍醐味は三振とホームランだって、誰かが言ってたなぁ。まぁそこまでは言わないけど、狙って2塁打くらいは打ちたいかなと。できりゃ3塁打以上かな」

 ああなるほど。ランナー返せるもんね。2塁打なら。


「じゃあ俺も2塁打が目標かー」

「アンタは最初からホームラン狙いなさいよ。4番でしょ」


 要求が厳しい。スローとはいえ未見の高角度ナックルを打ち抜けと申すか。山崎が練習必要だとか言ってるボールなら、俺だって練習しなきゃ無理だよなぁ、とぼやきつつ。弘前ナインは守備位置へと散っていったのだった。


何をもって無敵と称すか。その命題について討議が為されるかもしれない。

…などと大層な事を言うつもりは無いのですが。野球はチームプレイなので個人的に負け無しなのとチームが負け無しにできるってのは別のような気も。みたいな話をしてみたかったり。


ちょっと間が開きましたが、書きあがったので更新しておきます。まだ1週間経ってませんよね。心配されてませんよね。あと今回こそは誤字とか無いといいなぁ、と思いながら星に願いを。

次の更新は書きあがり次第。まだ未定です。


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