123 再試合の結果
ルールはルール。再試合の場合、再試合の結果を受け入れるのがルールです。
俺達の2回戦。2回目の甲子園球場でのナイターが照明不具合で続行不可能になって、もうだいぶお馴染みになった宿泊所へと帰る時も、それはそれで大変だった。
通路としては観客と関係者通路は別になっているが、建物としての出入り口は共用の部分があるし、そもそも設備管理だとか大会運営だとかのスタッフの人数には限りがある。そして夜間試合で非常電源以外が使えなくなった場合の訓練を充分に受けている人なんて、そんなに多くなかったのだろう。
とりあえず観客にチケット払い戻し等の説明をしつつ出入り口まで安全に誘導する人員だとかが優先され、選手や応援団なんかの『試合関係者枠』は対応が後回しにされたのだ。そんな混乱の中、ここぞとばかりにインタビューをしようとするスポーツ新聞関係の記者なんかが小規模ながら余計な混乱を引き起こしたりとか、めったにないトラブルで事後処理はグダグダになっていたのだった。
地域の信号までが復旧に時間を要したため、自然渋滞と事故渋滞の中を縫って宿泊所に帰った俺達は、今までの大会進行上でいちばん遅い時間に夕食を取る事となった。今回も1回戦の後と同じく、宴会場を一つ借りての食事である。
『揚げ物の追加きました―― !! 』
『ごはん足りないとこ言って下さ―― い!! 』
仲居さんとマネージャー達が食事の面倒を見てくれている間、俺達選手は消費したカロリーを補給すべく、必死に食事を口に運んでいる。色々な手間を省くため、風呂に入り終わった人間から適当に食事を始める事にしていたが、さすがに試合に出ていない一年生が先に食事をする訳にもいかなかったため、ある程度まとまってから食事を始めたのだ。おかげで結局は場所も含めて、1回戦の後の食事と同じような雑然とした光景になってしまっている。
「よぉ―― し、みんな、そのままで聞いてくれ!! 大会本部からの通達だ!! 」
平塚先生が前に出て、大きな声で話し始めた。
「弘前高校の試合は照明の不具合で続行不可能、7イニングが終了していなかったため、ルール通りに『 再試合 』となった!! 翌朝8時より試合開始の予定!! 食事が終わったら食休みの後、すぐに寝るように。いちおう宿泊所の方が起床を手伝ってくれるそうだが、各自、自分達で起きられるようにしておくように!! 」
あちこちから『はぁーい』と、適当な返事が帰ってくる。ちゃんと聞いていますよ、というポーズだけだ。おそらくほとんどの部員が口に何かを入れたまま聞いていたのだろう。口の方は食事が優先である。
「試合中止、やり直しかー」「中断と再開じゃないんだな」
「勝ってたんだけどなぁ」「いつもの調子だったのに」
「このルールどうなんだかなぁ」「なー」
そんな声がチラホラと聞こえてくる。
「ルールに文句を言わないのが大会参加者の心得よ。ボヤくのは外野の連中に任せておきなさい。試合成立が7イニングだとかの大会ルールなんて参加希望を出す前から決まってるんだし、承知で参加してる選手側が後出しで文句を言わない!! 」
などと。山崎が食べ物を飲み込む間に言ってから、またガツガツと食事を再開する。その言葉に『すいません』と、主に1年生からの返事が返ってくる。
「悪いけど試合に出てない子、早めに食事を終わって道具の手入れを手伝って。今日は緊急事態だから」
「「はい!! 」」「急いで食べます!! 」
三年生でマネージャー業務のリーダーである今井マネが、1年生に声をかけて後の仕事を仲居さんにお願いしつつ、自分も席に戻って食事を大急ぎで始める。今日は疲労がある選手を優先で休ませて、いつもだったら自分達でやっている道具の手入れを分業で終わらせる事になった。夜遅くに戻ってきて明日は第一試合で試合を行うという、なかなかに忙しいスケジュールだからだ。
「すいませーん、テレビつけてもいいですかー? 」
「あー、いいぞ。でもテレビを見るのはここでだけ。明日は早いからな」
平塚先生が許可を出して、カラオケモニターみたいな宴会場のテレビが映る。スポーツニュースだったら俺も見たいな。今日の試合の事を何て言ってるんだろうか。
※※※※※※※※※※※※
『 ―― 甲子園の試合としては前代未聞の、【 暗黒 】による試合中止となった、本日の第4試合でした。それではもう一度、テレビ放映での映像をご覧ください』
プレイ!! と、球審がゼスチャーし、小嶋 商業の応援団が応援を開始。
山崎がサインを確認して、ワインドアップから全力投球。
ピカっ。と夜空の部分が明るくなり。次の瞬間。
ずどぉ――ん!! という音とともに、画面が真っ暗になった。
『 ―― えー、放送関係の電源は緊急時に切り替わるような設備を携行しているため、放送事故にはならなかったのですが ―― 』
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「「あ、放送事故じゃないんだ」」「テレビ局側の過失じゃないもんな」
「ふーん。メンテの不具合なんだ」「球場側の過失って事か」
今回の『事件』に関する解説を色々としてくれるスポーツ番組を見ながら、色々と感想を口にする俺達。そして手と口を動かして食事を続ける。うん、冷たい麦茶が欲しい。
「プロだったら相手球団への補償とか面倒くさいんでしょうけど、高野連にはタダ同然で貸してくれてるみたいだし、観客へのチケット払い出しくらいの問題でしょうね。一部のマニアからしてみれば、めずらしいイベントに遭遇できてラッキー!! みたいな感じかもね。現場としては事後処理は大変だったんでしょーけど。あ、悟。あたしにも麦茶」
「おー」
きっと、こういう事件が起きて、その後のトラブル対応とかが進化していくんだろうな。俺達の試合中止はムダではなかったという事だ。
「ちなみに『日没や夜間照明の不具合でボールが視認できなくなった場合』の試合中止の理由って、【 暗黒 】って言うのよ。知ってた? 大会規約に書いてあるのよ」
「それ、死語レベルに使われなくなったっていうか、適用されない感じの、大昔に作られたルールだよな…… まさか大会運営も、こんな事になるとは思ってなかっただろうなぁ」
お釈迦様でも思うめぇ、とか山崎が言っている。以前にも聞いた事があるような無いような。気に入ってるフレーズなんだろうか。
「しっかし、イヤなタイミングよねぇ。まるであたしの仕業みたいじゃない」
「ホンマそれ」「まさにそれ」「ぜったいにネタにされてる」
「暗黒の嵐を呼ぶ女」「暗黒投手」「暗黒女王」
あんた達いい加減にしなさいよ―― !!
とか山崎が言い返し、わはは、と笑い声の上がる俺達だった。
「まあ、めったに使われないルール用語だし、スポーツ新聞の記事にはでっかく【 暗黒!! 】とかいう見出しが印刷されるんでしょうけど」
「好きそうな単語だもんなぁ」
明日の朝のスポーツ新聞に間に合うよう、新聞社の方々は今ごろメチャクチャ仕事してそうな気がする。遅い時間の事件だけど俺達の試合結果を待ってた記者チームなんかも居ただろうし、派手な見出しを作った新聞が売れそうな気がするなー。
「ま、あたし達は食べて食休みして、すぐに寝ましょ。明日は朝からだもんね。マッサージチェアで適当に揺られたら、もう今日は寝る」
「俺もそうしよう」
余裕があれば明日の朝のスポーツ新聞とか買っておきたいな、とか考えながら食事を済ませ、山崎の隣のマッサージチェアに収まって自動マッサージを受ける。半分寝ながら『う゛あ゛ぁぁぁぁぁ 』とか変な声を出しながらマッサージチェアに揺られる山崎を横目で見ながら食休みを取った俺は、すこやかな気持ちで自室の布団に横たわり、眠りにつくのだった――
※※※※※※※※※※※※
翌朝、食事をしながら朝のテレビ番組を見ている俺達。時事ネタのトレンドである昨日の暗黒中止試合を含めた、天候不順で大会進行がメチャクチャになっている夏の甲子園のネタをメインでやっている。
『 ―― もう今回の大会で天候不順の中止による再試合は2回目ですし、雨天コールドも3回起きています。これは大会規約を見直すべきなんじゃないですかね? 』
『温暖化の影響と言いますか、現在の環境に合ったルールとは言えなくなってきましたよねぇ。せっかくの全国大会なんですから、雨天コールドはやり切れませんよねぇ』
『今日の再試合みたいに、大会進行の都合とはいえ、夜遅くに試合が中止になって翌朝から再試合じゃ、選手への体力的な負担もありますよ』
『まあ、いちおう両校ともに条件は同じという事ですが…… メインの選手の内訳からすると、そうも言ってられませんからねぇ』
『なんでこんなルールなんですかね。おかしいですよね? 』
『再試合なんておかしいですよ!! 』『そうですよ!! 』
とか何とか言っている。
だいたい予想通りというか、ありがちな事を言っている雰囲気で語っているな。
あと賑やかしの芸人やアイドル枠のコメンテーターが適当な事を言ってる気がする。
「 ―― 大会進行の時間の問題から言えば、中断と再開がいちばん時間がかからないから大会運営側としては楽なんでしょうよ。でもねー、今日みたいな状況でなきゃ、再試合っていうのは選手側を気づかったルールとも言えなくもないんだけど。メリットとデメリットの両方を語れないのかしら、この連中。ほとんど思考誘導じゃないの? そういう事は大会が終わってから言えってのよ、まったく。ルールをよく知りもしないくせに、えらそうに」
「しっ。そういう事を言わないの」
山崎が漏らす毒のあるコメントをたしなめる俺。マスコミ批判はやめましょう。後がコワイから。そういうのは大人の仕事です。選手の仕事じゃありません。
「いっそ『サッカーみたいに雨の中でも試合やれよ』って言えばいいのにね。ま、それを言ったら言ったで文句を言う連中がいるんだけど。『雨がドバドバ降ってる中でやるなんて野球じゃない』とかいう老害とか。昔人間なのに屋外球技でナメた事を言ってるっていうか」
「その辺にしといてくれ」
毒はほどほどに。面倒くさい人達に聞かれたらどうするの。
「ま、それはそれとして。『選手がかわいそう』とか言う連中とか―― 」
まだ止まらないのかな。今日の山崎の毒。
「 ―― 今日の再試合の結果次第で、また別の意見が出たりしてね? 」
「 ……ホントにやるの? 」
「できれば、ね。どうせまだ2回戦だし、余裕はあるわよ。それに、あたしだって去年よりは成長してるのよ? 持久力とか、筋力とか。ふふん」
「 ……ううむ」
ふふん、と得意げに胸を反らす山崎の身体を、チラリと見る。確かに少し、微妙に一回り大きくなっている事は間違いない。身長は同じだと思うが、筋肉的なボリュームとかそいういうモノは増えている気がするのだ。確かに俺達はまだ高校2年生。身体能力的な伸びしろはまだ残っている。山崎だってそうだろう。
「さあ、試合で全てを語ってやるわよ―― !! 高校球児らしく!! 」
「「「おお―――― !!」」」
そんな感じで今日も山崎がチームメイトに気合いを入れる。昨日の試合中止から数えても、まだ半日程度。疲労は多少残っているが、条件は相手も同じくらいのはず。それが試合にどの程度の影響を与えるかは分からないが、昨日の試合は昨日の試合、今日の試合は今日の試合だ。
さーて頑張るぞと。でも天気は何とかなってください、と祈りつつ。俺達はまた、甲子園球場へと向かうのだった。
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【 国営放送 実況席 】
『はい、先日の天候不順と、それに起因する不具合で中止となった試合の再試合が、いよいよ始まります。解説は先日の試合と同じく、社会人野球で樋田自動車の監督を務めていた、広瀬 寛治さんでお送りします』
『よろしくお願いします』
『しかし…… 昨日の試合は、本当に珍しいというか、大変でしたねぇ』
『いつ中断になるかとヒヤヒヤしてましたが…… まさか、あんな理由でノーゲームになるとは。まあ、大会進行が夜間にまで伸びてしまったせい、と言えなくもないんですが。今日は朝一番からの試合ですし、その点だけは心配ありませんね』
『降水確率は相変わらずですが…… 雨の降り方次第では、試合を強行するかも知れませんね。同じ組み合わせで、二試合連続の中止は大会的にも困るでしょう。』
『よほど環境が悪くならない限り、中断はあっても中止は無いでしょうね。7回終了までは試合を行うと思います』
『さあ、両校のオーダーですが…… 』
『中断ではなく再試合、そしてメンバー表の交換は試合前、ですからね。選手の疲労の程度も考えて、変更はあると思っていましたが…… 』
『弘前高校、山崎選手を先発投手にしてきましたね。打順も9番です』
『昨日の試合の疲労の影響ですか。内野守備などに不安が生まれますが、3年生2年生の選手が少ない弘前高校では、仕方の無い選択なのかも知れません。今日は打点力ではなく防御力重視の布陣という事でしょう』
『どのような展開になるか、楽しみですね。さあ、昨日と同じく先攻は小嶋 商業から。マウンドの山崎選手、投球練習を終えました。試合が開始されます』
『セットポジションです。体力温存の投球でしょうね』
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【 途中経過 】3回終了時点
小嶋 0 0 0 |0
弘前 0 1 0 |1
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【 国営放送 実況席 】
『3回終了して点差は1です。先日の打撃戦とは打って変わって、今日は投手戦、といった感じですね』
『山崎選手を1番打者に据えた、相手の選択肢を減らす強引な打線が弘前高校の特徴ですが、今日は山崎選手が先発という事で9番打者に入っています。もちろんこれは投手の体力温存という意味では順当です。つまり、山崎選手に投手としてできるだけ長く投げてもらおう、という作戦方針ですね』
『北島選手をからめた打撃で1点を入れていますが、今のところ一挙大量得点という訳にはいかないようですね』
『うーん、悪くは無いんですけどねぇ…… むしろ山崎選手がからむ下位打線後半から、うまくやれるかも知れないんですが。小嶋 商業としても、そこは充分に警戒するでしょう』
『現在のところ、雨は落ち着いています。天候としてはこのまま進んで欲しいですね』
『まったくです。そして弘前高校は打線がつながらず得点が少ない印象ですが、小嶋 商業はまだ山崎選手の投球と守備によってランナーがまだ一人も出ていません。山崎選手の投球から、なんとかして長打をもぎ取りたいところでしょう。がんばり所ですね』
『試合はまだ序盤です。まだまだ分かりません』
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【 途中経過 】6回終了時点
小嶋 0 0 0 0 0 0 |0
弘前 0 1 0 1 0 1 |3
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【 国営放送 実況席 】
『この回が終了すれば試合が成立する、7回に入りました!! 雨はまだ落ち着いています。小嶋 商業はじわじわと点を奪われ、点差は3点。そして弘前高校、まだ山崎選手がマウンドに立っています!! 』
『いやぁ―― 、小嶋 商業としては、かなりマズいというか。そりゃあ山崎選手だって体力には限界もあるでしょうが…… 投球数が少なすぎますよ。なんたってまだ、18人相手にしか投げてませんからねぇ』
『はい。現在のところ、先発である山崎選手、まだ一人もランナーを出していません。現状においてノーヒットノーラン状態です』
『もう観客も期待してる頃でしょうねぇ』
『おっと!! 山崎選手、ワインドアップから振りかぶる!! 』
『打者が変わると構えを変えてくるんですよね。投手が3人いるようだ』
『空振り!! いよいよエンジン全開といったところですか?! 』
『ようやくエンジンかかってきた、とかだったらイヤですよねぇ、小嶋 商業としては』
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【 途中経過 】9回開始時点
小嶋 0 0 0 0 0 0 0 0 |0
弘前 0 1 0 1 0 1 0 0 |3
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【 国営放送 実況席 】
『 ―― 山崎選手が一球投げるたびに、外野スタンドと三塁側アルプスから歓声が上がります!! そして一塁側アルプス、小嶋 商業の応援団からは雲を割らんばかりの大声援!! このまま決まってしまうのか―― ?! 』
『もう全球全力投球じゃないですかね…… しかし、体力配分をしているとはいえ、9イニングを投げる体力があったとは。彼女もまだ2年生。フィジカルが成長したという事でしょうか』
『バッターアウト!! 外野スタンドの観客が沸きに沸きます!! 』
『もちろん小嶋 商業としては、せめて完全試合は免れたいところでしょうが…… バントしても内野安打は難しいでしょうしね…… 』
『さすがに三塁も前進守備でバントを警戒しています。いやぁ、ここまで来れば投手としても記録に対するプレッシャーで投球ミスとか、やらかしそうなモノですが…… ストライク!! 危なげなく入れてきます!! バッターは見送り!! 観客がさらに沸きます!! 』
『ボール球ぜんぜん投げてませんよ。あまり厳しいコースも投げていないと思います。ただ球威で押していますね。一発ヤマを張れば飛ばせるとは思うんですが…… タイミングを合わせるのも難しいんでしょうね』
『おおっと!! キャッチャー、ボールをはじいた!! 飛びついて止めます!! 幸運にも打者が走れるほどじゃなかった!! おっと、カウントはボールです。失礼しました』
『ありゃ。プレッシャーかかってるのはキャッチャーの方ですかね』
キャプテ――ン おちついて――
『山崎選手が声かけてますよ』
『投手の方がよっぽど落ち着いてますね。むしろ守備のチームメイトの方がプレッシャーを感じているかも知れません。前に転がせば分かりませんよ、これは』
『 ――ストライク!! バッターアウト!! あと一人です!! 三塁側と外野スタンドが沸きに沸きます!! 』
『お、キャッチャーがタイムかけました。良かった。まだ大丈夫ですね』
※※※※※※※※※※※※
「 ――あのさ、もう投げる球とコース決めておいていい? 」
「そんなに追い詰められてるの? 」
「まあ、分かる」「間違ってもこっち飛んでくんな、って思うし」
マウンドに集合した仲間達は、松野キャプテンの言葉に同情めいた言葉を返していた。キャプテンの顔は今までに見た事が無いくらいに真剣な表情だ。この状況下での捕手のプレッシャーは並ではなかろうな、と思う。その次に真剣な表情をしているのは山崎の代わりにショートの守備をしている川上先輩だ。誰も記録阻止の戦犯にはなりたくないだろう。
「誰かが俺の思考を盗聴しているような…… いや、誰かが望遠鏡で俺のサインを覗いているんじゃないかと、不安でしようがないんだよ…… 」
そんな事を言ってしまうほどに心が追い詰められている松野キャプテンだった。
「はいはい、わかりましたよー。じゃあ、いま決めておきましょうねー」
山崎がそんな事を言うが、心が弱った子供をあやしているようにも聞こえるなぁ。そして、だいじょうぶ、大丈夫。うまくいけばあと3球くらいだから。落ち着いて。と言い聞かせ、内野のみんなも落ち着いてねー、あとファーストは送球の可能性があるからね、と。普通だったら投手を落ち着かせるような状況で投手以外の仲間に声かけをするような感じで、仲間は守備位置へと戻って行った。
そして、この試合最後の一人になるかも知れない打者へと、第一投。
―― コキン
「えっ」
「あっ」
「おおっ」
振り回されたバットに当たったボールは、宙を舞い。
軽く手を上げた山崎のグラブに吸い込まれ。ぱしんと音を立てて捕球された。
『 ―― キャッチ!! 試合終了!! 選手、集合!! 』
そんな球審の声と。つづく大歓声とによって、俺達の2回戦は終了した。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
【 試合結果 】 小嶋 0―3 弘前
小嶋 0 0 0 0 0 0 0 0 0 |0
弘前 0 1 0 1 0 1 0 0 X |3
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
弘前高校、3回戦へと進出決定。
山崎 桜、完全試合を達成。
なお、一部で『昨日の試合のまま終わった方が試合結果としてマシだった』などという心ない言葉がとある芸能人のSNSアカウントで呟かれ、『そういう言い方は無いんじゃないか』『お前に人の心は無いのか』と、大いに叩かれ炎上したという。
なお、この試合の一件が決め手になったかどうかは分からないが、来期の夏大会からは天候不順による試合中止、再試合という規約を本格的に見直した方がいいのではないか、という動きが生まれたということだった。
ええ、まあ。
そりゃどっかで完全試合とか差し込んでやろうとは思ってましたのん。やるんならここだな、とか思っててそのつもりでいたら、感想欄で完全に見透かされ(まあそういう芸風ですからねぇ…… )急いで投稿する事になりました。早く続きを投稿しろとつつかれた?! 完全に罠にハマったのか?!
そんなワケで。今後もゆっくりのんびり、お気楽な芸風で進めて行こうと思っております。何かまた誤字脱字や単語の誤用などを発見されましたら、誤字修正機能の活用とか指摘とかして下さると助かります。次回もこんな感じで、お気楽甲子園で早めに投稿したいと思っております。どうぞ今後とも気長にお付き合いくださると幸いです。