春を迎える前に【冬の詩企画】
冬が始まると
雪が降り、草花が土に眠り
動物たちは、皆で塒に篭る
そのとき、人間たちは……
畳を玄関先に出したり
天井から煤を払ったり
障子紙を張り替えたり
廊下に雑巾をかけたり
箪笥の埃を落としたり
晴れ着を検めたり
かど松を立てたり
しめ縄を結ったり
塩や榊を飾ったり
お鏡餅を据えたり
伊達巻や鯛を焼いたり
黒豆や栗を煮込んだり
蒲鉾や蓮根を切ったり
お餅を搗いて丸めたり
蕎麦の出前を頼んだり
師も走る年の瀬は
誰もが気もそぞろ
なぜか
落ち着かないもの
あの人にお年賀を出したろうか
あの子にお年玉はいるだろうか
今年のうちにやり残りは無いか
新年にすべきことは何だったか
毎年いつも気になることばかり
除夜の鐘は百八回
消えない煩悩たち
どうか
福が来ますように
冬が終わると
雪が融け、草花が芽を吹き
動物たちは皆、目を覚ます
春は、もうすぐそこに……
本作は「冬の詩企画」参加作品です。
企画の概要については下記URLをご覧ください。
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1423845/blogkey/2157614/(志茂塚ゆり活動報告)
なお、本作は下記サイトに転載します。
http://huyunosi.seesaa.net/(冬の詩企画@小説家になろう:seesaablog)