23話「復路」
こちらから迎えにいこうと思っていたのだったが、ミドは待ちきれないといった様子で宿の前で待ち伏せをしていたのだ
一体いつからこうしていたのだろう、お供の護衛も随分眠そうにしていた
「あ、あぁ待たせたな」
俺が答えると護衛は『後は頼みました』とこれまたようやく解放されたと言わんばかりの足取りで城へと歩みを進めるのだった
「おじさん達、ちょっと欲しい武器があるんだけど寄ってもいいかしら?」
弓がメインなのだけどせっかくの冒険なんだから色々使ってみたいじゃないってことで
気になってる剣を一振り買いたいのだそうだ
「あそこよ、あのお店!先先代から受け継がれた名刀っていうのが置いてあるのよ」とミド
店というか鍛冶屋、昨日も来たな
「そんな名剣をウチらなんかに売ってくれはるんか?」
「いや、普通はないと思うんだが…国王の孫娘だし、あるんじゃないか?」
店の前に着くとミドは、昨日のレギのように中を見ていた
「ふふん、ふんふん、あっれぇ?場所変えたのかなー」
名刀を探すミド
「親父さーん、表にあった剣どこやったのー?」中に入って暇そうにしている男に声をかけていた
奥では忙しそうに剣を作る職人達、昨日もこんな感じだったなぁ…店番かな?
と思ったのだがこの男、鍛冶屋の店番などでなく立派な店主なのだった
「おぉ、ミドちゃんかよく来たな
あの剣なら若いあんちゃんが買っていったわ、すまないな
しかし金貨8枚もの大金をポンと出すとは、きっとどこかのボンボンのお坊ちゃんってとこだろうさ
誰も鞘から抜けねぇから鉄にもできねぇし、ちょうど良かったぜ」
ガッハッハと笑う店主
欲しかったのに、せっかくお金持って来たのにとふてくされるミド
『あ…』と思う3人、ピルスルはミドに『身の丈に合った武器を使うべきだ』と諭している
うーん…後で見せるかな
「お気をつけて!」門番が揃って頭を下げている
そんな中、俺たちは出発するのだった
「南に約1日、この大陸もう一つの冒険者が多くいる街がある
その周辺でも同じように魔物の減少が起きている」
なんてピルスルが喋り出した途端に目の前に結構な数の魔物が見えるのだった
「魔物いないんじゃないの」俺が聞くと
「昨日の影響で一時的に増えたのかもな…」とピルスル
せっかくだ、ミドの実力も見ておこうってことになり
待ってましたとばかりのミドは、フードの中からゴソゴソと小さめの弓を取り出した
弓、と言うよりは機械仕掛けのカラクリと言う感じのするもので
俺の使っている武器と似たような雰囲気も感じるのだった
「じゃあ見ててねー」と言い右手で腰周りから矢を取り出そうとする
ん、どうした射たないのか?
「忘れてた!重いから護衛に持たせてたんだったわ…」
こいつ本当に大丈夫か?矢なら俺が…
でも俺の持ってる矢が使えるかどうかもわからんな、まぁ一応渡してみるか
「こいつ使えるか?」と言い一本の矢を渡した
「んー大丈夫、もうちょっと強い矢の方が嬉しいんだけど」
まぁただの矢だしな
じゃあ今度はこっちの矢でも渡してやろうかな…と様々な矢を右手に用意しておいたら
『また怒られちゃうんでやめましょうよ』と後ろからレギに止められてしまった
ミドの射った矢は、瞬間3本の矢に分かれ…いや3本に増えて
それぞれの矢が別の魔物に突き刺さり消滅させるのだった
「え?今の何したん…?」
見ていた皆が驚いている
「すごい?どうやったかは内緒だけど、褒めてもらえた思っとくわー」
ミドが嬉しそうに振り向く
「なるほどな、幻影魔法の一種を攻撃に乗せるのか」
わかったかのようにピルスルが答える
「なーんだわかっちゃうんだ…別々の攻撃で矢を風に乗っけたり火を纏わせたりはできるけど
属性や効果の付与じゃなく、魔法効果の対象にできるのは私以外知らないわよ」
通常のエンチャントでは矢に魔法が纏った状態だが
これができるから矢自体に別空間をもたせたり、実態を無くしたり、矢ではなく強大な魔物の姿を見せることも可能なのだとか
すごいな、実質威力3倍じゃないか
「まぁその分威力落ちたりもするけど」
…前言撤回
「ねぇー全部倒したよドロップ回収行こうよ」
たった3本の矢で十匹近い魔物を瞬殺した、相当な実力があることは明らかだった
「あぁそういえば言ってなかったな、ドロップアイテムなら俺の空間収納に勝手に入ってくるから」
「それが噂のインベントリってやつなの?すっごーい」ミドが感心していた
昨日のスケルトン数万のドロップアイテムが一個も残っていなかったから不思議だったそうだ
「そうだ、ミドに矢を少し渡しておかなくちゃな」
俺は普通の矢1束と氷の矢1束を渡しておいたのだが…
そこで異変に気付いたのだった
ん?また証が見当たらないな…
今までこんなことは無かったんだけど
この街周辺ではそもそも手に入らないのか…ダンジョンの異変と関係があるのだろうか
とりあえずは周りを不安にする必要もない、リキングバイトに戻ってから聞いてみることにするか…
道中ミドがお風呂お風呂と騒いでいたのだけど、どうやら匂いも気にしているところを見ると、ローズは魔法をミドには使ってあげていない様だった
「可哀想だから使ってやれよ…」と言ったらローズは
「お嬢様には世間の厳しさっちゅうもんを教えてあげなな」と言って
綺麗にしてあげたのはそれから2日後のことだった




