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隠しスキルを手に入れた俺のうぬ惚れ人生  作者: うらたま
第1章《始まり》
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5話「換金」

ウルフ狩りに来ていた冒険者はドルヴィン・ダリンズと名乗り

俺の失態に見かねてか、街まで送ってくれることになった


「申し訳ない、俺は高橋修司…いや、シュウと呼んでくれ」

生前の名前を出すのは違和感があったので、昔ゲームで使っていた名前を出すことにした


「よろしくなシュウ、で…なんであんな格好で森に入ったんだ?」


『盗賊に身ぐるみ剥がされたのか?』などと冗談交じりに心配され俺に対する警戒心などは無いようだった。


神様のせいだ、なんて言えないし

長時間森にいたのは自分のせいでもあるので自業自得だし、恥ずかしくて何も言えやしない


「気づいたらあの森にいたんだ、ははっ…」

苦しい言い訳だったが、ドルヴィンはあえて何も聞かずにいてくれた


「すまんドルヴィン、町まで連れて行ってくれると言うことなのだが

俺は今手持ちが全くないんだ、スライムの核がいくつかあるんだけど金になったりするか?」


そう言って俺は、インベントリからいくつかのスライムの核を取り出した


「お前、幻術士かなにかか?!」突然ドルヴィンが大声を出したものだから

手に取ったスライムの核はポロポロと手のひらからこぼれて行き、崖下へと消えていった


「あぁすまん、いやそれは魔物討伐の《証》だからな

ギルドなら銅貨1枚で引き取ってるぞ、それよりお前今どこから取り出した?」


失念していた、ここはゲームの中の世界ではない

神様から特別にもらったインベントリを普通に使えば、こういう反応がくるのは当たり前だったのだが


「実は俺他の魔法はからっきしなんだけど、少しなら異空間に物を収納できるんだよ」

そう言ってなるべく小さな小石を持った


「えいっ」


何か掛け声があった方が良いだろうと思い、一声かけてから小石をインベントリに収納し

どうですか?と言わんばかりの表情でドルヴィンの方を見る


面白いやつだと言われた

よくよく考えれば、始めて来た世界に一文無しで放り込まれ

食事や宿のことも考えずに黙々とスライムを狩っていたのだから、『馬鹿』と言われたって仕方ないくらいだ


そうして助けてくれたドルヴィンと共に小さな街までやってきた


日本にいた時の格好な上にスライムの粘液が乾いてところどころテカテカしている格好なものだから、当然門番には怪しまれ

記憶を失って森に倒れていたとドルヴィンの説明とともに俺の腹の虫が叫んだものだから

門番も見かねて意外とあっさり通してくれた


「よし、せっかくだ、ギルドに行く前にうちに来い

着替えくらいは用意してやろう、なぁに…ミスリルの鎧にして返してくれればそれでいいぞ!」

ドルヴィン流のジョークのようだが、俺はドルヴィンがいなければおそらくのたれ死んでいたのだからそのくらいはしてやりたいものである


「すまないなドルヴィン、時間はかかるだろうが最高級の鎧を用意しておくぜ」

「ま、まぁアレだ、今日のところは討伐報酬で酒の一杯でも奢ってくれりゃ勘弁してやろう」


ドルヴィンの顔がどこか緩くなったように見えた

麻でできたような簡単な上下に、着古して使っていないという皮の防具までくれたドルヴィンと共にギルドまで向かった


ギルドでは手前に大きな広間があり、一方では誰かを待っている戦士、呑んだくれているおっさん、はたまた言い寄られている神官のような人まで

かたや行商人が珍しい武器なるのもを広げて見せたり、周りに声をかけ依頼したいと願っている若い女まで


それぞれの事情があるような雰囲気の中、俺たちは受付の方へと向かう


「あらドルヴィンさん、早いお戻りでは?」

受付にいる獣のコスプレをした女性、あ、いや

本物のケモミミの女性に声をかけられたのだった


「いやさ聞いてくれよヴァイツ、この男なんと森の中で装備も着けずにウルフと戦っていやがってな

あまりに死にそうだって泣き喚いてるもんだから連れ帰っちまったのよ、悪いけど牙の納品はまた明日にするわ」

へぇー、ヴァイツ…なんかビールみたいな名前だな


「そうなんですか、大変でしたねー、まぁ期限はまだありますからよろしくお願いしまーす」


普通に考えればドルヴィンだって目的があって森に来ていたのだから、予定が狂ったのは当然の事だったのに

僕は助かったことがあまりに嬉しくて、そこまでしてくれていたドルヴィンに本当に申し訳ない気持ちになっていたのだった


「そうだ、えーっと…シュウ!討伐したスライムの報告をしてしまえよ」


こちらへ話を振ってくれたので、ようやく僕はギルドの受付…ビールさん(?)と向かい合う


「えーっと?初めましてですかシュウさんと仰いましたね、よろしくお願いします」

名乗ってくれなかった、名前なんだっけ…


「はい、よろしくお願いします。初めてなんですが大丈夫でしょうか?」

無難に聞いてみることにする


「初々しいなお前ら、とっととヤっちまえよ」

何をだよ!突っ込みたくなる、それより名前気になってんだよ!


「あ、じゃあ早速しますね」


『手を…』と言われ素直に右手をその女性のすぐ側まで近づける


『プスッ』と…針を指先に刺された

「いってぇぇぇ、なに?なんなのこれ?」


ありえないとわかっていたものの、淡い期待も一瞬で消し去られたその行為に戸惑いを隠せずにいた


受付の下から一枚のカードと、水晶玉の様なものを取り出し何か魔法を唱えている様だった

しばらくして、受付の女性は俺に声をかけてきた


「では、シュウ様…貴方のお望みのご職業をこの魔水晶に向け発していただけますか…」


突然のフリ、何も考えていなかった

そもそもどんな職が有るのかも分かっていないのに答えようもないではないか

だけれど、そんな俺の気持ちも無視して一滴の血を垂らされた魔水晶からは光が大いに輝きその場にいる冒険者たちを黙らせるには十分な威光を放つ


何か言わなければ…そうだ、アレにしよう


よくゲームで振り分けていたステータスは素早さ、カッコイイーなんて思いながら

華麗にかわしながら攻撃する姿に憧れを抱いていた…


「じゃ…じゃあ、シーフで…」


「ギルドでは盗賊は認められておりません…別の職業はないでしょうか…」


そういやそうだ、表立って悪どいことをするなんて可笑しいことだ…

他に…と考えていると、受付の女性は


「俊敏性や身のこなし…をお望みのご様子ですね、少し違うかもしれませんが【レンジャー】なる職業はいかがでしょうか?多種多様な才能に長け、安全に冒険するための十分な知識を備えており優秀な職業と考えます…」


まったく申し分ない!じゃあ、という事で俺はレンジャーになる

するとパアッと光が広がり、何かの力が身体に入りこんでくる様だった


「あ、終わりました?シュウ様…どうでしたか?」


何を聞きたいのかよくわからなくて聞いたのだけれど、この【魔水晶】使っている間は使用者の意識は全く無いらしい

どういうわけか、その人に合った職に導き、相応のスキルを与えてくれるのだとか


なので後ほど聞いたのだけど、実はドルヴィン…魔法使いに憧れていたのだとか

そんなどう見ても剣士なのに…


「もう新しいスキルを授かっていると思いますのでどうぞご確認を」、と促される

ステータスを見ると確かに一つ増えていた


【ドロップアイテムが入手しやすくなる】


えらく具体的に書かれているじゃないか…

「ドロップアイテムが入手しやすくなるみたいです」


うわぁっ…って表情をされる…やめて、そんなハズレを引いたみたいな…

ちなみにやり直しは効かないだとか


『ま、まぁどんなスキルにだって良いところ悪いところはあるさ、俺なんて【MPが0になる代わりにHPが倍になる】だから憧れの魔法使いなんて一生無理なんだぜ…」

俺だったらそんなムキムキ魔法使い仲間にしないから適任じゃないかーとも思えているんだけど、そんなことは口には出さない


聞いたところ、アタリ枠とされているのが【AGI2倍】【罠完全回避】【運極大増加】などの冒険が安全になるものなのだと

確かにちょっとアイテム入手できるより全然アタリだった


まぁ悔やんでも仕方ないのだからとりあえず本来の目的の換金を行うことにしよう


「すいません、それで魔物の討伐の証っていうのはここで渡せばいいのですか?」

「ええ、どんな魔物も証を頂ければ換金いたします」即答だった


「これをお願いします」と大きな袋に入った96個のスライムの核を受付に渡した


「何日も森にいたのですか?」

そう聞かれるのだからやっぱり変なのだろうな


しばらくお待ちくださいと丁寧に言われ待っていると、銀貨1枚銅貨46枚を持って戻って来てくれた

銀貨は銅貨50枚相当か…そう思っていたのだけれど


「ギルド長からのお言葉がありまして、『面白いから色を付けて渡してやれ、1日で100匹ものスライムを退治するなど馬鹿のやる事だ』との事です」

悪びれず馬鹿だと言い切った…


銀貨は銅貨100枚相当だ


「あ、すいませんありがとうございます…」


なんっか釈然としねぇ…

あ、いや、何か釈然としない…


約束通り換金したお金で食事と酒を奢り、金欠時に…とオススメの勧めてもらった銅貨20枚の宿で一泊を過ごす

風呂付が良かったが最低でも銀貨1枚だというので今日は諦めることにした


あれ?結局受付の名前聞けなかった…

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