22話「それほどに汚らしい存在」
色々あってローズとも随分打ち解けた(と思いたい)
あの後、ワイバーンの事を説明するとまた『ウチら信用ないんやな』と悲しそうに言われるのだけど、後には『終わった事やし許したる』と言ってくれた、俺もローズ達とは仲良くやっていきたいと思っているのだから
「なんやぁ今日はえらい楽しいわ、レベルも1個上がったし、ほんまシュウのおかげやわ」
最後にはお礼だと言って口…あ、うん、口づけまでしてきたのだから俺もびっくりしてしまったのだ
実は俺もレベルが上がっている、あれだけのゴブリンとゴブリンロードを倒して、しかしそれでも1レベルしか上がらないのがこの世界なのだ
『ざっと100万以上…』
なんの数字かって?
この世界でレベル15になるための数字だよ
低レベルのうちはスライムぐらいしか相手にできないしコボルトだって草原のあちらこちらにいるもんだから数を相手にはしづらい
ゴブリンやウィスプ、ゴブリンロードに喧嘩を売った日には自分の命が消えるかもしれない
そりゃ何年かかってもレベル上げなんてできませんわ…
きっと頭打ちなんじゃなくて、『ただの経験値不足』なんだろうなぁ
ともあれ、俺はついにレベル15になった
今回覚えるスキルは【ハイレベルボーナス】
鑑定を使い説明文を読むと、聞いていた通りのスキルだった
非常に恩恵の少ないハズレスキルなのだ
[ハイレベルボーナス]:自身の実力以上の者との戦闘で得られる経験値・ドロップアイテムの強化
何度も言うように、この世界で強者を相手取ることは『死』を意味することだと教えられているのだ
このようなスキルを入手したとて、自ら死地に赴く馬鹿者などいないのだ
ゴブリンロードなら?と腕に覚えのあるパーティーが試した事もあるのだけれど
『まったく…実感がない、たぶんスキル発動してないっぽい…』だそうだ
感じないだけなのか、はたまたレベルが高かったからスキルが発動しなかったのかはわからないが
もし事実ならこれ以上の実力者とは…一体何を指すのだろうか、ワイバーンやドラゴンのことなのだろうか…
『何年後に会得できるかは知らんがあまり期待はしないようにな』とドルヴィンが言っていたのを思い出しフフッと笑う
あれから、まだ1ヶ月も経っていない
翌朝、ギルドで討伐に向かう事を伝えると
「そういえばシュウさん、レベル上がったとお聞きしたのですが?」とモルツ
「はい、昨日15レベルになりました」「え?」
あぁ、またこの感じ
キョトンとした後、モルツが続けた
「あ、すいません、実は依頼も随分こなしてくださってますし
レベルが10になり次第ギルドランクを上げておきましょうとお伝えしたかったのですが
【ランクE】に上がれば武器や雑貨などの購入できるものも増えますし、今お時間大丈夫ですか?」
モルツにギルドカードを渡すと、ちょっと悩んでから奥へと走っていった
2分ほどしてモルツが戻ってくる
「すいません、今から手続きいたします」
ん?何しに行っていたのだろうか?
『お待たせいたしました』とギルドカードを受け取ると、カードには【ランクD】の文字が刻まれていた
「あの…特例…というわけではないのですが、レベル15というのが、その…ランクDの条件でして
今ギルド長からも許可を得ましたので、上げさせていただきました、すいません…」
謝ることではないと思うのだけど、むしろごめん、ちゃんと報告してればよかったんだねきっと…
【ランクD】になるとダンジョンへの許可が降りるそうだ、それだけでなく街の北にある転移の門も解放され、実力に応じたダンジョンへの移動が可能となる
じゃあさっそく、と行きたいところなのだが
ダンジョンは基本パーティー攻略、あと、俺の武器がダンジョン攻略に合っていない
他の冒険者達も多いし被害がすごいことになりそうだ、と別のところへ向かうことにする
「どこか他の冒険者がいなさそうなところとかってわかります?」
俺はモルツに尋ねてみた
こないだ冒険者名簿で管理している事を知ったので、だったら周りの動向もある程度聞けるんじゃないかと思ったけれど
他の冒険者の事情までは教えてはくれないようだ
「今日はー…そうですね、おそらく北東にある砦周辺には冒険者がいないんじゃないかと思われます、絶対じゃないですけどね
それで、今日はどなたと向かわれます?」
「え、と一人で」
「でしたら危険ですのでおススメできません、東の草原でのコボルト狩りが良いと思います」
北東には向かったことがない、聞けば砦周辺には猪豚族、オークの出現するエリアなのだとか
ゴブリンよりも強く、下劣で獰猛で、人や動物を見ると襲いかかり、それが幼い少女であっても…その醜悪な姿はもはや見るに堪えないのだと、もっともっと細かく…具体的な描写で説明してくれたモルツの表情にはえらく憎しみのこもったような一面が感じられるのだった
とにかく、まぁ、雑貨屋で赤い矢を作るアイテムを購入して
昨日作ってくれた霊薬もあることだし
ちょっとは試してみたくなるよなーなんてうずうずして街を出るのだった
門番が『よぅDランク』と声をかけてくる、なんとまぁ早い伝達ぶりなのだ
顔を覚える役目でももってるに違いない、これで俺の呼び名は【変な服装】【スライムマニア】【爆弾魔】【少女に捨てられた子犬ちゃん】に続き5つ目だ
なにか恨みでもあるのだろうか…
北東へ向かった俺は何組かの冒険者と出くわしたのだけど、砦が見えてみた頃を境に一切の人影を見なくなってしまったのだった
「そろそろオークのテリトリーってことかな」
慎重に周りを見回しながら近づくと、一つの赤い光が漂っているのが見えた




