25話「面倒見の良いやつ」
「うちの先祖は王都で工房長をやっていてな
なんでも、勇者のくださった数々の未知のアイテムによって非常に発展したらしいのだ」
って事はこのおやじはキルディアの子孫ってことなのかもな…
「そのアイテムをくれた勇者が《シュウ》そして獣人の《ピノアール》、その時よりおよそ100年先に再び現れるだろうから絶対に忘れるんじゃないぞ、と言われてきたんだ
まぁ何故かそのすぐ後に工房は解体されてしまったのだけど、功績やらを認められて一族はとても豊かな暮らしを送れたみたいだ」
アーティファクトも結構扱っていたからな
アイオーンが動いたってことなのだろうな…
「まぁ俺は一族の中でもぐうたらな性格だったからな
政治やらなんやら細かいことは全部ほかの兄弟らに任せて
一人リキングバウトでこの剣を守っていたって訳よ」
残念すぎる…一気にダメ人間に見えてきた
「わざわざすまなかったな、俺たちも随分世話になってたっていうのに」
俺はオヤジに礼を言う
まぁ100年前に世話になっていたっていうのを今言ってもどう反応して良いのか困るだろうけれど
「そうだオヤジ、この街にドルヴィンって男いないか?ちょっと探してるんだが」
「あぁ、ドルヴィンの奴なら商業ギルドで時々見かけるぜ」
商業ギルド?いやそれが何かは知っているんだが、つまりドルヴィンは冒険者をやっていない?
なんと驚いたことに教会で子供の面倒を見ているのだとか
そりゃあ見に行きたくなるものである
どんな顔するだろうなドルヴィン…
教会では多くの子供たちも暮らしている
それは、この世界で魔物に殺されたりして親を失った者たちであったのだが
今の世界でその心配は滅多にない
じゃあなぜ多くの子供たちがいるのだろうかといえば
面倒見が良く美味しいお菓子が作れる人がいるから、と
自然に噂が広まり、託児所のようになっているけなのであった
とは言ってもボランティア活動をしているわけではない
子供たちにも仕事を与え、小さい頃からお金を稼ぐ大切さや礼儀作法を学ばせているのだ
いつしかそれが根付いてしまい、学校とまで呼ばれるようになっていたのだった
「お、いたいた」
「あー、確かにあんな方でしたわね」
ちょうど子供たちも各家庭へ帰ったところの様で、ドルヴィンは椅子の下などに忘れ物が無いかを確認していた
「ん…客か?どうし…たん
言葉につまるドルヴィン
まぁそんな再開になったわけなのだが、もう子供たちを放っておくわけにもいかないし
戦闘ではあまり役に立てそうも無いと言って、共に行動することは叶わなかった
教会にも1匹の精霊がいて、加護の受けたアイテムの販売も行なっている
以前と同じく帰還の鈴も扱っているし、ドルヴィンお手製のお菓子の販売もしているのだった
「シュウ…私この男性に嫉妬してしまいそうです」
そう漏らすのはピノ
「なんなんですか?!この美味しいお菓子!」
誰から見てもドルヴィンが作ったとは思えぬお菓子
そう言えば、この体型で魔法使いに憧れていたとも言っていたドルヴィンなのだから
本当は女なんじゃなかろうか…
「結局ドルヴィンはダメだったかー」
「またお菓子でも食べに来ましょうよ」
ミドもお菓子が滅法気に入ったようであった
その帰り道、ピノは冒険者ギルドに寄りたいと言いだして
何をするのだろうかと見ていたら、販売していたスキルの書をいくつか買い漁っていたのだった
[味覚強化]
[料理上達]
[レシピ記憶]