19話「なれそめ」
8話でピノの装備品に[細剣シェルタン]が抜けていました
すいません
「わかりました、あなたの仰ることは本当だと認めましょう
ですが私たちはもう別の私たちです、一緒に旅をする理由も無いのでその辺は理解をお願いします」
落ち着きを取り戻した椅子に座るミドはそう綴った
最初から一緒に旅をしようと言うつもりも無いのだが、そう言われてしまうと寂しいものである
なんて思っていたら
「ですが、リドラとはもっと仲良くしたいですわ
それに…あなたには随分世話になったようですし時々で良ければご一緒してあげてもよろしいですわよ」
「ミド様がそう仰るのでしたらウチも着いていきます」
ローズの言葉がどうも敬語と混ざって気持ち悪い
ミドもローズには普段通りの言葉使いでって怒ってるし、やっぱ素の喋り方じゃないんだろう
「ほな、まぁええわ…
シュウ、あんたらさっきやってた魔法どうやって覚えたん?」
いきなり話を変えてくるローズ
まぁ元々それで連れてこられたみたいなところもあったんだけど
ピノが横から口を出す
「精霊王に教えてもらった」
そのまんまである
「早くシュウの縄解いてあげてください
私の大事な人にいつまでもそんな格好させていたら怒りますよ?」
お湯をもらって綺麗になってきたピノが、まだ拘束されている俺を見て怒っていた
「ご、ごめんなピノちゃん
すぐに解くよって許してぇや」
ローズが俺の後ろに回りいそいそと縄を解き始めた
「で、ピノちゃん…精霊王様って」
ミドも意味はわかっていても信じられない様子で聞いていた
「あんな、シュウはシネレアって精霊のやってるダンジョンのマスターなんよ
そりゃあ過去と現代往き来して世界を救ったんやし?精霊王や聖龍と繋がりがあっても可笑しないやろ」
感情が昂ぶるとローズみたいに喋るピノ
若干違うニュアンスがまた聞いてて面白くもある
「せ、せやな!なんかどエライ冒険してはったもんな!」
「そ、そうですわね!」
鋭い眼光で睨まれたミドは、視線を逸らし
肘掛に置いた手も心なしか震えているようにも見えたのだった
お詫びに食事でもって事で
俺たちはミドの館でご馳走になることにする
せっかくなので海岸で狩った魔物の食材も渡しておいた
[地底魚の七つ道具®️]
ようするにアンコウみたいなものだ
寒い季節にはアンコウ鍋はたまらなく美味い
受け取った給仕は扱ったことがない魚だと言っていたのだが、取り出したアンコウは既に捌かれていたので鍋に放り込むだけだと言っておいた
どこで手に入れたのかを聞かれると返答に困る
『砂浜よ』とピノがあしらってくれるので俺は横で頷くだけであった
「なんやめっぽう美味いやんコレ、なんやの?このプルプル」
ローズが意外にも気に入って食べている
そのプルプルが美容にも良いんだと教えるとピノが張り合って黙々と食べ続けていた
「でさ、多分だけどピノってその時に一緒には居なかったよね?どこで知り合ったん?」
ローズの記憶には当然ピノはいない
今ピルスルやレギがいないことも気になっている様子である
「私はシュウに殺されかけたのが出会いかな、仕事でシュウのこと見張ってたんやけど裏道に誘い込まれて押し倒されたんや
そんで、剣をあてがわれて無理矢理衣服を剥ぎ取られましたね」
「ちょっと待て、フードを剥いだのはキルディアだろ…」
他にも全体的に言いたい事は多かったが…
「シュウって鬼畜やったんやな」
「ちょっと軽蔑しましたわ」
もうそのくらいなら好きに言ってくれ…
しかも、さらにピノは続けやがった
「二度目の出会いでも無理矢理羽交い締めにされちゃいまして
挙句、誰もいない場所に連れていかれて…
何日かして私はシュウに穢されてしまいました」
「待て待て待て、勝手に未来に来たのはお前の方だしあの夜は合意のもとだろうが!」
顔を赤くして聞いているローズとミド
悪戯っぽく笑うピノで、冗談だという事は分かってくれていたのだが
しばらくは俺が近付くとわざとらしく避けられてしまうのだった