16話「魔法の使い方と条件2」
海にプカプカ浮かぶ青い光
俺はどうにか引き寄せられないかと魔法を使う
《周囲にあるドロップアイテムをインベントリに収納するイメージ》
失敗
《周囲にあるドロップアイテムを俺の周りに引き寄せるイメージ》
失敗
《周囲にあるドロップアイテムを、いや半径10m以内にあるドロップアイテムを引き寄せるイメージ…》
またも失敗
「じゃああのアイテムを入手…」
【魚のヒレを入手しました】
ようやく成功する、もちろん魔力もかなり減ってしまう
条件付けというのは難しいものだ
きっと周囲の範囲を指定しないと効果は出ない
半径10mでも座標としては相当な量になってしまうのだろう
それに加えて空間移動
一個だけでもうまくいったのが奇跡とも言えるのだろうか
じゃあ平面ならどうだろうと思い
ここ周囲5m圏、水面上の物質の位置固定を3秒間
そんなことを試してみると意外にもうまくいく
まぁ、たった3秒でアイテムを拾えるわけもなく
結局大量の魔力を無駄にしただけだったが
魔法を使う者ってのはいつもこんな事を考えているのだろうか…
「そういう時は特殊言語を使うんだよ」
ピノはそう教えてくれた
一度自分の中で行使する魔法のイメージが固まったら、それを一つの言葉で保存しておくのだそうだ
例えば《対象の傷口の周りの細胞を活性化させ自己治癒力を強制的に強化する》
《体内の免疫による異物除去を速やかに終わらせる》
などのいくつかのイメージを全てひっくるめて回復魔法が行使される
当然、それも使い手によってイメージが若干異なり効果や消費魔力も全然違う
時と場合に応じて最小限の魔力で最大の効果を齎せられるのが良い魔法使いだというわけだ
「じゃあ全体化魔法なんて相当な腕じゃないと無理なんだな」
「そうだね、無差別でいいなら広範囲魔法がそうなっちゃうけど」
ピノも杖の補助効果のお陰で強力な回復魔法を唱えることができるが、杖無しでは大した効果は無いのだという
「最近良いなと思った魔法、なにかあるか?」
ピノも暇な時、結構練習をしているようなので聞いてみたのだけど
「え…ううん、特に無いよ」
おかしいな、最近やけに魔法を使っているようだったのだけれど
「!」
そうだ、物体をテレポートさせようとするから魔力が足りないのだ
残りわずかな魔力でできるかどうかもわからないが
思い立ったらやって見ずにはいられない
俺は遠くに見えた貝殻めがけて魔法を使う
《0.5秒、対象物との直線上の空間を動かし真空にするイメージ》
すると空間に吸い込まれた貝殻は勢いよく俺の手のひらにぶつかる
「いってぇぇぇ!!!」
その速さおよそ500m毎秒
痛いで済むレベルでは無い
下手したら大惨事である
心配したピノがすぐに治癒魔法をかけてくれて大事はなかったのだけど
これは改良が必要である
《0.5秒間、手に触れた瞬間に物体の運動エネルギーを0にする》
とりあえずこの二つをセットにして、【収納】と名付けておいた
全体化は難しそうだ…
《周囲20mの中にあるドロップアイテムを検知し、その対象物と俺の手のひらまで直線上》とした時に、周りのピノやリドラに被害が及んでしまうので無理であった
俺も背中から飛んでこられたら今度こそ大惨事になる…
そうやって一日遊んでいたわけだが、日が暮れると魔物達が入れ替わる
大きなクジラが砂浜に出現したのである
「浮いてるな…」
「えぇ…小さなお魚さんでも思いましたけど、なんでも有りですね…」
動きは非常にゆっくりだが、おそらく上位の魔物で間違い無いだろう
ほかに魔物の姿も見えなかったので、俺たちは戦ってみることにしたのだ
「危なかったらすぐに鈴を使えな」
「はい、シュウも気をつけて」
ピノは自身にバフをかける、体力を一発で持っていかれないために
同様に素早さをさらに上げ、先制で飛びかかって八連撃を浴びせる
「毒効いてます!」
ピノと交代し、俺が前に出て斬りつける
大抵の魔物はこのまま俺と対峙しているうちに毒でやられてしまうという戦法だ
しかしさすがクジラ、体力もそうとう多いのであろう
なかなか体力が減っていっている様子が感じられない
「ブォォォ…」
突如潮を吹き、全身を地面にぶつけるクジラ
衝撃で俺に一時全身麻痺の効果が出てしまう
ピノも範囲内にいたのだが状態異常にはならなかったようだ
俺はそのままクジラの尾の薙ぎ払いをくらったのだが
飛ばされた身体の上半身が海に浸かってしまい、しかもスタンが解けないので動くこともできない
「…ガポッ…う…」
塩っぱい、そして息苦しい…
やばいこれ溺死ってパターンもありうる
何も出来ず、ただただ時間が過ぎていく
ようやくスタンが切れたころ、俺は完全に意識を失っていた
…ん?どうなったんだ?
俺が目を覚ますと、ピノが俺に人工呼吸を行なっていた
別に魔法でも良かったんだけど咄嗟にそうしてしまったようである
クジラはというと、やはり猛毒には敵わなかった様で
しばらく逃げ回ってる内に勝手に倒れてくれたらしいのだ
死にそうになって仕留めた魔物は、俺が練習していたのを知ってか
非常に都合の良い武器を落としてくれたのだった
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[デルピネの王笏Ⓛ:魔法攻撃力120、INT+50、最大MP+200、かつて海を支配したと言われる王の持っていた笏、持つものに大いなる力を与えてくれる]
[鯨王:哺乳類最大と言われる鯨を模した魔物、海洋族の中でも海楼族と言われる特殊な種族の上位種、百年に一度現れると言われており出会ったものに大いなる力を授けるという]




