21話「アイオーンの意地」
ピノは小さい頃から密偵として育てられていた
戦前は冒険者用ではない特殊な魔水晶が存在しており、これを使うと最初に多くのスキルを得られる代わりに
レベル上昇による恩恵はあまり無いそうなのだ
だから姿を隠したり追跡したり俊敏性の強化などのスキルが多い
第二階層でもその効果は発揮し、どうしても戦闘の避けられない魔物以外はほとんど戦わずに済んでいる
「あとーシュウのこと追っかけた時に使った『目的地』
最初にマークしておかないと使えないけど、いつでも相手の所まで行けるよ
一度に一人だから私はシュウにしか使ってないけどね」
もしかしたら、いつまた過去に戻されるかわからないと言って
常に俺のことをマークしている
マークと言うのは『的』のスキルのことで、これで監視や追跡を使う準備になるため
実質ピノは殆どのスキルが使用できない状態なのだった
「戦闘に有用なのは『潜伏』と『AGI2倍』くらいか」
強い武器やスキルの書でもあると良いのだけど
全て使ってしまった
一応レアな防具やアクセサリーは身につけているから、そこらの冒険者よりは強いのだけれど
「じゃあ属性魔法特化とかどうだろう?」
以前渡した杖も大事そうに持っている
俺は指輪を外しピノの指にはめる
妖精女王の指輪だ
「ねぇ…わざと?」
ピノが顔を赤らめて問いかける
杖の持っていない手に指輪をはめたのだけど
小指にはもう渡した指輪があったので、俺は薬指にはめていたのだ
「あ、いや…あー……うん…」
実はわざとだ、まさかつっこまれると思わなくて返答に困ってしまった
「あ、あとこれも良いんじゃないかな!」
俺はしどろもどろになりながらも頭装備を一つ取り出す
[ グラントサークレット®️:武器に火水風土のいずれかの属性を付与することができる、弱点属性を狙う際には重宝される]
細い金属で作られ、小さな宝石のあしらわれたサークレットがピノの額にアクセントをもたらしとてもよく似合う
『似合うよ』と言ったら、一層赤くなった顔を俯かせていた
その直後に出会った魔物ビックベアーは、ピノのテレ隠しによる連続魔法によって
一歩も動かぬまま消し炭へと変化していたのだった
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ピノ レベル32 密偵
EX 的
EX 追跡
EX 監視
EX 目的地
EX 潜伏
EX AGI2倍
[妖精女王の祝福®️:属性を持つアイテム効果20%増]
[グランドサークレット®️:武器に四大属性のいずれかを付与]
[妖樹の杖+3®️:魔攻87、回復補助に特化]
[精霊の羽衣(上下装備)Ⓛ:魔攻105、魔防120、身が軽くなるといわれる]
[ドリアードの指輪®️:風土属性30%増、魔防30]
[セーフティーバンド:状態異常耐性(中)]
[ドラゴングリーブ®️:防御77、龍属性(中)]
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しばらくは俺が様子を見ながら、ピノに魔物を討伐してもらう
ダンジョンも上手いこと出来ていて、極端に強い魔物も出てこない
きっと40から50レベルならばそこそこ進めるような難易度なのだろう
第三階層、第四階層もピノだけでも十分に攻略できる
隠れて先制攻撃で弱点属性を突く、魔力が減ったら回復を繰り返すといった感じだ
そんなことよりも、階層を移る毎に鳴り止まぬアイテム取得の通知…
第三階層でやられる者が多いらしく、約70個のアイテムを
第四階層では多少少ないものの、倒される冒険者が高レベルなせいか中にはレアアイテムも混ざっていた
そうして第五階層にやってくると、魔物が極端に強くなる
炎を纏った熊、きっとアイオーンは熊が好きなのだろう
先制で氷結魔法を放ったピノなのだが、魔物はほとんど動じずに細い通路を行き場を無くすかのように迫ってきた
三発撃ったところで魔物の動作が大きくなって、急に間合いを詰めてくる
俺はピノの前に飛び出し、魔物の爪の一撃をくらう
HPは半分まで削られていた
明らかに今までの魔物とは違う一撃の重さである
「絶対にこの先に行かせる気無ぇだろあのやろう…」
その直後、2回の斬りつけも虚しく俺がやられてしまい
直後にピノもやられてしまった
「おかしいだろあの魔物!」
俺はアイオーンに向かって怒鳴っていた
アイオーンも、まさか第五階層まで辿り着くとは思ってもいなかったみたいで気まずい表情を見せる
俺の8000近くあるHPが一撃で半分削られたのだから、並みの冒険者ならばレベル100でも一撃死だとアイオーンもわかってて作っていたらしい
幸いにもピノに渡した装備はどれも失われずにいたが、俺は気に入っていた鎧を剥ぎ取られ上半身が非常に冷える
すぐに別の鎧を着たのだが、あの防具は前の世界でローズ達と一緒に旅をした時からの思い出のある装備だったというのに…
まぁ第五階層まで辿り着く冒険者も滅多に現れないようなので、とりあえず今日のところは諦めて帰ることにしたのだった




