4話「魔法」
オークの肉も上質な霜降り肉も手に入った、だが俺は目の前にある洞窟を放って先に進めるような人間ではない
食料や装備品、役立つアイテムがあるかもしれない
「魔物がいるのなら狩りに行っても良いよな」
【時間がかかりそうなのでリドラに…】
もう俺の出番はあまり無さそうだ
全部リドラが片付けてくれるだろう…
リドラが洞窟に入っていった後、俺たちが外で待っていると
急に熱風が洞窟内からやってくる
それは入り口から数十メートル離れている俺の背中を焼き、鎧で蒸し焼きにされそうになり
苦しくてのたうち回るほどには十分な殺傷能力を持った熱風であった
「あっつ!あっつ!ちょ、あっつ!!!」
【体験していただけたほどにリドラは強化されました】
アホ!体験したくねーよ!!
時々意地悪な超感覚さんに怒りを覚えながらも、インベントリにはどんどんアイテムが溜まっていく
「お、ゴブリンスリンガー…懐かしいな」
しばらくすると、ゴブリンロードが落とす水晶の錫杖も入手する
そういや、なんでオークディマイズの時は装備一式手に入ったんだ?
【スキル[ハイレベルボーナス]の効果です
単独時レベル差10以上、パーティー時20以上離れた魔物からのドロップは全て入手できるようになります】
え?じゃあオークディマイズのレベルは?
【50です、オークキングは30から40、下位のオークですと10から20となっています】
やっぱレベル高いんだな…ちなみに上限は?
【限界はありますが上限はありません、例えばレベル5000にもなれば生活に支障をきたすどころか常に周りを破壊し続けてしまうでしょう】
いやこの世界絶対にそんなにレベル上がらねぇだろ
時々意味のわからんことを言う超感覚さんに…
【せっかく気分を落ち着かせて差し上げようかと思っていたのに失礼なおっさんですね全く】
…はい、すいませんでした
リドラ(毛玉)が戻ってくる
ゴブリンとオークの他、妖花種の魔物も多かったようだ
あと、思いがけない収穫で
[鉄鉱石][銀鉱石]がかなり入手できた
どうやら炎のブレスで洞窟内を焼き尽くしていたら岩が溶け始めて色々と採取できたのだそうだ
【破壊による採取ポイントへの変化後にそのままインベントリへの入手となります、拡張によるスキルの変化です】
そういえば『いつのまにか薬草も増えてるなー』って思ってたけどそういうこと?
【はい、この辺りを飛んでいる際に薬草を含め45個入手しております】
先ほどと同様に超感覚さんによるアイテム管理を行ってもらって
[上級ヒールポーション]
[天駆の霊薬]
[インゴット(鉄)]
[インゴット(銀)]
を作成し
[スキルの書]×3
[力の種]×6
[魔力の種]×26
を使用する
「いつのまにか種もスキルの書も溜まってるもんなんだな」
【特定の魔物や上位種しかドロップしません】
じゃあスケルトンは?
【2%で命の実をドロップします】
あぁ、あっちは実なのか
新たしく覚えたスキルは
[ハイジャンプ]
[魔力増加(小)]
[自動回復(小)]
「ダブったー!」
【効果は重複します、同じ効果でも複数入手すると効果が増します】
「リドラの時は効果的じゃないって言ったじゃん」「キュ?」
【極や大と比べると小はあまり意味を成しません】
「ところで魔力も種やスキルで随分上がったと思うんだけど、魔法とか使えそうか?」
【魔法適性は十分にあります、マスターの魔法に対するイメージの問題が大きいでしょう】
「なんだと!俺の魔法のイメージは完璧だ、こう…隕石がズドーンと」
【それが無理だと言うのです、まずは普通に火の玉くらいにしてください】
一人、いやリドラもいるのだが
周りに誰もいないせいで最近口に出して超感覚さんに話しかけるような癖がついてきた
だが思っているだけで答えてくれる超感覚さんは、結構的確に悪態をついてくるのだ
「ファイヤー」
やる気の無さそうに魔法を使う
別に詠唱だの魔法の言葉だのが必要なわけではない
俺の中でファイヤーといえばこんな魔法が出てくるだろうと想像しているものだから、魔法を行使しやすいように喋っているだけなのだ
こんな言葉、対人戦で言っていたら何をするかバレバレである
ポッとでた火の玉は、その場に留まっている
…消えないな
【今ので魔力は半分以上使いました】
???
【火の玉を出すのではなく、火の玉が少しの間出現するイメージを持ってください】
「…ファイヤー!」
すると次はゆらゆらと炎が現れ、しばらくすると消えていったのだった
【かなり少ない魔力で魔法が行使できたことがわかりましたでしょうか?】
あー…うん、なんとなく
で、最初に出した火はいつ消えるんだ?
【強制的に消します】
超感覚さんがそう答えると、火は瞬時に消え去っていた
「なるほど、つまり俺は魔法を使うのに無駄なイメージが多かったり足りないイメージがあり
全く魔力が足りない状態だったということなんだな?」
【時魔導師のように特定の職でないと適性を得られない魔法も多いですが、四大属性と呼ばれるものはほぼ全ての者が行使できます】
「ファイヤー!」
思い描くイメージ、可燃性物質に火をつけ勢いよく燃えている
それを高速で前方に打ち出す
残りの魔力をほとんど持っていかれて魔法が発動すると、火の玉は猛スピードで飛んでいき遠くの木に当たり燃え広がっていく
「キュッ?!」
リドラが大慌てで飛んでいき消化してくれていた
【『放火魔再び』の称号を手に入れました】
「マジか?!」
【冗談です】
物質の出現には時間を制限しなければとんでもない魔力を持っていかれるそうだ
このイメージも、それぞれ3秒ほどのイメージを持たせることで消費魔力は1/10程度まで抑えられるらしい
3秒もあればかなりの広範囲、時間のイメージが魔法使いへの道といっても過言ではないらしい
その後
超感覚さんに魔法のノウハウを教えてもらった俺は、次の街へ行くことも忘れて黙々と練習を重ねているのだった
「うぇっぷ…」
【エーテルポーションの飲み過ぎです】