25話「リドラとヒスイ」
「王、例の青年を連れてまいりました!」
兵士に連れられ謁見室へと入る
ズラリと兵が並んでいるかと思えばそうでもなく
長い赤絨毯でも敷いてあるかと思えばただの石畳で
そもそもそれほど広くない
装飾といえば壁にかかる鎧と剣ぐらいなものだ
「おぉ、シュウという者はお主か
わざわざご苦労じゃったな、先日ピルスルとキルディアより色々伺っておるわ」
玉座も立派な彫刻は施されているものの、そこまで大きなものでもなくクッション1枚挟んだ程度の木の椅子であった
こんなところに金を使うなら税を下げろと言うのだそうだ
ただ、城の入り口だけは街の技術者に金を払い装飾を施したり彫像品を置いたりとするらしい
なので俺みたいに始めて謁見する者は、そのギャップに驚かされるのだ
【丁寧に挨拶をしましょう】
保護者かよ!
「話は大方聴いておるのだが、シュウよ
もう一度直接伺っても良いか?」
「はい、そのつもりで参りました」
なんとなく片膝ついて胸に手を当てて忠誠を誓っています!みたいな格好で返事をしたのだが
「なんじゃ?お主のいたところではそういう仕草をするものなのか?」と不思議がられた
サルヴァン国王の時は牢屋から直で食堂に通されてたからなぁ…
その仕草をみて王もまた面白いから取り入れてみるかなんて言い出して
数日後には正式に取り入れられていたらしいから凄く恥ずかしい
【予定通りです】
王に、未来の出来事
龍や大精霊から聞いた話、この時代の施設の建造と戦争が引き金になったこと
それらを俺から直に聞いてもらい、再度お願いをするのだが
「ふむ…確かに秘密裏に行われておる施設の事まで知っておるのは誠に不思議じゃな
で、お主が会った龍というのが水龍リヴァイアサンと暗黒龍シズク
大精霊は代替わりしたイフリートとシルフ、そして最近生まれたというソフィア…か」
考え込むリチャード王
「聖龍やアイオーンが復活しておらんのは本当なのだな?」
「はい、話では本来5年10年もすれば復活すると聞きましたが100年後も未だ復活はありません
アーティファクトによるものなのか、はたまた何者かの仕業なのかはわかっておりません」
再び頭を抱えるリチャード王
『どうにか世界をよくするには決断するしかあるまい』と呟くと、俺に向かって施設の放棄を約束してくれた
だが、それには帝国側の約束も取り付けねばならないらしいのだ
俺達は王の書状を持ち、東の大陸へと移動することになるのだった
【リドラの進化をオススメします、ワイバーンより高速飛行が可能です】
え?結構魔物倒してたけど今まで進化の兆候なんてなかったのに突然なんで?
【召喚獣の進化には経験値だけではなく一定量の食料も必要です】
…オークの肉とかでいい?
【150個もあれば十分でしょう】
その晩、俺は街の外に出て密かに餌を与え続けるのだった
オークだけでは足りないのでラビット族、ウルフの干肉なども与える
しかしどれだけ与えてもどんどん平らげていく
どんな胃袋をしているんだ?と思っていたら
【まもなく進化します】
[極龍ヒスイ:火と水の力を兼ね備えた子竜の進化、種族名として火水が与えられた]
リドラは一瞬その輪郭を残しつつ白く輝く
その光は周囲を包み、次の瞬間には10mはあろうかという紫の龍に変化していた
「キュォォォォン!!」
進化したリドラは突如咆哮する
「おぉカッコイイぞリドラ!…ん?」
塀の外からでもわかる、街の中に灯りがどんどん点ってゆくのだ…
深夜にこんな鳴き声が聞こえては街が混乱してしまう、すぐに門に向かい説明し謝るのだった…
【進化後は一時的に感情が高ぶっています、お気をつけください】
おっせーよ!!