12話「当然」
氷雪龍のいるのはミクニの街のすぐ南東に聳え立つ霊峰
暖かい季節でも雪が残っているほどに高い山の8合目には神殿が建っていたのだが
今ではその柱が残されているだけだそうだ
その山の脅威は3合目辺りから俺たちに牙を剥き始める
「はぁ…はぁ…すいません、少し…待ってください…」
レギの息が続かないらしい、レギだけでなく皆が苦しそうだ
さすがにここまで登ってくると酸素も薄く温度も低い、魔法でどうにか暖をとればより息苦しくなる
空間が遮断されるからか?それとも酸素も消費して周りの温度を上げているのか…どちらにせよ先に進める気がしない
無理をすれば全員ここで倒れてしまうだろう
まぁ俺だけ、実は地形効果無効のお陰で全く辛くは無かったのだが…
しかし、皆が心配なので一旦山を降りることにする
再びこれを登らなくてはいけないのか?
本当に登りきれるのか…そんな不安で、帰り道誰も口を開くことは無かったのだった
「あの山に登りたいんだけど、何か方法はあるのか?」
俺はドルヴィンと共に街で聞き回っている
3人は宿でお休みだ、まだ身体がおかしいというから無理はさせられない
「そりゃあんた、まずそんな格好じゃ凍え死んじまうさ
それに数十日分の食料とテントが必要だ、身体を慣らしながらそこに長期滞在する体力と精神力も必要だぞ
今じゃもう誰も登らなくなっちまったからな、そういったものを売ることも無くなっちまったわい」
まさかの普通の登山であった
ワープするとか酸素が薄くても大丈夫なアイテムとかがある訳では無いのだった…
「どうするドルヴィン…」
「多分一ヶ月はかかるだろうな、他の龍や大精霊の情報でも調べようか」
「ギルドは…まだ閉まっているのか」
ここのギルドは非常に小さく受付も常にいるわけではない
討伐や依頼で生計を立てている者よりも、工芸や織物などを他の街に売る者が多いのだそうだ
あまり情報らしい情報も得られないまま俺たちは宿に戻る
「ダメだった、明日も情報が無かったらとりあえず他をあたろうと思う」
ミドは、山頂まで吹っ飛ばす矢とか言い出したのだけど
どこまで通用するかもわからない上に、それでは多分高山病にかかってしまうだろう
酸素といってもこの世界では伝わらないようで、特殊な魔素だと信じられているようだった
「龍から来てもらえれば良いんだけどな…」
なんとかして連絡できないものかと考えてしまう
ローズの風に乗せた矢を山頂まで飛ばして…
大爆発でも起こすか?
もういっそリドラに行ってきてもらおうか
案だけは出るのだが、実際に爆発でも起こせば龍が怒って街を滅ぼすかもしれない
リドラだって低酸素や寒さに強いとは限らない
じゃあやっぱり俺だけで行くべきか…
まぁ、慌てて失敗するよりは別の手段を探すべきだろうなと思いつつ
その日は眠りについたのだった