#5 鑑定そして勇者誕生
お読みいただきありがとうございます。
下手な文章ですが、少しでもお楽しみいただけると幸いです。
魔無しであることを告げられた僕は、鑑定紙による鑑定を受けることになった。
しかし、そんなことよりも近くにいる姫様がかわいくて仕方ない。
近くで見る姫様は、目の下にうっすらと隈ができ疲れているようにも見えた。
「何かお助けできることはありますか?」
ふいに僕の口からそんな言葉が飛び出す。
その瞬間、姫様は驚いた顔をし、
その後、怒りに顔をゆがめたようにも見えたが、
すぐに我に返ったかのよう冷静な声色に戻った。
「ご心配をおかけし申し訳ございません。少々疲れておりまして。
しかし、まだ鑑定も出来ていない魔無しのあなたにおっしゃられたので驚いてしまいました。」
姫様のこれまでの雰囲気と異なるとげとげしい言葉に、返事を返せない。
すると、姫様は再び笑顔に戻り、
「まずは鑑定をいたしましょう。それからお助け下さい。
では、手のひらを見せてください。」
と続けた。
笑顔はかわいい。
さっきは、疲れているところに無神経だったか。
是非助けられるような力があればいいな。
僕は、かわいい笑顔に照れながらも手のひらを姫様に向ける。
すると、姫様はどこに持っていたのか、ナイフを一閃した。
あまりの速さに何が起こったかわからなかったが、
手のひらが熱いことに気が付く。
見ると、赤く染まっている。
血だ。
大した傷ではないのは分かるのだが、死の恐怖が襲ってくる。
このまま殺されるのか。
痛みと恐怖で混乱していると、姫様は無言で鑑定士の持つ羊皮紙を受け取り
僕の手のひらに押し付けた。
羊皮紙が光る。
羊皮紙が光ると、手の熱さと痛みが増す。
「いたい・・・痛い痛い痛い!」
痛みに悶えていると、姫様のかわいい声が聞こえてくる。
「我慢してください。こうしないとステータスが分からないのです。
首輪が効かない以上、もしとんでもない才能があれば拘束しなければなりません。」
拘束?そんな敵を見るような目で睨まれても。
やっぱり怒っているんじゃないか。
痛い。
また、痛みが増してきた。思わず目をつむる。
僕は、歯を食いしばって痛みに耐えるのが精いっぱいで、
言葉を発することができなかった。
どのくらい時間がたったのだろうか。
体感では1時間くらいに感じられたが、実際は1分くらいだったのかもしれない。
急に痛みが引いた。
目を開くと、姫様が羊皮紙を真剣な目で見ている。
この女、かわいい顔してとんでもない奴だ。
もう、だまされないぞ。お前は敵だな。
「この才能は・・・す・・・?け・・う?」
姫様が羊皮紙を見つめながら鑑定士と何かを相談している姿をしばらく見つめていると、
姫様の表情が急に和ぎ、笑顔になった。
あ、かわいい。
「痛い思いをさせてしまい申し訳ありません。鑑定が終わりました。
こちらがあなたのステータスになります。問題になる才能はないとのことです。
本当に申し訳ありませんでした。」
笑顔の姫様はかわいかった。
敵じゃなかった。
むしろ正義だ。
かわいいは正義。
そんなことも忘れてしまうとは、情けない。
鑑定する前に何の才能をもっているか分からないまま暴れられると、
魔無しだから制御するのも難しいもんな。
そりゃ、焦るわ。
うん、納得。
掌から羊皮紙を離すと痛みも少なくなってきたので、怒りも落ち着いてきた。
でも、姫様の困り顔がかわいいので大げさに痛がっておく。
「いたたた。ひどいですよー。」
「すみません。すぐに治療します。」
姫様が苦笑しながら、僕の手を握る。
作戦通り。
姫様の手の感触にニヤリとした瞬間、
叫び声が聞こえた。
「聖剣の使い手だ!勇者が現れたぞ!」
イケメンを見ていた鑑定士だ。
姫様は、声の方を振り返ると
僕の手を払いのけてイケメンのもとへ近寄っていく。
痛い。
姫様は、見たこともない笑顔だ。
まあ、出会ったのがついさっきだが。
くそ、あのイケメン、いつか痛い目に合わせてやる。
とりあえず勇者(笑)って呼んでやる。
毒づいていると、鑑定士が懐から取り出した瓶を差し出してきた。
酒か?
「酒じゃないです。ポーションです。手をお出しください。」
あれ?声に出てたか。
おー。ポーション!
さすがファンタジー。
早速手を出してポーションをかけてもらう。
バキン。首輪が壊れた時と同じ音がする。
ポーションはただの水となり、手の傷は少しも治らなかった。
鑑定士を見る。
「そうか、魔法薬も使えないのか。」
鑑定士は、嬉しそうにつぶやいた。
「おい!」
「あ、すみません。傷は深くないので大丈夫だと思いますが、衛生兵を呼んできますね。」
と足早に去っていった。
面白がりやがって。
あ、まだステータス確認してない。
次回#6 魔無し?素手?健康?は、10時に更新予定です。