#34 ぼこぼこにされた理由
睡眠学習によって聞いたユウの長い話を信じるなら、
ユウは巨乳魔女の洗脳に会っていたらしい。
「ユウ。聞きたいことが3つあるんだけど。」
「なんだい。アッシュ。」
ユウは、相変わらずのイケメンオーラでほほ笑む。
「僕をあんなに目の敵にしていたのに、もう何も思わないのか?」
ユウは、ほほえみから沈痛な面持ちに代わり答える。
「マジョーナの洗脳が解けた今なら、君が正しかったとわかる。
これまで、本当にすまなかった。そして、黒野君を守ってくれてありがとう。」
「じゃあ、どうやって洗脳が解けたの?」
ユウは、沈痛な面持ちからイメンスマイルに切り替えて答える。
「それも、君のおかげだ。アッシュ。」
「僕の?」
「そうさ。君が魔力を込めて僕の顔面を殴ったことで、
マジョーナの洗脳が破壊されたのだ!」
ああ、あの時は拳に魔力を集めていたから魔素拒絶も強まったのか。
ということは、逆に魔力を抑えれば魔道具を使えるようになるかもしれない。
まさか、こいつとの会話で有益な情報を得られるとは。
なんか負けた気分だ。
ユウを見ると、イケメンスマイルを続けている。
「で、最後の質問は何かな?」
「聞きづらいんだけど、いいかな?」
「もちろんさ!君と僕の仲じゃないか!」
いやいや、そんな仲じゃないでしょ?顔見知りレベルでしょ?
なんなら、加害者と被害者でしょ?
「じゃあ聞くけど。洗脳が解けた後、なんで僕はぼこぼこにされたの?」
「ぐ・・・」
あ。イケメンが固まった。
「その節は、本当に申し訳ない。
あの時は、洗脳が解けたことによる感情の混乱と
醜態をさらしてしまった焦りがあって・・・。
いや、言い訳はできない。
どうか、おれもボコボコにしてくれ!」
ユウは、土下座をして謝る。
「そういうのは、もういいから。
僕は理由を知りたいだけだ。
焦りはわかるとして、感情の混乱ってなんだ?」
「どうしても、言わなくてはならないか?」
「僕と君の仲なんだろ。」
そういうと、ユウはなぜか嬉しそうに答え始めた。
「うむ。そうだったな。
極端に言えば、洗脳中にたまったストレス、
洗脳されていたことに対するやり場のない羞恥心と怒り、
そして、洗脳中に蓄えられた君への嫌悪感が一気に溢れたのだ。」
「つまり、洗脳されてめっちゃムカつくし、
洗脳が解けてめっちゃ恥ずかしいし、
目の前に嫌いだった奴いるから全力で八つ当たりしよう。
っていうことか。」
「さすが、アッシュ。俺のことがよくわかるな!」
ユウは、今日一番の笑顔でサムズアップした。
「ふざけるなーーー。あれが、単なる八つ当たりだと。
死んでいてもおかしくないぞ。」
ユウは、サムズアップを続けながら答える。
「いや、アッシュなら大丈夫だと信じていたよ。
なんたって、僕のライバルだからね。」
こんな魔法も剣も使えないやつが、なんで勇者のライバルなんだよ。
僕は、思わず脱力してベッドに横になった。
「はあ、もういいよ。
で、用事は謝罪だけかい?」
ユウは、はっとして
「そうそう、忘れていた。これからの訓練について伝達に来たのだよ。」




