#31 来訪者
ミストレスがドアを開ける
「どうぞ。ようやく目を覚ましたよ。」
来訪者は、部屋に入るなり、僕に駆け寄った。
「アッシュ。大丈夫か。すまなかった。」
来訪者はユウだった。
がっかりだよ。
男ってなんだよ。
しかも、お前かよ。
ここまで期待させてから落とすとは、やはりこのイケメン勇者は敵だ。
ユウを睨みつけていると、誤解しているらしく謝ってきた。
「きみは、あの試合に勝っていたのに。
僕が癇癪を起してしまったばかりに、2回戦に出られなかった。
君が怒るのは、もっともだ。申し訳ない。」
ユウは、頭を下げる。
「別にそこは怒ってねえよ。あのまま、2回戦に出ても勝てなかっただろうしな。」
「そうか。そう言ってもらうと・・・いや、君なら上位に行けた可能性があった。」
「ないよ。それにしても盾か。あれは、僕では防げないな。
なんでもっと早くやらなかったんだ?」
僕は、試合を思い出しながら、疑問に思っていたことを尋ねた。
「それは、勇者は剣を使うものだと言われたからな。」
「だれに?」
「マジョーナとコロークにだ。」
「だれ?」
「魔法を押してくれている魔法使いと剣を教えてくれている騎士だ」
そこまで聞くとユウと一緒にいる二人組が思い浮かぶ
「あー、あの巨乳の。」
僕がうらやましそうにつぶやくと、ユウは自慢げに答える。
「そう。巨乳のだ。」
ふと殺気を感じ、横を見ると、絶壁の幼女がものすごい形相でにらんでいる。
僕らは、慌てて話題を変えた。
あれは、人を殺せる眼だ。
「それで模擬戦は、誰が勝ったんだ。」
「そうだな。順に話すと・・・。」
ユウは、丁寧に1回戦から決勝戦までの出来事を話してくれた。
長かった。
ちょっと寝ていたかもしれない。
かい摘むと、
ユウは、やはり1回戦で負けた扱いとなった。
そのあとは、赤髪のレンや青髪のマモル、それにキスケも準決勝まで進んだらしい。
ダイモンは、ひとしきり笑いを取って降伏したようだ。
そして優勝したのは、やはり聖女と呼ばれたレイだったそうだ。
僕は一通り聞いてから、ユウに尋ねる。
「全員のこっちでの名前を覚えたの?」
「当然だ。みんな仲間なんだからな。アッシュ、覚えてないのか。
まず、俺がユウだろ。」
「銀髪が聖女 レイ。
赤髪が侍 レン
青髪が守護戦士 マモル
黄髪が忍者 キスケ
白髪が治癒術師 ユキ
桃髪が魔導士 マホ
紫髪が狂戦士 シノ
緑髪が魔闘士 ミドリ
橙髪が道化師 ダイモン
藍髪が賢者 アイ
茶髪が魔獣使い ブラン
黄緑髪が鍛冶師 キミコ
水色髪が機工士 ハカセ
銅色髪が拳鬼 ゴウキ
虹色髪が時空術師 ナナ」
「そして、灰髪のきみが、魔無し アッシュだ。」
ユウは、一息で全員の名前を言った。
「待て。僕の職業は魔無しじゃない。薬師だ。」
僕が訂正すると
「まだ見習いだけどね。」
後ろからミストレスが、嬉しそうに水を差す。
ユウも思わず笑う。
「俺も、勇者見習いだな。アッシュに勝てるぐらいには頑張らないと、勇者とは呼べない。」
その言葉に、僕も笑う。
「そうだな。僕も簡単には勝たせないけどね。ユウ、もう一つ聞いてもいい?」
「ああ。なんだ?」
「ステータスを鑑定してもらったとき、なんでクロノを殺そうとしたの?ただ職業に魔剣士があっただけで。」
その質問がされた瞬間、ユウの顔がこわばった。




