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#28 vs 勇者(笑)

模擬戦の初戦は、僕と勇者(笑)ことユウだった。

指定された場所に立ち、ユウと相まみえる。

ユウに対する声援と僕に対するブーイングと野次がひどい。

やはり勇者は人気者なのか。

そんなユウを見ると、長剣を持ち、

ハーフプレートの盾と鎧と兜を身に着けている。

盾は、腕につけられるタイプで剣を両手で持っている。

オーソドックスな剣士の装備だが、どれも煌びやかで高そうだ。

僕は、それに比べて、皮鎧に皮の小手と具足だ。

観客には、騎士と農民のように見えるだろう。

しかし、眼力や脚力、駆動といった機動力を活かすため、

重い装備はつけられなかった。

ユウは、長剣を正眼に構えている。

「はじめ!!」

司会者の声が響く。

それと同時にユウは、剣を大きく上に振り上げ、高く跳躍した。

「中級長剣術。跳び切り(ジャンプスラッシュ)」

嘘だろ。あんな重そうな鎧着て跳ぶなんて。

どんな脚力だよ。

僕は、後ろにステップする。

ユウの剣が舞台にあたると、衝撃が突風になって吹き荒れる。

「くっ。」

僕は、吹き荒れる風のなか何とか眼を凝らす。

突然、風の向こうが明るくなった。

「初級炎爆魔法 フレイムボム。」

ユウの声がわずかに聞こえた。

爆撃魔法は、まずい。

そう思った瞬間、炎が砂煙を切り裂いて僕に直撃すると、爆発する。

バリン。

魔素が破壊される音がする。

魔素は拒絶されるため熱いのは一瞬だが、爆撃の物理的な衝撃が僕の体に伝わる。

剣と魔法をここまで使いこなすとは、さすがは勇者(笑)。

衝撃で体を動かせないままくだらないことを考えていると、

またユウの声が聞こえた。

「中級長剣術 駆け切り(ダッシュスラッシュ)」

ユウが、爆炎にスピードを上げて突っ込み、炎の中で轟音が鳴る。

そして、轟音とともにユウは、炎からはじき出された。

炎が消えると、僕は静かに立っていた。

何が起こったのか。


ユウのフレイムボムが直撃したシーンまで時を戻す。


爆炎が起こり、衝撃で体がしびれる中、爆炎の中を突っ込んでくる影が見える。

くそ。このままやられてたまるか。

「体裁きスキル ジャンプ。」

スキルによって動かない体を無理やり跳ばせる。

炎の中を突っ込んできたユウは、剣を横に薙ぐがそこには僕はいない。

「くらえ。格闘スキル キック。」

ジャンプとキックを組み合わせた跳び蹴りをユウの顔面に叩き込む。

轟音が鳴り、ユウのつけていた兜が場外まで飛んでいく。

カウンターとなった跳び蹴りをくらい、駆け切りの勢いもあって、

ユウも吹っ飛んで来た道を戻っていった。

しかし、兜ごとユウを蹴り飛ばしたせいか僕の足にも激痛が走る。

僕も素手の時の剛力はそこそこ高いはずなのに

どんだけいい兜つけてるんだよ。

追いかけたいところだが、足の痛みで動けず立っていると炎が徐々に消えてきた。

歓声が響く。

「おーーっと。初戦から激しい攻防だ。まずは、ユウ。さすがは勇者、中級長剣術を使いこなし、炎爆魔法まで使った。しかし、最初の攻防を制したのはアッシュ。爆炎で見えない部分もあったが、勇者の連続攻撃をみごとしのいだ。」

司会者は、実況と解説を器用にこなしている。

足が痛い。

アイツにも少しは効いたのか?

そう思って、ユウをみると平然と起き上がった。

「手加減はなしじゃなかったのか、勇者」

僕は、精一杯の強がりを言う。

「もちろんだ。勝負はここからだ。」

兜が取れたユウは、金髪をかき上げながら剣を構えなおす。

「きゃー。勇者様ー!」

黄色い歓声がうるさい。

忘れかけていた殺意を思い出す。

イケメンは敵だ。ここで殺らねば。

決意を新たに第二ラウンドの鐘がなろうとしていた。

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