#26 漂流者ギルド
明日からミストレスの店を手伝う約束をして、今日は帰ることとなった。
魔法が使えるようになるかもしれないという希望に足取りが軽い。
思ったより帰る時間が早くなったので、漂流者ギルドを見に行こうと思い立った。
クロノのことがずっと気になっていたのだ。
漂流者ギルドを道行く人に聞きながら探す。
何とかたどり着いたとき、ギルドの中が騒がしかった。
「お前、なんでまだいるんだよ。お前と組むやつは、もういねえよ。犯罪者が。」
中をのぞくとクロノが、ガタイのいい冒険者風の男に絡まれていた。
「てめえみたいな強姦魔は、早く牢屋にでもいってくれ。」
ガタイのいい男は、あえて大きな声でまわりに聞かせているようだ。
クロノはうんざりした様子で答えている。
「おれは、やってない。それが証明されたから、ここにいる。」
「どうだか。イナは泣いて帰ってきたんだぞ。
みんな見てる。それを逆に美人局だなんだと騒ぎやがって。恥を知れ。」
「だから、あいつが野営中に金も装備も全部持って行ったんだろうが。」
クロノが声を荒げるが、男は聞いていないようだ。
「まあ、お前が捕まるのも時間の問題だがな。
どっちにしろお前と組むやつはもういねえよ。やるなら一人で頑張れ。」
ガタイのいい男は言いたいことだけ言って、去っていった。
クロノが受付嬢の方をむくと、受付嬢の表情がひきつるのが分かる。
「ひっ。なんでしょうか。」
「はあ。Gランク一人で受けられるクエストをくれ。」
「は、はい。Gランク一人ですと、街中でできるゴミ拾いとか草刈とかになりますが。」
「くそ!」
受付嬢のは、びくっと肩を震わせる。
「それでいい。用意してくれ。」
クロノは、用意されたクエストの書かれているであろう紙をひったくると、
こちらに向かってきた。
「クロノ・・・。」
思わず声をかける。
「ハイバラか。見ての通りさんざんだよ。」
「みたいだね。支度金も装備もとられたのか。」
「ああ、この世界はマジで腐ってるな。」
「これ少ないけど、使ってくれ。」
僕は、銀貨1枚をクロノに渡す。
「哀れみか。いらねえよ。」
クロノは断る。
「悪いけど哀れみだ。だけど、ないよりはあった方がいいんじゃないか。
城に帰ったらジイさんにでも相談してみるよ。」
クロノは泣きそうな顔で
「そうだな。もらっとくよ。相談の方は期待しないでおく。」
というと、街中にきえていった。
「クロノは、ハードモードすぎるだろ。以前に読んだことのある成り上がり系の主人公そのものじゃないか。」
僕は、城に向かって歩き出した。
城について、食堂へ向かっていると久しぶりにあの人に会った。
姫様だ!
ワスレテナカッタヨ。ホントダヨ。
久しぶりに見る姫様は、何倍もかわいく見えた。
「あら、お久しぶりです。ハイバラさん。」
名前!名前を覚えてくれてる!
僕に声をかけたことに周りの人間が怪訝の顔をして、姫様に耳打ちする。
「姫様、時間がございません。」
僕にも聞こえるように言ったようだが、あえて無視する。
「はい!お久しぶりです!」
「どちらに・・・、ああケイさんのところに行っていたのでしたね。
よいお話は聞けましたか?」
「はい。明日からいろいろと教えてもらうことになりました。
それで、午前中の訓練は今後、欠席させていただきたいのですが。」
姫様は、微笑んだ。
くっ、かわいい。可愛すぎてかわいい以外の言葉が出てこない。
頑張れ、知力825。
「構いませんよ。私の方から、ジイペールや講師に伝えてきますね。」
「あ、ありがとうございます。」
ぼくは、90度のお辞儀をしながらお礼をする。
「では、これで。」
姫様たちが立ち去ろうとする。
しかし、僕は呼び止めた。
「あ、待ってください。もう一つお話を聞いていただきたいのですが。」
「申し訳ありません。姫様はご多忙ですので、ご用件はジイペール様にお伝えください。」
取り巻きが前に出てきて、丁寧な言葉で雑に扱われた。
姫様はそれを手で制止しながら、
「少しでしたら構いませんよ。」
また、優しく微笑んだ。
くっ。優しかわいい。
「ありがとうございます。あまり他には聞かせたくないのですが・・・。」
僕は取り巻きをにらむ。
すると、取り巻きは僕と比べ物にならない表情でこちらをにらんでいた。
思わずひるむ。
やっぱり、あとでジイさんに話すかな。
僕が戸惑っていると、姫様が取り巻きに少し下がるように命じた。
「すみません。さあ。どうぞ。」
姫様に促されたので、クロノの現状について小声で手短に報告した。
姫様は苦々しい顔で
「父上の手のものがギルドにいたのかもしれません。まさかそんな状況だとは。少し時間をください。対策を考えます。」
とおっしゃった。
真面目な姫様もかわいい。
あとでジイさんや師匠にも相談するとして、とりあえず肩の荷が下りた。
「お願いします。お時間いただき申し訳ありません。」
「いえ、報告ありがとうございます。また、何かありましたらよろしくお願いしますね。」
そういって、姫様たちは去っていった。
はあ、久しぶりに姫様成分を補充された。
僕は、満足して食堂に向かうのだった。




