#1 異世界漂流
お読みいただきありがとうございます。
下手な文章ですが、少しでもお楽しみいただけると幸いです。
僕は、灰原水樹。
誰かを助けなくてはいけない気がするが、具体的なことは思い出せない。
まあ、名前が思い出せただけでも良しとしよう。
落ち着いてきたら、周りが騒がしいことに気づいた。
目を開けると、石畳の部屋に18人ほどの少年少女がいた。
皆、15,6歳くらいだろうか。
全員が、同じシャツとズボンを身に着けている。
そして、髪の色は異様なほどカラフルだった。
「ここどこだよ!」
「だれかわかる奴いるか?」
「おかあさーん!お母さんが思い出せない!」
不安のせいだろうか、多くの子たちが泣いたり叫んだりしている。
だれもがこの場所が分からず、記憶が抜け落ちているものが大半なようだ。
「テンプレ!キター!!」
中には、喜んでいるものもいる。
僕は、上体を起こす。かたい床で寝ていたせいで体がバキバキだ。
肩や首を回してほぐそうと首に手を当てたとき、
突然首の周りでバキンと何かが壊れる音がした。
一瞬、首が折れたかと思ったが、痛みはない。
首に触れると、首輪のようなものがついている。
周りを見ると、全員についているようだったが、みんなの首輪は僕の首輪と違い光っていた。
首輪が壊れたのはまずいかもしれない。
状況が分からない以上、目立つことはなるべく避けたい。
その時、後ろにいた誰かとぶつかった。
バキン!
また、あの壊れる音がした。
しかし、周りが騒がしいせいか誰も気にしていない様子だ。
「すみません。大丈夫ですか。」
ぶつかった金髪のイケメンが謝る。
こっちがぶつかったのに、ぶつかられたほうが謝るとは。
これだから、イケメンは困る。
そう思いながら、謝ろうと視線を落とすと
イケメンの首輪も光が失われていることに気が付いた。
僕がぶつかったから壊れたのだろうか。
今のうちに何人かぶつかってみよう。
その後も2人くらいにぶつかってみたが、
どちらもバキンと音がして光らなくなった。
「あれ、こんな首輪ついていたかな。」
遠くで金髪がつぶやいたのが聞こえた。
その時。
ギィー、バタン!
部屋に大きな音が響く。
音がした方を見ると、大きな木の扉が開かれていた。
たくさんの鎧を着た騎士を引き連れて、絵本に出てくるお姫様のような恰好をした少女が部屋に入ってきた。
お姫様の肌は、シルクや真珠のように白く
お姫様の肩まで伸びたブロンドの髪が揺れるたびに天使を彷彿させ
お姫様の青い大きな瞳は、静かな湖畔のように澄んでおり
お姫様のぷっくりとしたピンクの唇は、特に僕を虜にした。
つまり、とにかくかわいかった。
「初めまして。私は、この王国の第3王女 ウルティナと申します。」
きれいな鈴のような声だ。
そして、すぐに気づいた。
ここは、異世界だ。
そんな小説を何個も読んだ・・・ことがある気がする。
これから、この姫様に懇願されて魔王とか倒すのだろうか。
「突然、知らない場所で目を覚まされ、私の話を聞いていただければと思います。」
異世界テンプレは知っている。最近は、王様の頼みを断るのが主流のようだ。
自分もそうすると思っていたが、姫様が想像以上にかわいい。
やばい。あの唇から頼まれたら断る自信がない。
「皆様は、異空間からこの世界に放り出された漂流者のようでございます。
この部屋は、皆様のような異世界漂流者を呼び止める部屋です。」
異世界漂流?
「突然の訪問ですが、こちらとしては最低限の補助はさせていただく所存です。」
淡々と説明していく姿は、どこか役所の役人を彷彿させた。
異世界転生でなく、異世界漂流らしい。
とりあえず、歓迎されていないことだけ分かった。
しかし、かわいい姫様が気になってしょうがない。