#17 先輩漂流者
魔剣が破壊され、黒野君が意識を失って倒れた。
その姿を見て、僕はその場にへたり込む。
兵士は唖然としていた。
「こ、こわかったー。キスケ、助かった。さすが忍者だ。」
僕は、サムズアップしながらキスケに声をかける。
キスケは影しばりの恰好のまま固まっていた。
一呼吸したのちに、
「いやいや、アッシュ!なにやってんすか!
魔剣に影しばりが効かなかったときは、死んだかと思ったっす!」
キスケがこちらをにらみながら怒鳴る。
これは、流石にこちらが悪いかな。
「ごめんって。計算上は何とかなりそうだったんだよ。」
心配させたことを謝っておく。
「計算なんか知らないっす。」
「まったくだ。生きた心地がしなかったぞ。」
兵士も声をかけてきた。
「すみません。兵士さんが黒野君を傷つけないように戦っていたのは分かったんですが。
それでも、余裕がなさそうで。最悪、殺されちゃうんじゃないかと不安になりまして。」
兵士に謝りながら、改めて顔を見ると、30歳くらいであった。
兵士は不満そうに答える。
「ふん。確かに余裕はなくなっていたがね。殺すつもりはなかったよ。
訳も分からずこの世界に着いて、拘束されて、殺される。
それじゃ、あんまりだろ。」
そこで、僕は違和感を覚える。
「魔剣士に忌避観がない?おっちゃんも漂流者なんですか?」
「えー。こんなおっちゃんいなかったと思うっす。」
キスケが声を上げる。
「おっちゃん、おっちゃんいうな。
確かに3代前の漂流者、リュウだ。
漂流者は、なぜか皆15歳だからな。まだ、30だ。
それにしても、坊主たちは今日漂流してきたんだろ。よく戦えたな。」
僕らを坊主と呼ぶところが、おっちゃんたる所以だが、
スルーして会話を進める。
「まあ、なんとか。おっちゃんが対応できていたから、
最悪守ってもらえると思ってね。」
「自分は、アッシュとおっちゃんの後ろで影しばりしただけなんで。」
「おまえら、おっちゃんを変える気はないな。」
そんな会話をしていると後ろから足音が聞こえた。




