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アンファンタジーな少年の異世界冒険譚  作者: ほまれ
成り上がりの主人公編
18/47

#16 初戦闘

兵士は、魔剣を持って暴れる黒野君をなんとか無傷で抑えている。

しかし、余裕はなくなり押され始めた。

このままでは、黒野君が殺されてしまう。

僕は、覚悟を決める。

「キスケ。黒野君は、こちらの声が聞こえてはいるが暴れることはやめられないみたいだ。兵士の言葉から、手に持っている魔剣が原因かもしれない。

このままでは、黒野君が殺される可能性がある。

なんとか黒野君を止めよう。」

僕は、完全理解で得た情報をキスケに話す。

「え?あ、自分のせいで足が・・・なにこれ。現実?」

キスケは気が動転していて聞こえないようだった。

パンッ!

キスケの頬を両手でたたいた。

「キスケ。聞こえるか。」

「は。はいっす。」

キスケは、我に返ったようだ。

「キスケのスキルで、少しでいいから黒野君の動きを止められないか。

そしたら、何とかなるかもしれない。」

僕は、キスケに尋ねた。

「は、はいっす。忍者のスキル忍術に影しばりがあるっす。」

僕は、影しばりについていくつか質問をした結果、

・影に触れないと発動しない。

・触れている影の所有者全員を強制的に対象とする。

・複数の人数にも同時にかけると、拘束時間は短くなる。

ということが分かった。

地下牢を照らすたいまつは僕らと黒野君の間にあり、

影は黒野君を挟んで向こう側にあった。

「影か。黒野君の影をこちらに向けてみる。そしたら、影しばりをしてみてくれ。」

僕は、そういうと暴れる黒野君の方へ駆け出す。

眼力をフルに使って、黒野君の魔剣と兵士のやりの動きを見る。

瞬間理解でも剣筋を見切ったりはできないようだ。

それでも、格闘スキルのステップを駆使して躱していく。

演習場で使っていてよかった。

黒野君の攻撃対象が二つになったおかげか、兵士の方に少し余裕が戻ったようだ。

「きみ!危ないから下がっていなさい。」

「助太刀にきました。ステップ。後ろにいるやつが影しばりを使います。ステップ。

たいまつの後ろまで誘導してください。ステップ」

なんとか、声をかける。

「わかった。確かに、このままじゃジリ貧だ。少しずつ下がるぞ。」

黒野君の攻撃をかわしながら、兵士に指示にあわせて下がっていく。

黒野君は理性がないのか単純な攻撃を繰り返している。

なので、僕でも何とかよけられた。

僕はステップで攻撃をよけながら、

少しずつ剣筋のパターンを“記憶”する。

5分ほどたっただろうか、たいまつを過ぎた。

「キスケ!影はそっちに向いたか!」

僕が叫ぶと、キスケも叫び返す。

「向いたっす!でも、影が重なっているっす。これじゃみんな動けなくなるっす。」

「だいじょうぶだ。合図をしたら、まとめてやれ。」

キスケは応える。

「分かったっす。やるっすよ。」

「おい。どうするつもりだ。」

兵士は、黒野君から目を離さずに尋ねた。

「僕は、武器を破壊できます。

詳しく説明している余裕がありません。信じてください。」

「やってみろ。いざという時は・・・」

兵士の槍を握る手に力が入るのが分かった。

そのとき、魔剣が大きく振り上げられる。

何度も見たことあるモーション。

僕は合図する。

「今だ!」

魔剣が僕に向かって振り下ろされる。

僕は、ステップで横にかわそうとする。

しかし、かわし切れないうちに

「忍法!影しばり!」

キスケの声が響く。

体に重い鎖がまとわりつくような感覚が走った。

まるで時間が止まったかのように、3人の動きも止まる

僕の体も、横にステップする途中で止まっていた。

しかし、魔剣だけが慣性の法則に従い動いている。

影縛りは生物限定なのかもしれない。

そんなことを考えながら、やや減速しているものの

振り下ろされてくる魔剣を止まったまま見つめた。

このままでは、魔剣をよけきれない。まだか。

一瞬であるはずの時間が永遠に感じられたその時

バリン。

僕の魔素拒絶により、全員の影縫いが破壊された。

再び3人の体が動きだすが、

急停止と解除を連続でさせられたため、僕以外の二人はよろけるが、

予想出来ていた僕はすぐに動き出す。

「ステップ」

前に踏み出し、

黒野君がよろけたことでさらに減速された魔剣を

つかむ。

その瞬間

バリン。

おなじみの音が響く

魔剣は砕け散った。

魔剣のかけらが舞う中で黒野君は、

意識を失い倒れこんだ。

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