#14 探索
アッシュは、キスケと黒野君を探して夜の城の暗い廊下をすたすたと歩く。
聞き耳を使ってみているが、周りに足音や話し声は聞こえない。
しかも、氷属性の眼力アップのおかげで、夜目がきくようだ。
後ろからついてくるキスケが尋ねる。
「アッシュは、どっちに向かうか知っているんすか?」
「うん、風呂から寝室に向かう途中に迷うふりして、場内の地図を見せてもらったからね。地下牢があるっぽいところに向かっている。」
キスケは驚く。
「一度見て覚えちゃうんすか。アッシュは、見かけによらずに天才なんすか。」
「キスケは、僕のことバカだと思っているよね。」
僕は、怒ったふりをする。
ほんとは、記憶スキルのおかげだけどね。記憶すごいな。
必死に取り繕おうとしているキスケを無視しながら、
地下牢につながっているだろう階段に向かって真っすぐ向かっていると、
丁字路が見えた。
「たしか、ここを右だな。」
曲がろうとしたとき、足音が聞こえた。
「止まれ。人が来る。」
僕は、慌てて狩猟本能を使いながら小声でキスケに指示を出す。
キスケはすでに気配を消していた。
隣にいるのにぼんやりとしか認識できない。
キスケの隠密技術に差を実感して落ち込みながら、
廊下の壁に張り付いて、兵士らしき人をやり過ごす。
意外といけるものだな。
兵士の気配がなくなったのを確認して、再度地下牢へ向かう。
夜のためか、人はほとんどいなかった。
途中で勇者(笑)が女騎士や巨乳魔術師とどこかへ出かけていくのを見たぐらいだ。
ナニしに行くのか。うらやましい。
くそ。イケメンが。うらやましい。
キスケに小声で話す。
「こんな城にいるのに探索しないはずがないよな。」
「はい。わくわくするっす。黒野君は、半分ついでっす。」
「お前ひどいな。
しかし、よくある小説なら今頃かわいい女の子と冒険が始まってもよさそうなのに。」
「かわいい女の子じゃなくって悪かったすね。」
なぜかキスケは不機嫌に回答する。
そんなキスケを無視して、足を進める。
「地図を見た感じ、ここら辺があやしいんだ。ほら、下りの階段がある。」
そこには、地下深くまで続く暗い階段があった。




