#9 ジイさん
いつもお読みいただきありがとうございます。
少しでもお楽しみいただけると幸いです。
鑑定の終わった僕らは、兵士に広い応接間に連れてこられた。
首輪は、明日外してくれみたいだ。
色々準備が必要なようだ。
ちなみに、僕や勇者(笑)などの壊れた首輪はすぐに外してくれた。
外してくれた役人は、「財務に怒られる。」と言って涙目だった。
みんなは、黒野君の一件をそれほど気にかけていない様子だった。
僕がおかしいのだろうか?
怖くて聞けない。
部屋にはふかふかの絨毯にソファーやいすがたくさん置いてあり、かなりくつろげそうだった。
姫様とは、あの石畳の部屋でお別れらしい。
最後に、イケメンと名残惜しそうにしている姫様を見て、
忘れかけていた気持ちを取り戻した。
勇者(笑)、絶対に痛い目を見せてやる。
殺され(かけ)た黒野君の分までな。
勇者(笑)を睨むと向こうも睨んできた。
まだ、根に持っているのか。
爽やかな顔してしつこい。
そんなことをしていると、偉そうな爺さんが登場した。
王様かな。
「おっほん。わしは、この国の漂流者担当大臣 ジイペールである。」
おっほんって、ほんとに言うんだな。
しかも、王様どころか宰相でもないのかよ。
漂流者担当って、5年に一度しか仕事しなさそうだけど。
「これから、皆にはこの部屋で1時間ほど休憩してもらい、夕食とする。
その後、部屋を割り付ける。申し訳ないが、4人部屋でお願いする。
詳しい説明は、明日からじゃ。では、ゆっくりしていなさい。」
まったく申し訳なくなさそうだな。偉そうだし。
でも、嫌な印象は受けない。
好々爺というやつか。ジイさんと呼ぼう。
休憩は、疲れているからありがたい。
ジイさんが出ていくと、僕は絨毯に横になった。
流石、城の絨毯。ふかふかだ。
石畳は痛いし、寝足りなかったんだよね。
早速、スキル睡眠を使おう。
がっかりしたが、もしかしたら素晴らしいスキルかもしれん。
今まさに寝入ろうとしたとき
「みんな、ちょっといいかな」
無駄にさわやかな声が響く。
勇者(笑)、お前は睡眠の邪魔までするのか。
どうやら敵として間違いないようだな。
「自己紹介をしないか。名前と職業、才能を言える範囲でいうのは、どうだろう。」
どうだろう?じゃねえ。黒野君は牢獄にいるんだぞ。
心配じゃねえのか。のんきに自己紹介なんかしてる場合じゃねえだろ。
こちとら心配で夜も眠れねえよ。
自分のことを棚に上げて毒づいていると、
自分以外は自己紹介をする雰囲気になっていた。
なんか皆、勇者(笑)に優しすぎない?
次回は、翌10時に更新予定です。




