第1章 第1話 今宵も、世界が平和だ!!!
初投稿!
「おめでとう、杏奈」
「夜羽、ありがとう」
「お前ももう結婚か、、あれからもう随分だったんだな」
「うふふ、そうだね」
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高校二年の夏休みが終わり、制服の長袖を着る者もあらわれた頃。水本夜羽は何時ものように始業のチャイムぎりぎりに教室に入る。視線が一気に集まり、凍りついたような空気が流れる。
が、気にせずに自分の席向かう。
「今宵も、世界が平和だ!!!」
夜羽がそう叫ぶと周りから「今日も、やってるよ」とヒソヒソと話をはじめる。もちろん、それだけでなくちょっかいを出してくるやつもいる。
「よぉ、よかったな、今宵も世界が平和で
お前のその隠された力のお陰なんだろう」
「左手の闇の力が疼くんだろ、中ニ病!」
何がそんなに楽しいのかゲラゲラと笑い出す男子生徒二人。大体近くの席の二、三人が毎朝のように絡んでくる。
「だから、俺は中ニ病ではない」
と、否定するが毎回何となくあしらわれてしまう。周りから見ると、夜羽は重度の中ニ病のようだ。そして、男女関係なく嫌われている。言動がヤバイのは認めるが、見た目が見苦しいという訳では無い。成績も上の下くらいで、コミュ障というわけでもない。
一般的に中ニ病が若干嫌悪されるが、ここまで嫌われてはいない。何故男女関係なく嫌われているのか。
その答えが彼女だ。
「おはよう、夜羽」
呆れた口調だが、微笑みながら一人の女子生徒が夜羽の机の下にきた。数少ない夜羽に嫌悪感を抱かずに接してくれる生徒であり、この事態の原因でもある。
彼女は、高坂杏奈という。学校で一二を争う美少女。男女問わず絶大な人気を誇る。肩まである艶やかな黒髪、パッチリと大きな瞳、透き通る肌、それが小さな輪郭の中に完璧な配置で並んでいる。そして、夜羽の幼馴染みだ。
非常に面倒見がよく、学年、性別、先生、誰からも頼られる。だが、クールな性格で夜羽への態度はどことなく雑だ。
「ん、おはよう、杏奈」
うわっ!?なんだこの集中砲火は!と言いたくなるようなクラスメイト全員からのレーザービームでかなりのダメージを負いながら気だるげに挨拶を返す。
その言葉を聞いたクラスメイトたちはなんだその態度はと言わんばかりにレーザービームの出力を上げてくる。
「はぁ、あんたはいつまでそれを続けてんのよそろそろ卒業したらどう?幼馴染みの私までちょっと恥ずかしいじゃん」
「まぁ、そう言わないで、もう慣れたでしょ。おはよう、夜羽くん」
ため息混じりで言った杏奈に話したのは杏奈の親友の近衛麻里香だ。彼女も数少ない嫌悪感を抱かずに接してくれる一人だ。そして、彼女も杏奈に負けないくらいの美少女である。腰にまでかかりそうな長い茶色がかった髪がツインテールにしてある。丸みを帯びた大きな瞳は常に光っているようだ。杏奈を美しいと言うならば麻里香は可愛いと言う言葉の方が似合う少女だ。
「おはよう、麻里香」
キーンコーンカーンコーン
そうこうするうちに始業のチャイムがなり、先生が教室に入ってきた。夜羽は毎日、朝に叫ぶとあとは死んだ魚のように静かでダラダラと気だるげに過ごしている。何時ものように授業が始まった。
昼休憩に入った。夜羽は持ってきた弁当を自分の机の上に広げ食べ始める。
杏奈は、麻里香と食べているようだ。何かを話して杏奈の頬が紅く染まりこっちを見てくる。スグに顔を背けられた。何かしてしまったかと少し考えてみるが、解が無い答えなんか考えるだけ無駄だと割り切って考えるのをやめた。
夜羽の席に杏奈がよって来た、一度止めた思考をもう一度動かし何かしてしまったかと考えてみる。
「夜羽、放課後話しがあるからあたしが部活終わるまで待ってて。」
思わぬことで反応が遅れてしまう。やはり、何かしてしまったか、怒られるのかと考えながら
「、、、ん、わかった。」
とだけ、返事をした。
昼休憩も終わり授業が始まる。そして、放課後。
夜羽は、「何時になるか聞くの忘れてた。」と思いながら、杏奈のいる陸上部を見て、時間を潰していた。怒られるのならば今のうちに帰ってしまおうかとも考えたが、帰って機嫌を今以上に損ねたらそっちの方が怖いと思い、思考を止め、時間を全力で潰しにかかった。
暫く眺めていると全員が一箇所に集まり始めた。やっと、終わったようだ。昼休憩のときのことを思い出しながら杏奈を待っていた。
足音が聞こえ、教室の扉が開く。
「えっ、まだいたの!?」
何言ってんだ、杏奈が待ってろって言ったんがろーが!!という思いを込めて。
「はぁぁ?」
と言ってやった。
「ごめんごめん、嘘だよ。うん、待っててくれてありがとう。」
楽しそうに、謝罪と感謝の思いを夜羽に伝えた。
暫くの間沈黙が続いた。我慢が出来なくなってついに夜羽が沈黙を破った。
「話って?」
「うん、話すから、、、、、、、、、、、、、
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、」
「あのね、わた──」
杏奈の言葉が途絶えてしまった。突然、夜羽たちの足元に白く光り輝く円環と幾何学模様が浮かび上がったからだ。二人は動揺と理解不能なものを見て、空間に縛り付けられたかのように動けなくなった。光り輝く文様、おそらく魔法陣であるものを見た。
その魔法陣は徐々に輝きを増してゆき、一気に教室全体を包み込んだ。漸く我に返り、「杏奈!!」と叫び、杏奈の手を掴んだのと同時に輝きが爆発したかのように更に増していった。
どれ位の時間がたったのだろう、輝きがなくなり教室全体が視認できるようになった時、そこに夜羽と杏奈の姿はなかった。
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ひとつひとつ続けていきたいと思います。