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セイギョ

僕は尿意で目が覚めた。

何時間寝たのか、分からなかったので、自室に掛けたあった時計を一瞥した。

針は5時を指していた。

陽織の言葉の殴打に耐えきれず僕は寝てしまったので、何時まで起きていたのか曖昧であるが、心身の疲れの取れ具合を考えるに五時間は寝ていたのかもしれない。

当の本人は床で眠りこけていた。

『むにゃむにゃ』と呻きながら、だらしなくはだけたTシャツから臍が露出している。

これが、学園一の才女である陽織の寝姿だと誰が言えよう。

そして、僕以外が知ることはないだろう…。

しかし、色気はむんむんとこちらに降りかかる。

幼なじみにしては綺麗な方だろうか?

好きな人はいるのだろうか、こんな変人に出来るわけはないだろうが。

寝込みを襲う程魅力的でも、そこまで性欲がなく、陽織に興味があるわけではないけれど、少々陽織を観察してしまった。

白色のTシャツに、青色の短パンを穿いてる(僕のやつ)、単色の服装に自棄に眩しい橙色の髪の毛がちりばめられ、より一層、陽織の輝きが増した気がした。

僕は陽織を跨ぎ、トイレへと向かった。

リビングも案の定真っ暗だった。

トイレを終え妹の部屋を一瞥するとドアの隙間から光が漏れていた。

もう帰って来たんだろうか。

母親はとっくに寝ていると思うけれど、妹は生粋の夜行性で、今もなお起きていてもおかしくはなかった。

妹の部屋のドアを三回叩くと、部屋から声が返ってくる。

「んぁ~あい」

寝転びながら発声したような間抜けな声を聞いてから部屋を開けると、やはりゴロゴロと猫のように転がっている姿が確認できた。

「だらしねぇ括弧だな」

「これが私の投球ホームなの」

「投げる気ないだろ」

「時速50cm」

「ほぼ進んでねぇ」

短いキャッチボールを終えた後で『んにぁあい』と、分からない呻き声をあげながら妹は体を起こす。

黒髪でありながら癖っ毛で、中央が猫耳のように跳ねているのが寝癖なんだろうか。

歴木(くぬぎ)。それが妹の名前である。

「今何時だと思っているんだ?」

「午後九時?」

「ここイギリスじゃないから、時差どんだけあるんだよ。夜更かしは美容に悪いことぐらい知っているだろ?」

「実兄が実妹の肌の心配とはびっくり、妹にまで手を掛けるとは、かなりの貧乳好きと見えるね」

歴木は大袈裟に手を胸元に当て、上目遣いでこちらを見上げてくる。

「僕はノーマルだ。決して貧乳が好きなわけではないぞ」

「だから、ひーちゃんが隣で寝てても手を出さないんだね!」

「あいつはそういう目で見れないんだよ。なんていうか、噛もうとすれば噛み殺されそうな勢いていうか…」

「ヘタレさんなんだね」

「まずその誤解を解こうか」

「にぃちゃんだって夜更かししてるじゃない」

歴木はボケに飽きたのか、唐突に話を変えてくる。

ボケだと信じたい僕である。

「今さっきトイレで起きたんだよ、なら部屋が明るかったから叱りに来たんだ」

「それはそれはお勤めご苦労様です、では私も束の間の休息を取ろうとしますかぁ」

「あぁ、おやすみ」

再び歴木はぬいぐるみが乱雑に置かれたベッドに倒れこんだ。

それを境に静は自室に帰ろうとするのだが、歴木がそれを妨げた。

「まだ、、『あの人』の所へ行ってるの?」

あの人とは、深月の事だろうと瞬時に察知した。

「そうだけど」

「もう止めたら?そこまでしたってあの人は何も変わらないよ、きっとね。だってーーーー」


『にぃちゃんがいるから変わろうとしないんだからさ』


僕は答えず、歴木の部屋を後にした。

陽織も妹も痛い所を突いてくる。

自分がいるから変われない。

僕が邪魔をしているとでもいうのか。

寝起きの脳では、思考回路不良なのか、考えたって薄暗い闇に消えていった。


「俺がいるから、か。どうしろってんだよ」


静が吐き出した嘆きすらも、暗闇に消えていく。


主人公がブレブレ気味ですね(泣

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