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一つの魂二つの命 ~とある少女のドタバタ現代ラブコメディ~  作者: 越賀イタイ
2話 スマートフォン ~その余命、わずか1日~
12/15

2-3


テケテンテケテンテテテテン♪


「え・・・?」


 こころは固まった。部屋に戻りスマホの設定を行おうと端末をいじっていると、いきなり軽快な音楽が鳴りだしたのだ。表示される着信画面。身に覚えのない番号。どうする・・・。これは出ても大丈夫なのだろうか。電源入れてすぐに着信なんて妙すぎる。


「なにこの番号、どこ!誰!?」


 めっちゃびびっている。無視しても良いだろうか。いや、しよう。無視しよう!こころは一度スマホから手を放し、遠ざかった。

 その後もしばらく着信が続いたが、相手は折れたのか着信音が止まった。


「なんだったんだ・・・」


 番号を確認すべく、今一度スマホを手に取り、恐る恐る画面を除く。すると・・・


 テケテンテケテンテテテテン♪


 再びさっきと同じ着信画面、着信音。


「え、怖い怖い怖い!」


 手に持ったスマホを身体から離すべく、その腕を遠くにやる。そんなことをしても状況は変わらないのだが。

 しかしここで、こころは思考する。


「いや待てこころ。これパパじゃない? サプラーイズ!とか言ってさ。さっき素っ気なかったのも演出的な?」


 怖さを紛らわす為か、自問自答しだす始末。


「そ、そうだよ!絶対そう!だってこの番号知ってるのって、これ買った人だけだもんね!あー気づいちゃったなこころちゃんはっ!」


 あははは、と一人笑ってみせる。その間も着信は続いている。ならこちらも知らないフリして出てあげるべきか、なんて考えながら、通話ボタンを押す。


「もしもし、こちらこころ!」


 家族相手なら、なにも緊張することはない。普段通りでいいのだ。


「・・・・・」

「・・・・・」


 スマホから、いや、相手からの応答が無い。一瞬の静寂がこころを混乱させる。


「も、もしもし?」

「・・・せぇ・・」

「え?」


 少し声が聞こえた。男性の声。しかし良く聞こえなかったため、電波が悪いのかとも思った。少し気が緩んだこころは続ける。


「あれ、通信悪いのかなぁ。もしもし!パパ、聞こえてるー?」


 もうこっちから話しかけてしまう。


「おっ・・・せぇよ!さっさと出ろ!!」


 耳元でいきなり怒鳴られ、反射的に、こころの頭はスマホと反対側に弾かれたように動いた。

 一瞬何を言われたのか分からず、こころの思考は停止した。目を丸くしたまま、スマホを耳元から外し、画面を眺める。そして完全に気づいた。


「パパ・・・じゃ、ない!!」


 こころに衝撃が走った。

 そしてこころはその声に、聞き覚えがあった。最近聞いた声、口の悪い態度・・・ヤツだ。



《スメラギ ユキ》



 こころに渋谷での出来事がフラッシュバックする。そして、その名前を思い出した。



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