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テケテンテケテンテテテテン♪
「え・・・?」
こころは固まった。部屋に戻りスマホの設定を行おうと端末をいじっていると、いきなり軽快な音楽が鳴りだしたのだ。表示される着信画面。身に覚えのない番号。どうする・・・。これは出ても大丈夫なのだろうか。電源入れてすぐに着信なんて妙すぎる。
「なにこの番号、どこ!誰!?」
めっちゃびびっている。無視しても良いだろうか。いや、しよう。無視しよう!こころは一度スマホから手を放し、遠ざかった。
その後もしばらく着信が続いたが、相手は折れたのか着信音が止まった。
「なんだったんだ・・・」
番号を確認すべく、今一度スマホを手に取り、恐る恐る画面を除く。すると・・・
テケテンテケテンテテテテン♪
再びさっきと同じ着信画面、着信音。
「え、怖い怖い怖い!」
手に持ったスマホを身体から離すべく、その腕を遠くにやる。そんなことをしても状況は変わらないのだが。
しかしここで、こころは思考する。
「いや待てこころ。これパパじゃない? サプラーイズ!とか言ってさ。さっき素っ気なかったのも演出的な?」
怖さを紛らわす為か、自問自答しだす始末。
「そ、そうだよ!絶対そう!だってこの番号知ってるのって、これ買った人だけだもんね!あー気づいちゃったなこころちゃんはっ!」
あははは、と一人笑ってみせる。その間も着信は続いている。ならこちらも知らないフリして出てあげるべきか、なんて考えながら、通話ボタンを押す。
「もしもし、こちらこころ!」
家族相手なら、なにも緊張することはない。普段通りでいいのだ。
「・・・・・」
「・・・・・」
スマホから、いや、相手からの応答が無い。一瞬の静寂がこころを混乱させる。
「も、もしもし?」
「・・・せぇ・・」
「え?」
少し声が聞こえた。男性の声。しかし良く聞こえなかったため、電波が悪いのかとも思った。少し気が緩んだこころは続ける。
「あれ、通信悪いのかなぁ。もしもし!パパ、聞こえてるー?」
もうこっちから話しかけてしまう。
「おっ・・・せぇよ!さっさと出ろ!!」
耳元でいきなり怒鳴られ、反射的に、こころの頭はスマホと反対側に弾かれたように動いた。
一瞬何を言われたのか分からず、こころの思考は停止した。目を丸くしたまま、スマホを耳元から外し、画面を眺める。そして完全に気づいた。
「パパ・・・じゃ、ない!!」
こころに衝撃が走った。
そしてこころはその声に、聞き覚えがあった。最近聞いた声、口の悪い態度・・・ヤツだ。
《スメラギ ユキ》
こころに渋谷での出来事がフラッシュバックする。そして、その名前を思い出した。




