表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一つの魂二つの命 ~とある少女のドタバタ現代ラブコメディ~  作者: 越賀イタイ
2話 スマートフォン ~その余命、わずか1日~
11/15

2-2

 

 その後何事もなく平日が終わり、休日である土曜の朝。

 目覚まし時計は9時を過ぎており、カーテン越しに外からの春の日差しがこころの部屋に差し込んでいる。

 長い年月を共にしクタクタになっているウサギのぬいぐるみを抱いて眠っているこころに、1階からの母親の呼び声が届く。


「こころー、そろそろ起きなさーい」


 その声でこころの意識が目覚めた。だが未だに瞼は重い。まだ眠っていたい。


「んー・・・あと少し・・・」


 小声で抵抗するも、1階から呼びかける母にその声が届くはずもなく。


「アンタが食べ終わらないと皿が片付かないのよ!」


 続けて不満もぶつけられた。こころは微睡(まどろ)んだ意識の中で、そろそろ起きないと母親への対応が面倒になるな、と察知し始めた。


「んんー!!」


 今度は力を振り絞り1階にも聞こえるように声を出した。これは、喋る気力がまだ出てこないが、「聞こえてる、起きてる」の意味を込めた返事である。


「アンタ宛に荷物も届いてるわよ!」


 とりあえず起きはじめていることは母に伝わったようだが、他にも用があったらしい。


「んー・・・・・・・・・ん!?」


 また生返事で声を発するも、母親の言葉を理解するまで数秒必要とし、思考を開始。


「荷物・・・?」


 寝起きで鈍っている頭で、ここ数日、ネットショッピングをしたか思い返す。そして思い出した。最近発売したゲームソフトだ!それは以前から話題になっていた新作のネットゲーム。一昨日こころはワクワクしながらポチっていたのだった。

 思い出すと、こころは勢いよく身体を起こした。早くやらなくては!

 寝起きでボサボサの髪をグシャグシャかき、軽く手櫛(てぐし)で整えながら、勢いよく布団から飛び出した。


 ドタバタと音を立てながら1階へ降りると、父はコーヒーを飲んでテレビを見ていた。母は台所で食べ終わった皿を片付けている。


「おはよう」


 こころが1階に下りてきたのを察知した父は、テレビを見ながら挨拶した。


「おはよう!荷物どこ!?」


 挨拶を返すと同時に問う。


「ん?ああ、そこに置いてあるでしょ」


 父はテレビを見たまま、娘の問いに答えた。

 テーブルには、こころの分の朝食と一緒に、小包が置かれていた。こころは光の速さで小包を受け取るとそのまま2階へ駆け上がり部屋へ戻って行った。


「あ、ちょっとこころ!朝ごはん早く食べてちょうだいよ、片付かないじゃない!」

「あとでー!」


 母の注意を聞き流しながら、こころはベッドの上でさっそく小包を破き開けた。この土日はこのゲームをして過ごすのだ!そう決心しながら。

 しかし、小包を開けると、シンプルなデザインの箱が出てきた。ソフトにしては少し小さい。

 フタを開けてみると、中から出てきたのは・・・


「あ・・れ・・・・?これ、スマホ・・・?」


 そう、それはみんなが使っている長方形の電子端末、スマートフォンであった。こころの頭に疑問符が乱舞する。何故、スマホ・・・?ゲームをする気マンマンで開けたのに、まさかのスマホ。考える、なぜスマホなのか。そして思い出す。携帯が壊れたことを父に話したのも一昨日。

 つまり、父が買い換えてくれたということだ。


「あー、うん、そっか。必要だもんね、携帯電話。そっかそっか・・・」


 中を開けると黒いスマートフォンが出てきた。初めてのスマホ。最新機種。嬉しいはずなのに、純粋に喜べない。なぜなら、今のこころはゲームの方が欲しかったのだ。それに、買うなら選ばせて欲しかった。無難な黒じゃなくて、もう少し個性のあるやつ。メーカーも。このプレゼントの仕方は、残念感極まりなかった。


 こころは1階へ降りた。そしてテーブルに付いて、朝ごはんを食べ始めた。父は無言だった。コーヒーを飲みながらずっとテレビを見ていた。テレビでは、外国が開発した人工知能がどうたらとか、面白いペットの動画とか、最近話題の美しすぎるモデルの話などが流れている。世間は話題に事欠かないらしい。あとたぶん、父はこの話題の美女モデルに目が釘付けなのだろう。娘が美女じゃなくて悪かったな!

 数分で食べ終わったこころは、皿を台所の母に渡し、リビングを後にする。


「あ、パパ。アレ、どうもありがとう」


 あまり感情が乗らない薄ら笑みで一言お礼を言って。


「ああ」


 父はテレビを見続けながら、生返事した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ