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3年たった今。考えてほしいこと。

作者: とある日本人

あの日。


被害地から遠い場所に暮らす私は呑気にネットサーフィンをしている最中、微睡に落ちていました。


震災が起きたのを知ったのは夕飯前で、茨城県(?)のどこかで起きていた大火事が、地獄の業火のように見えて戦慄したのを今でも覚えています。

 「運命」……人間の意志をこえて、人間 に幸福や不幸を与える力のこと。あるいは、そうした力によっ       てやってくる幸福や不幸、 それの巡り合わせのこと。


 僕は「運命」という言葉が大嫌いだ。もしも「運命」が人間の一生を支配していて、人間は「運命」に支配されながら生きているのなら、これまでの我々の「努力」、そしてこれからの「努力」も、すべて無意味なものになってしまうではないか。(特に「運命」に恵まれず、今まで必死に努力してきた人にとっては)


 では、運命とは何ぞや。―――その答えは、私たち人間が一番よく知っているのではないだろうか。

 イヌやネコは「運命」なんて感じない。そこに起きた事象を、ただ漠然と捉え、漠然と受け入れる。


 だけど人間にはそれができないのだ。人間は考える「葦」だから。考えずには生きてゆけないから。


 つまりは「運命」とは、人間の身に降り注いだある事象がその者(々)にとって受け入れがたいものである時(それが幸であれ不幸であれ)、その事象を「運命」だといって、この世界の観測者(すなわちは超越的存在)の仕業にでっち上げたものなのだ。世界は「偶然」の積み重ねで構築されてきたのである。



 よって明日、降水確率0%の予報が出た地点で雨が降ったとしても、それは「偶然」であって「運命」ではない。


 曲がり角で、ラブコメのシチュエーションのように美男美女とぶつかったとしても。


 街道を歩いていて、電柱に停まっていたカラスがあなたの肩に糞を落としてきたとしても。


 縁起でもないが、明日世界のどこかで連続通り魔事件が発生して、あなたがそれに巻き込まれたとしても。



 そして、早くも3年前のこととなった東日本大震災が起こったことも。


 それによって、多数の無辜の命が奪われたことも。福島第一原発の原子炉が暴発したことも。




 「偶然」の一言で済ませてはならぬかもしれない。もっと防災訓練や非常時のシュミレーションを怠っていなければ、ここまで被害は大きくなっていなかったかもしれない。


 だけどそのことを、「運命」の一言で片づけてしまうことは、もっと不謹慎で、無責任だ。


 あの日私たちは、形は違えど確かに各々の日常を謳歌していたのだ。だけどあの日、一瞬のうちに、神様の気まぐれで選ばれてしまった人たちの日常は失われてしまった。これは紛れもない「偶然」なのだ。住民の避難が遅れたことや、福島第一原発の事故は対しては、それに関わっていた住民や職員の日々の怠慢を、この惨事の「偶然性」を否定するために非難することはだれにも不可能だ。あの震災が必ず起こるという確信をもって日々を過ごした人は一人もいなかったのだから。




 今後も、あの震災のような予期せぬ「偶然」の出来事が世界で絶えず起こることだろう。それは、紛れもない、神様が私たちに押し付ける「運命」なのだ。


 だからと言って、私たちはその「運命」に屈してしまうのか。私は、人間は、日本人はその程度で折れるような存在ではないと今でも信じている。


 3年が過ぎ、震災地以外の場所では震災があったという記憶すら薄れつつある。果たして日本人の何割が東日本大震災の発生日時を正確に、分単位まで言うことができるだろうか。東北の人たちに降り注いた「偶然」が、いつ私たちに降り注いでくるかわからないということは忘れてはならないのに。


 「偶然」の犠牲となった尊い命たち。彼らは今でも私の心の中で生き続けていて、私の双眸から涙をこぼす。



 願わくは、「彼ら」が日本人みんなの心の中、ひいては世界中の人々の心の中で生き続けんことを。

最初の方の文章に「輪るピングドラム」の下りが引用しています。ご容赦してください。


もしもこの文章を読んで、不快な気分になった方はすぐに連絡をください。即刻削除いたします。

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