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今のものと変わるもの




「せっかく一念発起して上京したのに故郷へ戻れとか」

 青年は新幹線の中でひとりごちる。

「東京で学んだことを故郷へ、故郷の問題を東京へ」

 上司に言われたことを青年は繰り返す。

「それが地域創生につながるって言われてもさ……」

 青年は上がなにを考えているのか思考を走らせる。

 

「まあこちらは旅行気分を満喫しようか」

 上には上の考えがあると結論付け頭を切り替えた。

「動画でも見るかな」

 そう言うと青年は荷物に上から降ろし手を入れる。


  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


『おう兄ちゃん初めて見る顔だな』

 西部劇を思わせる酒場で男性に声をかける。

『この大陸のルール知ってっか?』

 粗暴な態度の男が一人の男性に粘着的に絡む。

『<奪われるほうが悪い>だったかな』

『そういうことだ』

 財布をゆらゆらと動かし粗暴な態度の男は言う。

『ああそうだな。奪われるほうが悪いよな?』

 一瞬の隙をつき男性は財布を取り返した。

『この野郎!』

『もうやめとけ。今回はこっちの負けだ』

『そんなアニキ!なんとかしてくだせえよ!』

『弟分が失礼した。まあ大目に見てやってくれや』

『んールールを再確認できたし他になにか?』


  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


(この男性が主人公だな……)

 余裕をもって言い返す男性を見て青年は思う。

 その瞬間新幹線が止まり窓側の人が立つ。

 青年は通りやすいよう道を開け窓側に移動する。

「さて続きはどうなるのかねえ」

 青年はぼんやりと動画を見続ける。

 

  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ★

 

 青年が流し見している中動画は佳境を迎えていた。

 

『まさか助けた女性が敵だったとは……』

『そうねふしぎな運命よね――』

 髪の長い女性の話の最中男性は物陰に飛び込む。

 さっきまでたっていたところに銃弾が飛ぶ。

 男性のいる物陰にも数発撃ち女性は手を止める。


『弾切れ狙い?ちゃんと戦いましょう?』

 女性からの結党の誘いに男性が乗り姿を見せた。

 

 お互いホルスターに銃を入れ向かい合う。

 しばしの間の後銃声が鳴り響く。

 

『銃身を狙うなんて……』

『抜き打ちなんて久々でね。狙いがずれただけさ』

『私の負けね……この大陸のルールはご存じ?』

『<敗者は勝者に従う>かい?なら道を開けてくれ』

『見逃すの?私を』

 驚く女性に男性はカウボーイハットを深めに被る。

『先を急ぐんでね。弾も有限だし』

『島国出身なら弾と命をかけているのかしら?』

『さあね。ご想像に任せるよ』


  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ★  ★


 その後なんやかんやあって敵のボスは捕縛された。

(この時代ガラスってあったっけ?)

 青年はぼんやり見ながらボスの動きを思い出す。

(あるとしても高価だよな。それ割って逃げるのか)

 窓ガラスを割って逃げようとした動きが気になる。

(まあいいか細かいところは)

 ぼんやり斜めに見ていた青年を動画に視線を戻す。

 物語は終わりに近づいていた。

 

  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ★  ★  ★

 

 

『……ここは?』

『気がついたかい?ボスに裏切られ気を失った――』

『くっ!』

『おっと。弾は抜いてあるよ』

 男性は女性が抜いた銃口に花を差し込む。


『ヒナギクの花?フラワーパワーのつもり?』

『銃弾の代わりに花束をならそうかもね』

『……そうね。戦いは終わったみたいだし』

『ならちょいと失礼』

『っ!なにを!?』

 男性は女性の長い髪をバッサリと切り落とした。

『幹部の一人の特徴は女性で――』

『火薬と硝煙が染みた長い髪が特徴と手配書にある』

『そ。だから切り落とした』

『逃がすつもりなの!?』

『まさか一緒にいて更生させるつもりだよ』

 男女の会話の花が咲く。

『更生?』

『任務のために夢や希望を捨てた人に』


 男性のセリフに女性の眉がピクリと動いた。

『もう一度夢や希望を与えるのさ』

『まあいいわ。さっきの戦いで私は負けたのだから』

『戦い?ああヒナギクの花を挿したしたことか』

『敗者は勝者に従うのがこの大陸のルールよ』

『なら旅に付き合ってもらおうかな』

 

  ☆  ☆  ☆  ☆  ★  ★  ★  ★

 

 男性が言い終えた直後スタッフロールが始まる。

 スタッフロールの後ろで後日談が描かれていた。

 数々イベントの後女性の瞳に光が徐々に戻る。

(なんかいいなあこういうの)

 青年はぼんやりとスタッフロールを見続けた。

 やがてスタッフロールが終わると逆再生が始まる。

 逆再生は診療所のシーンで止まり会話が始まった。


  ☆  ☆  ☆  ★  ★  ★  ★  ★


『どうして私を助けたの?』

 診療所で手当てを終え女性が男性に聞く。

「瞳が助けてと言っていたからね』

 カーテンの向こうで男性が答える。

『負けた身としては大陸ルールに従うさ』

『負けた?あなたが?いつ?どこで?』

『初めて会ったときに』

 女性の問いに男性が言葉を返す。

『撃ち抜かれたからね。ハートを』


  ☆  ☆  ★  ★  ★  ★  ★  ★


「昔のノリで作ってある作品だったなあ」

 青年は動画を見終えて感想を漏らす。

「暇つぶしにはちょうどいいかな」

 次の動画を見ようとした青年の手が止まる。

「ストック切れか……なら作るか」

 そう言って青年は動画作成の画面を開く。

「ジャンル・キーワード・フリーワード……」

 画面を見ながら青年はなにを作ろうか考える。

「まあいいかランダムで」

 青年はルーレットと書かれたボタンを押す。

 すると文字が入力され空白を埋めていく。

 

「えーっとなになに。ジャンルホラーで」

 完成した動画作成の画面を青年は確認する。


「タイトルは『決戦!サイボーグゾンビシャーク』」

 青年はあらすじに目を通す。

 

『知能を持つサメと戦い続けるハンターがいた。

 相手のサメは欠損個所を機械で埋めて強化する。

 サメはある日見つけた死霊術を自分にかけた――』

 ビーチにサメが姿を見せ人々が逃げ惑う。

 人が倒れくっきりとできた人型に足跡が重なる。

 そんな映像とともにテロップが流れていく。

 

「サメ関係ってB級臭が強いんだよなあ」

 保留にして青年はもうひとつ作ることにした。

「フリーワードで選択系が出たら手動にしよう」

 そう決めてからまたルーレットボタンを押す。


「ええとジャンルは恋愛でキーワードは非恋で」

 画面を見ながら青年は一つひとつを見定める。

「魔法使いに選択エリア?属性を選べ、か」

 青年はしばらく考える。

 窓から外を見ると太陽はギラギラと輝いていた。

「そうだ!氷にしよう」

 氷を選び決定を押すと青年はあらすじを見る。

 

『旅に出る恋人を女魔法使いは見送った。

 女魔法使いは恋人をびっくりさせようと思いつく。

 氷の魔法で自分の時間を止めて恋人を待ち続けた』

 

 あらすじの背景で流れている動画に視線を送った。

 女魔法使いの瞳からだんだん色が消えていく。


「また感情消えるパターン?サメもアジトあるし」

 青年は大きく息を吐いた。

「これだからAIは……まあいいや作成しておいて」

 動画を作成しますかで青年は二つとも作るを押す。

「作成終わったらAIアップデートだな」

 そう決めたところで新幹線は目的地に着いた。

 

  ☆  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★

 

「ローカル線は毛細血管か。ネコ駅長だっけか」

 電車に乗り換え青年は独り言を言う。

「故郷が抱える問題か……あ通学路。懐かしいな」

 電車から見える景色に青年は懐かしさを覚える。

「この辺りは昔のままだな。良いことなのかねえ」

 昔のままの姿が在りし日を思い出せた。

 変わっていたのなら発展を喜べたのだろう。


(少し複雑だなこの思いは)

 青年は電車から昔のままの風景を見る。

(東京での学びを故郷へ故郷の問題を東京へか……)

 故郷に帰ってきた目的を青年は思い出す。

 

  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★  ★

 

(考え方はAIと一緒なんだよな……)

 電車から降りて実家までの道を一人歩く。

 

(AIに例えば今日のラッキーフードを聞くとして)

 犬の散歩をしていた人とあいさつを交わす。

(リラックスできる飲み物と言われて)

 飼い主と昔話を軽くしてまた青年は歩き始める。

(ミントやカモミールが出たとしようか)

 懐かしさを感じる道で青年は自販機を見つける。


(ハーブを扱ってる店を探すのも行くのも骨が折れる)

 昔よく自分が飲んでいた飲み物を選んで買う。

(大切なのは本質はリラックスできる飲み物)

 封を開けて青年は軽く口にして一息つく。

(だから緑茶でもココアでも味噌汁でも全部OK)

 隣のベンチに腰を下ろし懐かしさを噛みしめる。

(本人がリラックスできるのが本質だからね)

 飲み終えてリサイクルボックスを探す。

 撤去したと判断し青年は缶をかばんに入れる。

(なら僕がここに来た本質はなんだ……?)

 青年は思考の旅をつづけながら家路を歩む。


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