第6話 迷宮の中心と風竜の封印
霧が徐々に薄れ、リアンの目の前に広大な空間が現れた。
壁は光を反射して淡く輝き、天井からは風が舞い降りる。
ここが迷宮の中心――風竜の封印が眠る場所だった。
「やっと……ここまで来たのか」
リアンは短剣を握り直し、心を落ち着ける。
背後でセリナが軽やかに舞い、微かに光を放つ。
「準備はいい?ここからが本番よ」
空間の中央、巨大な風竜の像が霧の中に浮かぶ。
半透明の体は渦巻く風でできており、微かにうなり声が響く。
リアンはその圧倒的な存在感に、一瞬立ちすくむ。
「落ち着け、リアン……心を乱すな」
セリナが囁く。
「風竜の力は迷宮の中心を守る。封印を解くには、
あなたの心の清らかさと勇気が必要」
リアンは深く息を吸い、短剣を掲げた。
風竜の瞳が揺れ、空間の風が一瞬止まる。
「俺は……ここまで来た。負けない!」
彼の決意が、迷宮全体に響くようだった。
まず、迷宮の床が光り、風竜の封印を解くための
試練の模様が浮かび上がる。
それは一種のパズルのようで、風の流れに沿って
特定の動きを行わなければ解けないものだった。
「慎重に……でも迷わずに」
セリナが励ます。
リアンは指示に従い、風の流れを手のひらで感じ取りながら
模様の上を一歩ずつ進む。
しかし途中、風竜の封印の残滓が実体化し、影のような
竜の姿がリアンを試す。
「俺を……試すのか!」
短剣を構え、攻撃をかわしながらも冷静に動く。
セリナが風を操り、封印の残滓を押さえつける。
数分の戦いの末、リアンは試練の最後の一歩を踏み出した。
模様が光り輝き、風竜の封印が微かに揺れる。
「やった……これで……」
彼の胸に達成感が広がる。
風竜の体がさらに輝き、霧と渦が一瞬静まる。
目を開くと、封印がほんのわずかに緩み、
竜の瞳に柔らかい光が宿った。
リアンは理解する――風竜は完全に目覚めるわけではない。
だが、信頼を与えられる者を選んだのだと。
「素晴らしいわ、リアン。あなたは迷宮の試練を超えた」
セリナが微笑む。
「風竜と心を通わせ、封印の真意を理解した者だけが
先へ進めるの」
リアンは息を整え、心の中で決意を新たにした。
「俺はこの力を、村や精霊界を守るために使う」
迷宮の中心で、彼は初めて風竜と心を通わせ、
精霊界の知識と力の一端を得たのだった。
「さあ、次は迷宮の最深部よ」
セリナの声が風に乗る。
リアンは短剣を握り直し、さらに深く霧の中へ歩みを進めた。
迷宮の真の秘密――人間界と精霊界を繋ぐもの――
それは、まだ全貌を見せてはいなかった。
霧深き迷宮の冒険は、ここからさらに広がる。
風竜との出会いは、リアンに力と知恵を与えた。
しかし、試練はまだ終わらない。
未知の謎と危険が、迷宮の奥で彼を待ち続けているのだった。




