第10話 精霊界への旅立ち
北の村での朝が穏やかに始まる。
リアンは村の人々に見送られ、短剣と革袋を背負い直す。
だが、胸の奥には新たな冒険への期待があった。
迷宮で得た力と知恵は、まだ全てを使い切ったわけではない。
「さあ、行くわよ」
セリナが風に乗って現れる。
「今度は精霊界へ向かうの。あなたが迷宮で示した勇気と清らかさ、
それがあれば、精霊界でもきっと道は開ける」
リアンは息を整え、頷いた。
「わかった……俺は行く」
風が彼の髪を揺らし、胸に新たな決意を刻む。
空の色は淡く輝き、雲の隙間から光が差し込む。
風竜が迷宮の中心で静かに見守り、微かなうなりを響かせる。
その力がリアンの背中を押すように、空間の風が道を示した。
「精霊界……」
言葉に出すだけで、心が高鳴る。
人間界とは異なる空間、精霊たちが暮らす世界。
そこにはまだ見ぬ力と知識、そして新たな試練が待っている。
セリナは微笑み、風の渦でリアンを包む。
「迷宮での経験を忘れないで。恐怖に負けず、
仲間を信じ、心を澄ませば、精霊界でも道は開けるわ」
リアンは深く息を吸い込み、風に乗った。
空中に浮かぶような感覚の中で、村の景色はゆっくりと遠ざかる。
光と霧が混じる空間を抜けると、目の前に精霊界の入り口が現れた。
そこには光の門が立ち、微かな風の音が響く。
門の向こうには、未知の森や湖、空に浮かぶ島々――
精霊界特有の幻想的な風景が広がっていた。
「さあ、リアン。新たな冒険の始まりよ」
セリナが手を差し伸べる。
リアンは握り返し、胸を張って一歩を踏み出す。
空間を抜けた瞬間、目の前に広がる景色に
息をのむ。光と風、精霊たちの微かな気配――
全てが新鮮で、刺激的で、未来への期待に満ちていた。
「これから……もっと強くなる。もっと知るんだ」
リアンは心の中で誓う。
迷宮で得た力と、風竜やセリナとの絆を胸に、
精霊界の未知なる世界へ、冒険の歩みを進める。
風が彼の髪を揺らし、精霊界の空気が胸を満たす。
これまでの旅路は、ただの始まりに過ぎなかった。
新たな試練、未知なる力、そして友情と絆――
すべてが、リアンの物語をさらに大きく動かしていく。
霧深き迷宮での冒険は終わった。
だが、精霊界での新たな冒険は、今、静かに幕を開けた。




