三十一話 マーキング!?
朱里との待ち合わせ場所である、駅改札付近に到着すると、日曜日ということもあり、駅構内のアナウンスが流れる度に、人の波が押し寄せてくる。
僕はその波に呑まれないようにと思って、人が通らない隅の方を見つけ朱里が来るのを待った。
────十分後(十時五分)まだこない、そこかしこでオシャレをした人達が腕時計を確認している、ここは有名な待ち合わせ場所だったりすのだろうか?などと他愛もない事を考えながら朱里が来るのを待った。
更に十分後(十時十五分)漫画だったか、アニメだったかはうろ覚えだけど『待ってる時間もデートの内でしょ。だってデートの時間は長い方が良いもん』って言葉を思い出す。
そんな聖母マリアみたいに慈愛に満ち、心の広い女性が本当にいるのだろうか?違うか、その言葉が通用するのはお互い好意を抱いているか、カップルだけだ。僕は腕を組み駅構内の時計をジッと見つめた。
更に十分後(十時二十五分)『テッテレーー』そんな効果音と共に【ドッキリ大成功!!】と書かれたプラカードを持った朱里が出てきたりしないだろうか。
いくらなんでも待たせ過ぎでしょ、ぶっちゃけこれが罰ゲームなんじゃないかって思い始めた。
え、なんで僕が罰ゲーム受けてるの?とノリツッコミをしてみたりして⋯⋯あと五分待って来なかったら帰ろ。
そう心に決めて待つことにした。
そして五分後、待ち人来ず⋯⋯
帰ろ、そもそもなんで僕が、デートなんてしなくちゃいけないのかわからない。
そう思って駅を出ようとした時、不意に服の裾を引っ張られ振り返ると、黒いプリーツツイードミニスカートに黒いニットトップスを合わせ、肩からショルダーバックをぶら下げた朱里が立っていた。
「景ごめん、待ったよね?」
走ってきてくれたのか、息を切らせながら、額に汗を滲ませて、片手でごめんの仕草をする。
「かなり待った、これが現実世界じゃなかったら、読者は間違いなく飽きて読むのやめてると思う」
そう言って朱里を見た。
「なに言ってんの?遅れてきたのはマジごめんて、なに着てくか悩んでたらいつの間にか待ち合わせの時間過ぎてた、てかうち可愛くない?」
朱里はそう言ってくるりと回ってみせると、髪とスカートがふわりと跳ね上がる。
「た、確かに似合ってるね(パンツ見えたんだけど⋯⋯)」
「そこは普通に可愛いでよくない?(気合い入れてきたんだから褒めろよ)」そう言って、横に並んで僕の顔を下から覗き込んできた。
「それより何するの?(家に帰りたい)」
「辛辣過ぎん?まぁいいや、まずは映画⋯⋯てかなにそれ⋯⋯?」
朱里がそう言って驚愕の表情をみせた。
「なにってなにが?」
「景、童貞だよね?」
今度は、それを聞いた僕が驚愕した表情をみせた。
「なに言ってるかわからないけど、貞操は守ってるよ。そもそも彼女できたことないし」
「じゃーその首のマークはなによ!?」
朱里が憤怒しながら僕の首を指さした。
「首?なにかあるの?」
僕が首の辺りを擦りながら、疑問符を浮かべていると、朱里が手鏡を出して僕に見せてきた。
「確かに赤くなってるね、ダニにでも食われたんじゃ?」
「それは明らかにキスマークよ!!絶対にダニじゃない!!」
僕を指さしながら怒鳴り散らしてるけど、キスマークってなに?僕は携帯を取り出し調べてみるとすぐに出てきた。
【キスマークとは、唇で肌を強く吸うことによってできる痕。首筋への痕は独占欲、支配欲、強い執着心を意味する】
僕はゆっくりと携帯をポケットにしまって、朱里をみた。
「調べたけど身に覚えないなー、ダニにでも食われたんじゃー⋯⋯」僕はついさっき立花さんにやられた事を思い出した。
「⋯⋯ダニ、間違いなくダニに食われた!!」
「強調しないでよ、余計疑わしくなる(絶対にあの女の仕業だ)」
そう言って朱莉は落ち込んだ表情を浮かべて俯く。デートが始まる前から、その場の空気は最悪のものになってしまった。




