三十話 吸血鬼!?
「行ってきます⋯⋯」
玄関を開けると、真っ先に雲一つない青空が目に飛び込んでくる。太陽が燦々と照らしつけてくるが、その陽気が僕の心に届く事はない。
納得も承諾もしていないのが一番の理由だと思う。勝負の景品が僕とのデートってなに?本当に気が進まない、足取りが重すぎて、まるで100Gの重力室で修行をしているように感じる。
もちろんそんな修行なんてしたことはない、あくまでこれは物の例えだ。それくらいデートに行きたくない。
だったら行かなければいいと思うだろう。僕もそれについては真剣に考えた、けれど行かなかったら行かなかったで後が怖い。
あの二人を相手にして、生きていられる自信が全くない。だから行くことにした。
僕はそんな事を考えながら、駅までの道のりをゆっくりとまるで亀のようにあるいて向かった。
道半ばまで歩くと、砂漠で水を求め彷徨う人みたいに歩いている、立花さんと目が合った。なんでいるの?
(よし、見なかった事にして先を急ごう)
僕は重力100Gの足枷を取り払って、急いでその場から離れようとした瞬間。
「ちょっと待てぇぇぇぇい!!」鬼の形相をした立花さんが、人とは思えない早いスピードで向かってくる。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そのあまりにも人間離れした形相と行動に、咄嗟に恐怖を感じて逃げてしまう。
恐らく、いや間違いなく僕の人生で一番早く走っている自信があった。僕はどれだけ距離が離れたかを確認するために、ドヤ顔で振り返ると、立花さんは僕の真後ろにいた。
僕は顔を正面に向き直し、息切れする中、力を振り絞って声を出した。「た、立花さんぼ、僕なにかしましたか〜〜〜〜?」
「に、二階堂くんのことが大好きな女の子が、喉カラカラで砂漠を彷徨っていたら、普通手を差し伸べるでしょ?てかどうしても止まる気がないなら⋯⋯」
そう聞こえた次の瞬間。
(え、なにこれ?身体が動かない、こ、声もでない)
先程まで力のかぎり走っていた身体が、『ピタリ』と止まった。
立花さんは、虚空でホログラムディスプレイを操作しながら、こちらにゆっくりと近づいてくる。
「クーックック、二階堂くんのことだからスキルチェックなんてしてないでしょ?つい最近レベルが上がった時に新しく取得可能になった、『マーキング』。どんな効果が発動されるか調べ尽くしたわよ」
そう言いながら不敵な笑みを浮かべた。
「簡単に説明をすると、印が付けられるまでの間、対象者は喋る事も動く事もできなくなる」
立花さんは喋りながら僕に、ゆっくりと近付いてきた。
(印?何を言ってるんだ?)
「わからないわよね?フフフッ、心配しないで痛くしないから」
立花さんは正面に立つと、人差し指で僕の首筋を上から下になぞった。
(痛くしないってなに?もう恐怖しかないんだが)
僕が動かない体を、無理矢理に動かそうとジタバタしていると『カプッ』と首筋を噛まれ吸われた。
(え?なに銀髪の女の子に血を吸われて眷族になっちゃうみたいな感じ?)
暫く吸われ立花さんの唇が離れると、唾液が首筋を伝う。
立花さんは頬を真っ赤に染め、額の汗を拭いながら舌舐めずりをすると、サッと虚空を確認してから、艶かしい目つきでこちらに視線を移した。
「ねぇ二階堂くん、いつまでそうしてるの?もう動くはずよ」
「え、あ、ちょ、た、立花さん!いったい何をしたんですか?ぼ、僕吸血鬼になるんですか!?」
「私の眷属ね」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⋯⋯ってそんな訳無いですよね、何したかはわかりませんが約束があるので行きますね」
僕は何事も無かったかのように歩きだす。
「くれぐれも楽しんでねぇ~(クーックックッ)」
そう言って、立花さんが不敵な笑みを浮かべて手を振る。
僕もそれに合わせて手を振って、その場を立ち去った。てか本当になんだったんだろう?
ここまで読み進めて頂きありがとうございます!
おかげさまで、30話到達いたしました!
ここまでこれたのも、皆様に応援して頂き、読んで頂いたおかげだと思っております!【感謝】
これからも皆様に喜んでいただけるよう、執筆して参りますので、いいねや、ブクマ、コメントなどなど是非宜しくお願い致します!




