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第二十八話 勝負の行方『ユー・ガット・メール』

 テスト結果が配布される当日、僕は自分の席で両肘を付き、指組みをしながらその瞬間を待っていた。


 ふと、隣の席に視線を移すと、立花さんが両肘を付き、合掌をしながら目を瞑っているのが見えたので、たまらず声をかけてしまった。

  

 「立花さん大丈夫ですか?」

 

 「だ、大丈夫に決まってるじゃない」


 『強がり』無理矢理に口角を上げ、口をわなわなと震わせている。明らかにわかる作り笑いが緊張を隠せていない。


 「ねぇ二階堂くん、なんでそんなに落ち着いていられるの?」


 「テスト前なら多少緊張するのもわかりますが、もう結果出てますからね、緊張しても意味なくないですか?」と僕が答えると、立花さんは、左掌にポンっと握りこぶしを当て、納得した表情を見せた。 

 

 それと同時に、担任が教室に入ってくる。「テスト結果を配布します」の一声で教室内の空気が張り詰めたものになると、各生徒にテスト結果を配布し始める。僕は穏やかな気持ちでその光景を目で追っていた。今更慌てても仕方ないからね。


 けれど担任が僕の机に近づくにつれて、しだいに鼓動が早くなっていくのがわかり、冷静を装って、背もたれに寄りかかって腕を組んだ。


 ついに僕の机の上に封筒が置かれた。それを取り上げ、ゆっくりと封筒から結果を取り出す。


 全教科満点!クラス学年共に一位、僕は胸を撫で下ろしてから立花さんに視線を向けた。


 ちょうど担任が、立花さんの席に封筒を置く所だった。『ゴクリ』と唾を飲み込んだのがわかり、緊張がこちらまで伝わってくる。


 立花さんは恐る恐る封筒を手に取り、中からテスト結果を取り出して、それを見た瞬間、顔が『パアッ』と明るくなった。


 「立花さん?」と声をかけると、立花さんは立ち上がり、テスト結果を両手で持って、僕の顔の前に突き出してきた。


 【国48点 数42点 理52点 英62点 社47点 学級順位36/40 学年順位172/238】


「二階堂くん!赤点回避したよ!」


 僕はあまりの嬉しさに立ち上がり、自分のテスト結果を立花さんに見せる。その結果をみた立花さんと視線が絡み合い、少しの間、沈黙の時間が流れた。


 すると立花さんが右手を上げ何かを催促してきた。僕はすぐにそれを理解して、その右手に僕の右手をぶつける。


 『バチィィィィィィン』


 そのハイタッチの音は、教室中に響き渡りクラス中の視線を集めてしまったが、それに気付くことなく、僕達二人は歓喜余ってはしゃいでしまった⋯⋯


 「そこの夫婦、席に着きなさい」


 夫婦!?担任の声で僕と立花さんは現実へと戻され、お互いに顔を見合わせると、しだいに顔が赤くなっていくのがわかった。


 僕と立花さんは二人で『アハハッ』と笑い俯いて、頭をぽりぽりと搔きながら、トボトボと歩き席に着いた。


 席に着いた僕は、恥ずかしさのあまり熱くなった顔を手で覆って、指の隙間から立花さんを覗き込んだ。


 え、切り替え早くない?立花さんは先程までの照れ臭さなんて、微塵も感じさせない程に、素早くテスト結果を携帯で撮っている。


 一瞬疑問符が浮かんだけど、すぐさまその理由に気付き、僕は気が気ではなくなり担任に怒られたばかりなのに、立花さんに声をかけてしまった。「朱理にメールしました?」


 立花さんは小さく頷き、両手で携帯を持ち睨むように画面を見ている。


 「す、すぐに返事きますかね?」

 

 「あっちも今日結果わかるって言ってたからくると思う」


 『ユー・ガット・メール』


 「え、今時そんな着信音使います?」

 

 「二階堂くん⋯⋯ごめん⋯⋯」


 立花さんの顔からゆっくりと血の気が引いていくのが分かった。


 「着信音に気を取られて、勝負のことが頭から飛んでました」そう伝えると、立花さんは俯き、少し震えた腕を携帯と一緒に突き出してきた。


 【 溝口朱里 学年順位 72/232 】


 「惨敗じゃないですか」


 立花さんが鋭い目付きで僕を睨む。


 「僕、朱里とデートしないといけないんですか?」


 『ユー・ガット・メール』


 え?明らかに立花さんの携帯から鳴っていないのがわかり、僕は自分の携帯を鞄から取り出した。


 「昨日、二階堂くんがトイレに行った隙に変えといた」


 全然笑えない。てか勝手に携帯の設定変えないでよ、ってそれどころじゃない。僕はそう思い携帯を確認した。


 【今週の日曜日、十時に駅前の改札付近で待ち合わせね!!アテンドは任せといて。朱里より】


 僕は膝から崩れ落ち、そのままの体勢で携帯画面が見えるように立花さんに突き出した。


 それを見た立花さんもすぐさま膝から崩れ落ち項垂れる。


 「そこの二人いい加減にしろよ」


 僕と立花さんはなんとか立ち上がって、席に着き、二人同時に机に突っ伏す、そのまま放心状態になり気付くと全ての授業が終わっていた。

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