第十四話 立花蒼視点
チャイムが鳴って、一限目の授業が始まる。
私は一番後ろ窓際の席で、頬杖を付いて外を眺めていた。窓から入り込む陽射しと、心地よいそよ風についつい眠気を誘われて、大きな欠伸が溢れでた。
「ふぁーあ〜⋯⋯⋯⋯」
もちろん手で口を抑える事なく堂々と。その瞬間、先生から非難の目を向けられたのは分かったが、今はどうでもいい。
私こと立花蒼は、生まれて初めて告白をして、見事に振られた。
正直、異性を好きになったのも初めてだから所謂、初恋ってやつだと思う。
最初はホログラムディスプレイに名前が現れて、運命値が100あるだけの人だったのに、気付いたら目で追うようになっていた。
話してみると共通の趣味があったり、話があったり、私の我儘を聞いてくれたりと、正直非の打ち所がない。
だけど、その感情も楽しかった想いも独りよがり、私だけの感情だったんだね。
確かに漫画やアニメの影響で突っ走ってしまった淵はある、でも溢れる気持ちを抑える事は難しかった。
ただ、一緒に居たかった、もっと話しをしたかった⋯⋯いや綺麗事だ。
誰にも渡したくない、誰にも見せたくない、私だけの物にしたいっていう独占欲。
私ってこんなに醜くて、性格悪かったんだなと初めて知った。
それを知っても、誰にも触れさせたくないし誰かと話しをして欲しくない⋯⋯
考えれば考える程、心臓が締め付けられて苦しくなる。
気付くと目から涙が溢れ出そうになって、いたりする事もあった。
『好き⋯⋯』
こんな気持ちにさせてくれてありがとう、出逢ってくれてありがとう。
正面から嘘偽りなく、ぶつかってくれてありがとう。
結果惨敗、振られた瞬間頭が真っ白になって、心臓が潰され、体中の血の気がスーッと引いていくのが分かった。
その場で崩れ落ちて泣き叫びたかった。
でもね二階堂くんが言った付き合えない理由。
私をよく知らない?じゃ、理解できたら付き合ってくれる?釣り合わない?釣り合ったら付き合ってくれる?
もしかすると、私と二階堂くんが付き合うのは針に糸を通すよりも難しいのかもしれない、けれどもう少し、もう少しだけ私が隣にいる事を許してほしい。
て素直になれたら楽なのになーと、苦笑いを浮かべて、二階堂くんを眺める。
そんな私の気持ちにも、今見られている事にも全く気付かず、黒板に書かれた文字を一生懸命ノートに書き写している。
私は悪戯に、二階堂くんを自分の掌で隠してみた。手だけが、一生懸命頑張っている姿がおかしくて、ついつい吹き出しそうになる。
(ねぇ気付いて)私は呟きながら、おもむろに出したシャープペンシルで、二階堂くんの頭を『ツンツン』してみる。
もちろん距離があるから当たる事は無いが、当たっているように見える様が凄く楽しい。
いつかこのみえない距離が縮まり、自然に触れ合えますように⋯⋯なーんてね。
午前中の授業に、終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
正直お腹は空いてないから、このまま机で寝ちゃお。
そして振られた傷を癒して元気な私で放課後を迎えよう。




