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プール

作者: 口羽龍

 俊太しゅんたは会社員。趣味は廃校巡りで、今日は大智おおちという集落にあった大智小学校のプールの跡に向かっていた。そこはもう何年も使われていないものの、完璧に残されているという。こんなに完璧に残っているのは珍しいと、多くのマニアが写真を撮っている。


 俊太は山道を走っていた。辺りは山林で、民家が全く見えない。本当にその先に集落があるんだろうかと疑問に思うほどだ。俊太は軽の四駆を走らせていた。会社に行くのにも使っているが、趣味でもこの車を使っている。


 車はトンネルに入った。そのトンネルは、大智に向かうためのトンネルで、これができるまでは渡し船で集落を出入りしていたという。これによって、交通の便が良くなったものの、それと並行して過疎化が進んでいった。現在では大智に住む人々はわずか5人だという。消滅集落になるのも時間の問題のようだ。


 トンネルを抜けると、集落がある。その集落には古い家屋が多くあるが、そのほとんどは廃墟になっていて、もう誰も住んでいない。とても寂しい場所だ。


 しばらく走らせていると、小学校の跡地にやって来た。廃校になった後、校舎は林間学校になっていたというが、管理者が死亡すると閉鎖され、校舎は解体された。そして、運動場とプールだけが残ったという。


 俊太はプールの前にやって来た。そのプールは静かにたたずんでいる。そこはまだ管理されているようで、水がとてもきれいだ。古びたコンクリートがいい味を出している。


「これが噂の廃校のプールなのか」


 俊太はプールの前で車を停めた。俊太はプールを見渡した。今は誰もいないが、多くの子供たちが夏になると、水泳をしたものだ。ここで泳いだ事、卒業生は覚えているんだろうか? きっといい思い出だっただろうな。


「すごいなー。子供たちがここで泳いだんだ」


 ふと、俊太は思った。ここで泳いでみよう。きっといい思い出になるだろうな。


「よし、泳いでみよう」


 俊太はプールに入った。とても冷たい。今日の暑さが吹っ飛びそうだ。このプールに人が入るのは、何年ぶりだろう。廃校になった最後の夏以来だろうか?


「楽しいなー」


 突然、俊太は何かの気配を感じた。泳いでいると、何かに引っ張られた。俊太は水面を見た。だが、そこには誰もいない。おかしいな。確かに引っ張られるような感覚がしたのに。


「あれっ!?」


 俊太は再び泳ぎだした。俊太は我を忘れて、プールで遊んでいた。プールなんて、小学校最後の夏の地区水泳以来だな。


 だが、俊太は疑問に思っていた。明らかにおかしい。このプールには何かあるのでは?


「何だろう・・・」


 だが、暗い気持ちになってはいけない。今日は休みだ。思いっきり楽しもう。


「まぁいいか。楽しもう」


 その後も俊太は遊んでいた。やがて午後3時になった。そろそろ帰らないと、両親が心配する。


「さて、帰ろう」


 俊太は体を拭いて、服を着替えて、車に乗った。俊太は行った道を進んでいく。そういえば、大智の集落で誰もと出会わなかったな。それぐらい人が少ないんだろう。


 俊太はトンネルに入った。ふと、俊太はバックミラーを見た。すると、助手席に少年がいるのに気づいた。誰かが一緒に入ってきたんだろうか?


「ん?」


 俊太は車を停め、振り向いた。だが、そこには誰もいなかった。一体誰なんだろう。全く見当がつかない。


「気のせいか・・・」


 俊太は首をかしげた。気のせいか。疲れているから、幻を見たんだ。今日は早く帰って、疲れをとろう。


 俊太は再び車を走らせた。だが、俊太は気づいていなかった。助手席にずぶ濡れの少年がいるのを。




 俊太は家に戻ってきた。すでに辺りは暗くなっている。もう母が晩ごはんを作って待っている頃だろう。俊太は車を降り、玄関に向かった。


「ただいまー」


 俊太は玄関を開け、家に入った。やっと帰ってきた。やはり家がほっとする。


 と、そこに母がやって来た。母はエプロンを付けている。


「おかえりー。どうだった?」

「楽しかったよ」


 俊太は嬉しそうな表情だ。それを見て、母も笑みを浮かべた。好きな事を好きなように楽しむ。それができて、よかったと思っているようだ。


「それはよかった。ゆっくり休みなさい」

「はーい」


 俊太は2階に向かい、荷物を部屋に置いてきた。今日は疲れたな。すぐにお風呂に入ってから、晩ごはんを食べよう。匂いからして、今日はカレーライスだろう。


 数分後、俊太が1階に戻ってきた。これからお風呂に入るようだ。


「お風呂入って来るからね」

「はーい」


 俊太はお風呂に向かった。お風呂に入って、今日の疲れをとろう。


 俊太はシャワーで今日の汚れを洗っていた。今日はとても楽しかったな。またどこかに行きたいな。目を閉じると、今日の出来事が頭をよぎる。だが、俊太の目には誰かに引きずり込まれる自分の姿が写った。一体何だろう。俊太は首をかしげた。


 俊太はお風呂に入った。俊太は目を閉じ、ご機嫌な様子だ。


「♪ババンバ バンバンバン ババンバ バンバンバン」


 俊太は今日の出来事を振り返っていた。今日はプールに入って、とても楽しかったな。また、廃校のプールがあったら、入ってみたいな。


「今日は楽しかったなー。またどこかに行きたいなー」


 と、俊太は再び何かを感じた。誰かが一緒にお風呂に入っているようだ。だが、周りには誰も見えない。


「えっ!?」


 俊太は感じていた。運転している時もそうだけど、誰かの気配を感じる。それは一体何だろう。全く見当がつかないな。ひょっとして、あのプールで泳いだ事が原因かな?


「運転しているときもそうだけど、いったい何だろう」


 だが、もう泳いでしまった事だ。それに、今日は楽しかったじゃないか?


「まぁいいか」


 俊太は目を閉じた。だが、再び俊太は誰かの気配を感じた。今度は誰だろう。まさか、母だろうか? いや、母はもう一緒にお風呂に入らない。


「ん?」


 俊太は目を開けた。するとそこには、少年がいる。その少年は、昔っぽい服装だ。どうして入ってきたんだろう。まさか、この家に勝手に入り込んできたんだろうか? これは警察に言わないと。


「助けて・・・。助けて・・・」


 少年は元気がなさそうだ。どうしたんだろう。


「だ、誰だ!」

「助けて・・・。助けて・・・」


 だが、それしか言わない。何だろう。何を助けてほしいんだろう。


 次の瞬間、少年は俊太の首を絞めた。


「ギャーーーーー!」


 俊太は少年に顔をお湯に沈められた。数分後、俊太は水死した。だが、誰もそれに気づかなかったという。


 それから10分後、母がお風呂に向かっていた。何分も出ないので、不思議に思ったようだ。


「俊太、俊太、いつまでお風呂に入ってるの?」


 だが、母は疑問に思った。声がしない。どういう事だろう。


「あれっ、どうしたのかしら。全然声が聞こえない・・・」


 母はお風呂の仕切りを開けた。すると、俊太が浴槽で気を失っている。どうしたんだろう。


「俊太! 俊太!」


 母は体をゆすった。だが、俊太は動かない。と、誰かの気配を感じ、振り向いた。そこには少年がいる。


「えっ!?」


 少年は母の首を絞めた。


「ギャーーーーーーーー!」


 そして、母は俊太同様、窒息死した。だが、この家にはこの時間、俊太と母しかいなかった。ゆえに、誰も気づかなかった。




 それから数十分後、俊太の父が帰ってきた。だが、2人が死んだのを父は知らない。いつも通りに会社から帰ってきただけだ。今日は土曜出勤だった。とても疲れたな。


「ただいまー」


 だが、誰も反応がない。帰ってくると、母が迎えてくれるはずなのに。どうしたんだろう。トイレに行っているんだろうか?


「あれっ、静かだな・・・。ただいまー!」


 それでも反応がない。明らかにおかしい。


「あれっ!?」


 と、父は何かに気付いた。お風呂が付きっぱなしなのだ。もう夜遅いのに、どうしてつけっぱなしなんだろう。


「もったいないなー」


 父はお風呂の電源を切った。だが、父は変なにおいに気が付いた。その匂いはお風呂からだ。


「何だこの匂い」


 父はお風呂の仕切りを開けた。だが、そこにあったのは俊太と母の死体だ。


「ママ、俊太!」


 突然の出来事に、父は驚いていた。どうしてこんな事になるんだろう。


「どうして・・・」


 父の後ろでは、少年がその様子を見ていた。翌日、その父も遺体となってお風呂で発見されたという。

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