小人王子の冒険
とある国に小人の王子様がいました。妖精と同じくらいの大きさのですが、とても勇気があってたくましい性格をしていました。
小人の王子様は外で遊ぶのが大好きで、城の外に出たかったのですが、王様とお后様は「お城から出ないように」と言われていました。
どうにか外に出たい小人の王子様は、普通に成長する兄にこう言われました。
「お城の外は危険でいっぱいだぞ!」
「いや、絶対に大丈夫だ」
「無理に決まっているだろう! こんなに小さいんだから!」
そう自信をもって言うが小人の王子の兄は笑うだけだった。悔しくなった小人の王子は絶対に外の世界に行こうと決意する。
「えーっと、まずは武器を持っていこう」
とはいえ、小さな王子が短剣さえも持てないどころか、武器庫もカギがかかって行けません。そこでいつもメイドが小人の王子様の服を作る裁縫道具箱へ向かいました。
「あ、大きなハサミ! ……でも重い」
布を切るためのハサミを見つけましたが、小人の王子様と同じ大きさの上に重たく、持っていけません。他にも糸きりバサミなど様々なハサミを見つけましたが、小人の王子様には持てません。
「あ、赤い玉が付いている針がある!」
針山から待ち針を見つけて、小人の王子様は早速、武器にしました。他にも少し大き目なボタンを見つけて、それを盾として使う事にしました。
さて外に行くための相棒ですが、小人の王子様にはちゃんといます。
「ティー!」
小人の王子様がそう呼ぶと尻尾を振って小さな茶色の犬が走ってきました。この城にやってきた時は小人の王子様と同じくらいの大きさでティーカップに入ってしまうくらいでした。なので【ティー】と名付けました。今では王子様よりも大きくなり、とっても賢い犬になりました。
小人の王子さまは早速、ティーの背に乗って「よし! 行こう!」と言うとティーは走り出しました。
早速、城に出る決意をしましたが様々な困難があります。メイドや兵士がたくさんいるのです。モコモコのティーに隠れながら、小人の王子様は進んでいきます。
庭に出ると、綺麗に整えられた生垣の隙間をティーと小さな王子様は入りました。
すると目の前に大きな車輪が見えました。
「うわ、馬車か」
少し驚きつつ、小さな王子様はティーに飛び乗って走り出しました。
「よし! 行くぞ! 城の外の冒険に!」
「ワン!」
*
城下町をティーに乗って小人の王子様は興味津々で見て回ります。
「わあ、可愛いワンちゃん」
「珍しい犬だな」
綺麗に整えられたモコモコの毛並みの犬のティーを町の人は珍しがっていますが、小さな王子様には気が付きません。
城下町はとても活気があり、人が行きかっていた。広場は出店が並び、新鮮な野菜や果物、魚があった。
だけど小さな体の王子様はそれ以上に気になる事があります。
「それにしてもゴミが多いな」
人が多いからか、ゴミも多く捨てられていた。王子さまは小人だから地面に近く、すぐに落ちているゴミに気が付きました。
更に小さな路地を見ると、家具の隙間の埃のようにゴミが集まっていました。
「む! 路地にもゴミが多いなあ。ね、ティー」
小人の王子様が話しかけるとティーは「クウーン」と鳴きました。
ティーが路地を立ち去ろうとした時、ゴミの中から何かが蠢いたのに小さな王子様は気が付きました。すぐにティーに「待って」と言って、ゴミの中から出てきたものが何か見ました。
ガサゴソとゴミから出てきたのは王子様と同じくらいの大きさの小人でした。
「え? 誰?」
「うわ!」
出てきた小人は随分とボロボロな服を着ていると思いました。でもよく見ると木の葉を継ぎ合わせた洋服で、ボロボロになったのは最近できたものと見えました。
王子様はティーに驚いて逃げようとする小人に「この子はティー、大人しい子だよ」と紹介しました。
「あ、犬の背に誰かが乗っている」
「こんにちは。僕はこの国の王子様だよ」
「え? 嘘だ! 王子が小人なわけないよ!」
「本当だよ! ところで君はここに住んでいるの?」
「住んでいないよ。僕は北の森で果物を食べていたら、村の人に果物ごと連れてこられて、こんなところまで来ちゃったんだよ」
それから「あと、僕は小人じゃないよ、妖精だよ!」と言って、背にパッと半透明の羽を見せた。
妖精の話しを王子様は聞かされていましたが、実際に見たのは初めてでした。
「うわあ! 妖精だ。綺麗な羽」
「フフン! すごいだろ」
「もしよかったら、君の住んでいた森まで送ってあげようか?」
「え? いいの?」
「僕、今、お城の外を冒険している最中だから」
妖精は「そうなんだ。じゃあ、お願いしようかな」と言って、フワッと飛びティーの後ろの乗った。
「うわ、飛べるんだ」
「当然だろ、僕は妖精なんだから」
そんな話をしながら北の森へと向かいました。
*
城下町を抜けて、村に入っていきます。小麦畑はすでに収穫したようでティーより暗い茶色の地面が広がっていた。
北の森では色とりどりの葉が付いた木々が生えていた。
「わあ、緑色以外に赤や黄色の葉が付いている」
「王子様、知らないの? 秋になると葉っぱが赤くなったり黄色くなったりする木がいっぱいあるんだよ」
「知らなかった。だってお城の庭の木ってずっと緑色の木ばっかりだったから」
ティーから降りて王子さまは木の下に落ちたドングリや松ぼっくりを拾って、目を輝かせました。
「うわ、どんぐりと松ぼっくりだ! 絵本で見た物と同じだ!」
「王子様、本当に外出は初めてなんだね」
妖精がクスクスと笑っていると王子さまは何かに気が付きました。
「ねえ、君以外の妖精たちってどこにいるの?」
「森の奥にいるよ。冬眠のために食べ物を蓄えないといけないけど、ちょっと大変なことがあって……」
妖精が言葉を濁していると、森の奥からたくさんの悲鳴が上がった。
「わわ! あいつが来たんだ!」
「え? 何があったの?」
「あいつ、仲間を連れ去る奴なんだ!」
妖精と王子様とティーを茂みに隠しました。
すぐにドシドシと歩く男が見えました。その手には虫かごを持っており、妖精がいっぱい詰まっていました。
王子様は「駄目!」と言って、男の足にしがみつきました。だけど男は気にせず歩いていきます。
ティーが怒って吠えますが男は足で追い払い、さっさと自分の馬車に乗っていきました。
妖精は見ているだけでしたが、ティーに駆け寄って「追いかけよ」と言って追いかけていきました。
*
馬車はゴトゴトと走っていき、やがて綺麗な屋敷に着きました。王子様が住んでいるお城の次に大きなお家です。
捕まえた男と一緒に王子も家に入りました。家の中も綺麗でしたが、男は地下へと向かう階段を下りていきました。
「地下は真っ暗だ。それと寒いな」
そうして男が地下の部屋へと入りました。すぐにランプに火をつけて明かりがつけられると、王子様はびっくりしました。
標本のように妖精が羽を針で刺さっていて額縁に飾られていました。全員、目が閉じていて眠っているようでした。
ガサガサと音がしたと思い、見ると男は捕まえてきた妖精を取り出して羽を針で刺そうとしていました。
「あ、ダメ!」
そう言って王子様は男の足首に持っていた待ち針を指しました。驚きと痛みで男は立ち上がり、王子様はすぐさま捕まった妖精たちを助け出します。
「さあ、早く逃げて! うわ!」
籠の中にいた妖精を出してあげた王子様でしたが、男に捕まえられてしまいました。
「なんだ? こいつ、羽がない妖精だ」
「妖精じゃない! この国の王子だぞ!」
そう言って王子様を摘まんでいた男の指を待ち針で刺しました。あまりの痛さで男は思わず、指を放しました。
「妖精をこんな風にしたらかわいそうだろ!」
「こいつ!」
王子様を払おうとした男だったが、王子様は避けて代わりに火のついたランプに当たって床に落ちました。
「ああ、不味い!」
床に落ちたランプは近くにあった本の山に燃え移って大きな炎になりました。
「妖精は寒いと動かなくなるのに、暖かくしたら……」
「そうか、暖かくすればいいのか」
王子様は火にたくさんの紙を落として、もっと燃やしました。すると額縁の妖精たちの羽音が響き渡り、羽に刺した針を取って妖精たちは解放されていきます。
「良かった。うわ!」
「お前だな! 羽のない妖精! お前なんかこうしてやる!」
男は王子様を捕まえて炎に投げつけてしまいました。
その時、地下の部屋の扉が開いてティーと街にいた妖精が飛び出しました。炎に入れられる前に王子様はティーにしがみついて、ケガすることもありませんでした。
「王子様! 大丈夫?」
「あ! 助けに来てくれたの?」
そうして開け放たれたドアから妖精とティーと王子様は逃げ出しました。
*
妖精たちが一斉に屋敷から出て行ったので、屋敷の近くにいた人たちは驚きました。
そして王子様はお城に帰って、妖精を捕まえていた男を教えました。実は妖精を捕まえるのはいけないこと。王子様の報告で男は捕まえられました。
そして王子様はティーと一緒にお城の外に出られるようになりました。
「やあ、みんな!」
冬が終わって春になると王子様は妖精のいる北の森に遊びに行くようになり、大人になると妖精を守るための法を作りました。




