個人企画に参加してみた ①と②それと③ +バンダナコミック01作品
転生しても菊池だった件 〜 菊池から菊池へ 〜
転生したら菊池でした……って、菊池から菊池になるのって、菊池に呪われているんじゃないのかな?
そう僕は亡くなったはずだった。五つ星の★おまんじゅうを神様からいただき‥‥喉に詰まらせて、御池にはまってしまったのだ。●とちがって、★は喉に引っかかるじゃないか。
おのれ神コ□ン様め、謀ったな────って、あれ? 僕は死んでいない。池ポチャして、御池の女神に拾われたのか。
いや‥‥待て。湖面に映る顔が違う。少し、波立ってて分かりづらい。たぶん前の菊池、菊池久喜は死んだ。
おまんじゅうの御礼に、神コ□ンを驚かせてやろうと蛇の玩具を投げただけなのに‥‥無言で呪言で箪笥に畳まれ仕舞われた。やるんじゃなかった。
後悔しても後の祭り、いや菊池の祭りか。
そう──僕は数多の菊池を召喚するために生贄になった菊池だったのだ。しかし‥‥お優しい神コ□ン様は菊池を見捨てない。クソ雑魚弱々の菊池を見かねて、菊池より菊池気味な菊池へと変えてくれたのだ。
だからだろう。いまの僕は菊池岫という名前になった。上から読んでも下から読んでも菊池なのも変わらない。何だか、ちくわみたいな文字感だ。
ちなみに岫とは山のほらあなを意味するらしい。転生じゃなくて、黄泉旅行の帰りだったのかもしれない。いやちくわの穴を通っただけなのか? ホースだけに。
この新たなる菊池‥‥菊池岫にはライバルがいた。菊池のナンバーワンを決める大会、K−1の優勝候補筆頭だ。名を菊池 心詠という。あまりの強さに、生まれ変わる前の僕は圧倒されていた。
だが今は僕が菊池岫だ。情けなくハンカチを噛んで悔し泣きしていた過去は知らない。転生し、菊池久喜の力も合わさって最強の菊池の一角に名を連ねる予定の者。
────彼女の力は本物だった。
滾る菊池の力を抑えるために、枷を自らの筆に掛け、菊池の名すら隠して戦う。何より恐ろしいのは見る力、聞く力だ。新参だろうがベテランだろうが、その心眼の如き力で、菊池心を見通すのだ。
「私、聞く力持っていますから」
確かに見聞色の使い手も真っ青なくらい物知りだ。尾田先生ごめんなさい。
「菊池だから持っていますから」
菊池の力のことか。それなら僕も同じ菊池として負けていないはず。
「キック力はキックちからですね」
いきなりタイキックが飛んで来た。いや真空飛び膝蹴りって、膝入るとマジ死にますからね。
「菊池辛ーーーッ!」
カ□ムーチョ? 湖絡めた話だけに、菊池と合体した湖池屋かい!
「菊池幸ーーーッ!」
えっ、誰? 辛いと似てる字面だからわかりにくい。検索すると知らないおじさんの写真出たんだけど。アイドルとかの女の子じゃないの?
「菊池空ーーーッ!」
バイトの菊池君、ジョッキが空のようだよ。おかわり運んであげて。
「菊池よりも、聞く力もじりになってませんか」
おぉぅ、急に正論いただきました。今回それが言いたかっただけで、だいぶ引っ張りましたよ。
居酒屋で磯辺揚げを食べながら菊池を考える僕を、嘲笑うかのような幻聴が聞こえる。彼女は菊池に対して貪欲過ぎる。
戦うには、限界だ。もう僕に残された菊池ライフはゼロに近いはずなのに、もっとあるだろう、よこせぇ‥‥と新たな菊池を投下する。
まさに鬼口だ。こよみって名前の鬼いちゃんもいた気がする。西尾先生ごめんなさい。
W菊池などお呼びでなかった。菊池心詠は始めから神コ□ンと共に、ひとりでK−1を戦えるだけの力があったのだ。
いったい僕の中に眠る最強の菊池の力とは何だったのか。僕はとんでもないものを相手にしていたのかもしれない──心の中の神コ□ン様に泣きついた。
優しい神は、膝をつき菊池力のなさに泣く僕に、ちくわを与えてくれた。
「だって君、ちくわだもん‥‥しょうがないよね」
全ては後から植え付けられた菊池の記憶だった。やはり僕はちくわだったのだ。
穴の空いたちくわだけに、簡単に見通されるのは運命だったようだ。
お読みいただきありがとうございます。菊池祭り参加作品となります。
がっつりいじって良いと述べられていましたが、創造神様の名は伏せ字にさせていただきました。ごめんなさいと思いつつ、ちくわを食べながら浮かんでしまったお話でした。
────菊池で遊んでしまって、本当にごめんなさい。