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第2話 ヘリオトープ

わたし、久留里 兎美。どこにでもいるような高校生!

好きな事は楽しいこと。嫌いなことは楽しくないこと。

最近、矢尾 花菜っていう新しい友達ができたんだ!大人しくて、静かで、髪を一つくくりにしてて、ちっちゃくて可愛い女の子。入学式の日に一回見かけてから少し気になってて勇気を出して声を掛けたら友達になってくれたの。

っと、そんなことを考えてたら終礼が終わったみたい。急いで準備を済ませ、花菜ちゃんがいる隣のクラスまで急ぐ。教室の後ろのドアからひょこっと顔をのぞかせ彼女を探しているとボーっと窓の外を見つめる彼女を見つけた。

「花菜ちゃんおはよ!って言ってももう放課後だけどね。」

わたしの声に意識を引き戻された花菜ちゃんが振り向く。

「おはよう兎美。」

すごい、振り向くだけの動作も綺麗。ってそんな事よりも

「ねぇ、花菜ちゃんは・・・あれ?」

また彼女がボーっとしている。

「花菜ちゃん?」

「んあ、ごめん考えごとしてた。」

アハハと軽く笑いをこぼす彼女に、少し動揺した空気を感じ取る。

「何考えてたの?」

「えっとね、兎美のこと」

気になって聞いてみると爽やかな笑顔で彼女が言う。花菜ちゃん、良くないよ。簡単にそんな事言うの、わたしじゃなかったら絶対勘違いする人出てくるからね?・・・なんだか顔が熱い気がするけど無視して花菜ちゃんにお礼を言う。

「本当?でも、ちょっとうれしい!」

すると花菜ちゃんはフフッと笑みをこぼす。やっぱりからかってるでしょ!

まぁいいや。それよりも大事なことがあるんだった。

「じゃあ、今度の休み、二人でカラオケ行こ!」

わたしの提案に花菜ちゃんは少し考えたあとOKを出してくれた

「もちろん。兎美とのカラオケ、楽しみにしてるね。」

「やったー!!!」

「そんなに喜ぶの?」

少し大げさに喜んでしまったわたしをみて花菜ちゃんが不思議そうに聞く。

「だって緊張してたんだもん。自分から誰かを遊びに誘うのなんて初めてだったから。」

わたしがそう答えると彼女は「え?」と声を漏らした。

「意外って思ってそうだね。」

「・・・正直にいえば。兎美って友達沢山いるからそういうお誘い、やりなれてると思ってたよ。」

やっぱり。最初は私のことそう思うよね。すこし間をおいて自分のことを話す。

「うーん。確かに友達と出かけるのは慣れてるかもだけど、わたしから誘うってことあんまりしたことないんだよね。自分から言おうとしたらみんなが『〇〇行かない?』『いいね!』って話し始めちゃってさ。ってわたしの話は良いの!それよりも花菜ちゃんの話がしたい!」

グループにいても仲良しでも、なんだか、一人ぼっちだなって感じるときが沢山あった。そんなことを思い出しちゃってなんだか寂しさが込み上げてくる。

「兎美?」

今は必要のない感情が顔をのぞかせていると花菜ちゃんの心配そうな声が聞こえ、わたしは強引に話を変えて花菜ちゃんのことを聞き出す。花菜ちゃんは少し考えたあと良いよと言ってくれた。

「やった、それじゃあ早速。花菜ちゃんって今までカラオケに行ったことってある?」

「うーん、行ったこと無いかも。」

花菜ちゃんの言葉に私は心底驚いてしまった。

「行ったことないの?中学校の時も?」

そのままの勢いで聞き返すがやっぱり行ったこと無いみたい。そんな人存在するんだ

「私、」

彼女が話し始めると思い視線を向ける。しかし急に言葉をつまらせて黙ってしまった。花菜ちゃんの目はぐるぐると悩んでいるみたいに曇っている。

「花菜ちゃん?」

私が声を掛けると数拍の無言の後少しづつ言葉をこぼす。

「私、の、友達ね。歌とかあまり得意じゃない娘だったからカラオケに行きたがらなかったんだよね。」

その様子に若干の違和感を抱きつつももう一つ質問する。

「そうなんだ。じゃあ普段どこに遊びに出かけてたの?」

「え〜っと、イマドキ女子が行きそうなところだよ。」

ごまかそうとしているのが見える。ここまであやふやで曖昧な返事をされると逆に気になってきてしまう。

「ソレを『どこなの?』って聞いてるんだよ?」

花菜ちゃんは無言で考え込み、焦った表情を浮かべる

「・・・もしかして花菜ちゃん嘘ついてる?」

「つ、ついてないよ!」

慌てて言い返す彼女に、はぁっとため息を一つ。口を開く。

「ねぇ花菜ちゃん。」

「は、はい。」

「本当のこと教えて?わたしは花菜ちゃんを知りたいの。だから正直に言ってほしい。」

せめて貴女との間だけは嘘のない関係でいたいの。

すると花菜ちゃんは今にも土下座しそうな勢いで謝り始めた。

「ごめん兎美嘘つこうとして。私本当はね、友達がいないの。最初はいたんだけど事故で亡くしちゃって。だから休日とかも出かけたことなんてほぼ無いし、イマドキ女子が行くようなところもカラオケしか思いつきません。」

「え!?そうだったの、ごめん無理に聞き出すようなことして。」

彼女の謝罪の中に友達が亡くなったって言葉がある。考えもしなかった。そりゃそうだよね、出会って少ししか経ってないわたしにはいいづらいことだよね。だったらわたしにできることは。

「わたしが、花菜ちゃんの隙間埋めるから!」

声に出して数秒の沈黙。やばい、勢いに任せて結構恥ずかしいこと言っちゃったかも。でも、ちゃんと伝えなきゃダメだよね?腹を括って真正面から、まっすぐ花菜ちゃんだけを見つめて伝える。

「変なこと言ってる自覚はあるよ。でもその話をしてるときの花菜ちゃんの目がすごい寂しそうだし。わたしで良かったら、花菜ちゃんの隣にいるから。」

最後、彼女が何かこぼした気がしたがわたしには届かなかった。


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