五十四話
大将の号令で散り散りに散らばった味方を探す為に走り回っているとマサムネの姉ちゃんと合流出来た。
マサムネの姉ちゃんは凛としていて気の利く良い娘なんだがおっかなくてあまり関わりたくねえなぁ…
だが大将のお気に入りらしいし、それなりの態度で接すると良いとソウウンの嬢ちゃんには助言された。
程なくして十人程に取っ捕まってたノブシゲの姉ちゃんも発見した。
『あら?あらあら…捕まってしまいましたぁー!』
なんて暢気に呟いてたもんだから俺とマサムネの姉ちゃんで慌てて助け出した。
おっとりしているが敵に捕まるなんて危なっかしい女だ。しかし不思議なもんだな。
城の中じゃよく転ぶってのに外じゃ全く転ばない、ドジなのかしっかりしてるのか判断が付けにくい。
何度か立ち合ったが普段の、のほほんとした雰囲気からは考えられねえくらいの気迫と恐ろしさでまともに一合打ち合う前に俺は降参してる。
男として情けねえが大将陣営では女の地位が偉ぇ高くて俺なんかはいつの間にか大将の護衛から外されちまった。
まぁ元から護衛なんて性質じゃねえし、そこまでしがみつく程に役職に飢えちゃいねえんだが。
俺はたまに駆け込んでくる大将の愚痴の聞き役で十分満足してる。
まぁそろそろ踏ん切り付けてマルの嬢ちゃんを抱いてやっても良いんじゃねえか…?
ーーってのは余計なお節介だな…
おっと、敵兵発見。
数はひのふのみの…大体十人くらいか。
「ジョン殿、ここは私がーー」
「いや、露払いくらいは俺がやろう。それよりあっち側がどうも苦戦してるみてぇだし、そっちを頼めねえか?」
目を凝らすと左正面の方向には魔物と海賊、アマゾネスの混成部隊が百人規模の敵部隊に劣勢だ。
「わたしもぉー、その意見に賛同しますぅー。」
「ぬぅ…ジョン殿すまぬ!ノブシゲ殿行こうか!」
ノブシゲの姉ちゃんからの援護もあって、渋々と言った様子のマサムネの姉ちゃんがそっちの方向に鉄馬の舵を切った。
「さぁーて、ちょいとやる気出しとくかねえ…ほっ!よっ!ゼヤァッ!」
向かってくる一人目に横薙ぎの一閃、続けて二人目を足を掛けて転ばせて三人の眉間をゼロ距離で撃ち続く四、五、六と順に処理してく。
「一丁上がりってか…んお?向こうも終わったか!」
このくらいじゃ準備運動にもなりゃしねえか…
と嘆息しつつもマサムネの姉ちゃんの方を見ると彼方もそろそろ決着つけたってとこか?
部隊長らしきアマゾネスがペコペコとマサムネの姉ちゃんに頭を下げて感謝しているのを見て、もう少し掛かりそうだなと思い近付きつつ周辺の警戒も怠らない。
部隊長が離れた頃合いを見て姉ちゃん達に近付くと今後の方針を擦り合わせていく。
「んで、どうする?他の従者と合流するか大将を探しに行くか。俺としちゃ元護衛の身として大将の保護に尽力してぇが…多分大将は嫌がるだろうな…」
戻るか進むか、大事な問題だ。
正直俺の実力じゃ二人に敵わねえし、格上に尋ねるってのはァ大事な事だ。
「うむ、私としても主を迎えに行きたいがそれは無しとしよう。この辺は粗方片付いたが城内を制圧しに行くか…それとも外の敵を片付けるかの二択だろうな。」
「中へ行きましょうー?外は何だか嫌な予感がするんですぅー。多分ソウザンさん達も要る筈ですよぉ。」
「予感…か。ノブシゲ殿の勘はよく当たるからな…」
「じゃあ…中へ行くか、ここでじっとしてても仕方ねえ!お前さん達も着いて来てくれ!」
混成部隊を率いる隊長が頷き、共に行くことになった。
大将は心配だが誰かしら気遣って助けに行く筈だ。
俺らの目的は敵勢力の鎮圧、護衛はマルの嬢ちゃん達に任せよう。




